平成27年2月定例会代表質問(平成27年2月20日)No.5

≪高齢化問題について≫
<認知症の事故防止対策について


 最近、全国的に認知症の高齢者が加害者となる交通事故が多発し、大きな社会問題になっています。高速道路を逆走して大きな事故を起こす事例も多発しています。
 そうした中、鳥取県警でも70歳以上の高齢者の皆さんには指定された自動車教習所において高齢者講習が義務づけられ、加齢による身体機能の低下と運転に及ぼす影響を自覚していただくことを目的に行われていますが、75歳未満の方には講義、運転適性検査による診断と指導、実車診断指導、討議が行われ、75歳以上の人にはさらに講習予備検査、認知機能検査を踏まえた上で実車指導が行われています。
 講習予備検査、つまり認知機能検査とは、検査を通じて認知症の疑いのある高齢運転者を的確に把握するとともに、高齢運転者に自身の機能の低下の自覚を促すことが目的に行われているもので、記憶力と判断力が低い1分類、少し低い2分類、心配のない3分類に判定され、認知症のおそれがあるとされた1分類のうち特定の交通違反がある人に限っては医師の診断を義務づけ、認知症の場合は免許を停止したり取り消しがされていますが、これらはあくまでも道路交通の安全確保のためです。
 ところが、警察庁は更新時に記憶力と判断力が低い1分類と判定された人全てに医師の診断を義務づけるように今通常国会に改正道路交通法が提案されると報道されていました。
 県内の75歳以上の免許保有者は、平成26年12月末現在で2万7,067人おられます。公共交通の不便な県内においては深刻な問題ですが、しかし、認知症による事故は被害者にとっても加害者にとっても悲惨な結果となります。
 いずれにしても、高齢者の皆さんを初め家族の皆さんにも理解していただかなければならない重要な問題であり、県警としても改めて周知の徹底を図られるべきだと思いますが、山嵜県警本部長の所見をお伺いしたいと思います。
 また、熊本県警は運転免許センターに非常勤の看護師2名を配置し、病気で不安を持つドライバーや家族からの相談を受け付け、場合によっては医療機関への受診を勧めたり、免許証の返上を勧めたりするそうです。実際に認知症であっても本人にその意識がない人が多く、自分の症状に納得していただき、免許証を返納していただくためにも有効な取り組みだと思います。
 鳥取県警としても看護師の配置を検討されてはいかがと思いますが、山嵜県警本部長の所見をお伺いしたいと思います。

 

●警察本部長答弁

 まず、本県における運転免許保有者数は、昨年末現在で38万5,000人です。先日、小谷議員の質問時にも申し上げましたが、そのうち65歳以上の方は約8万6,000人、また、これは全体の22.4%。さらに75歳以上の方の免許保有者もふえている状況で、平成17年に比べて65歳以上で1.57倍の保有者の方になっています。
 一方、高齢者が第一当事者となる交通事故の発生状況ですが、件数自体は減少していますが、交通事故全体に占める割合としては、平成17年13.7%だったものが昨年は20.6%までふえており、この10年間で7ポイントふえています。社会の高齢化が進むとともに運転者や交通事故当事者の高齢化も進み、一方、認知症の有病率というものは加齢とともに高くなるという事実があり、認知症による事故防止対策は喫緊の課題であると認識しています。
 御指摘の認知症による逆走事案については、幸いにも県内ではまだ重大な交通事故につながる事案は発生していませんが、県警察として把握した中でも、アクセルとブレーキがわからなくなり複数回の物損事故を続けて起こした事案、自動車を運転し徘回をし続けた事案、こういう事案を数件把握しています。一つ間違えば大事故につながる事案です。
 当事者の方はその後、認知症と医師に診断され、運転免許証を取り消されています。
 高速道路等の延伸が急ピッチで進んでいる現在、非常に憂慮される状況です。
 認知症の疑いがある運転者への対応としては、講習予備検査や交通事故捜査等の各種警察活動を通じて、臨時適性検査をし、こういうことで認知症の方の把握に努めていますが、この把握された中で、医師の診断等を経て、昨年は13人の方が運転免許証を取り消されています。
 また、身体機能や認知機能の低下等により自主的に運転免許を返納する制度もあり、免許にかわるものとして発行する運転経歴証明書の発行手数料の交通安全協会による全額補助、ハイヤー・タクシー協会の御協力による、同証明書を提出された方に対する運賃の割引、各自治体によるバス運賃の助成など、代替交通手段の確保の取り組みもあわせて進んだことにより、昨年中は平成22年の5倍。平成22年が186人でしたが、874名の方が運転免許を自主的に返納されています。
 本年1月には、皆生温泉旅館組合に、西部地区の4警察署管内に居住される方に対して、運転経歴証明書で1年間は入浴料を2割引きにするという制度を新たに設けていただくなど、さまざまな観点から関係機関、団体、自治体と連携して運転免許証を返納しやすい環境づくりにも努めています。
 高齢化が進む中、認知症の対応は県、自治体、関係機関や御家族などの社会全体で考えて取り組みを進めていかなければならない、大変重い課題だと認識しています。
 議員御指摘のとおり、県警察においては、認知症による事故防止に向けた取り組みを関係先と一層連携を図りながら進めていくことにしています。
 この観点から県警察では、昨年6月の改正道路交通法の施行に際して、まず、医師会と連携し、認知症等一定の病気に対する規定の概要について医師の皆様への周知を図ったほか、認知症医療連携研修会等での講演、また、医師会報への記事の掲載等も行ない、今後さらなる取り組みを進めていくための基礎ができたと考えています。
 このほか県政だよりに認知症等一定の病気に関する記事の掲載を行ったほか、認知症家族の会などと連携して、鳥取市、米子市等で行われた認知症市民講座で認知症等の一定の病気に係る運転者対策、また、運転免許の自主返納等を内容とする講演を行ったほか、県内企業、交通安全協会、指定自動車学校協会での研修等に出向き講演なども行っていす。
 さらには認知症等一定の病気に関するポスターも作成して、県内の病院、医院に掲示していただけるようにお願いしているところで、各地区運転免許センターへの来訪者に対するこの種のチラシの配布、掲示等による広報も行っています。
 なお、県民の皆様も家族等周囲の方に、物忘れがひどくなった、信号無視、一時不停止等の違反を繰り返し行うようになった等の認知症が疑われる兆候を認識された場合には、早目に運転免許センターや警察署に御相談いただくことや、運転免許証の更新の際に質問票がありますので、それに正直に記載していただくということが肝要であると考えています。
 認知症による交通事故を起こしてからでは取り返しがつかないことは皆さんもおわかりだと思いますが、さまざまな事情や病状の自覚がないということ等により対応がおくれる場合があるのが今の現実です。認知症対策として、議員御指摘のとおり、警察庁において、75歳以上の方で一定の違反行為をされた方に対する臨時の認知機能検査の実施等を内容とする道路交通法の改正に向けた作業も進められていますが、これも現状を考えると必要かなと感じているところです。
 県警察では、県民の皆様の安全を守るために、認知機能の低下による運転への影響、認知症を早期に発見し安全を確保することの重要性、そしてこれに伴う運転適性相談や自主返納制度の活用について、県、自治体、関係機関との連携を強化しつつ、御指摘の積極的な広報の推進など、県民の皆様へのさらなる周知の徹底を図っていきますので、議員の皆様も一層の御協力をお願いします。
 議員御紹介のとおり、熊本県警では本年1月から看護師2名を運転免許センターに配置し、免許センターの職員とともに運転適性相談、その他各種相談への対応を通じて、認知症の方の早期発見、そして運転免許の返納等を勧めるなどの業務を行っています。
 この事業は、看護師としての経験と専門的な知見に基づいて相談に対応することができるということから、具体的な症状をお伺いして、ある程度病名や詳しい病状がわからない場合でも個々の対応ができる、また、医療機関への受診を勧めることができるということで、実施後まだ1カ月ですが、スムーズな相談対応が可能と聞いています。私も、早目の受診を勧めることにより、認知症を初めとする病気の早期発見、早期治療にもつながることと思いますので、有効な取り組みであると考えています。
 当県においても運転免許証の取得、更新等をされる方で病気等による不安をお持ちの方を対象として、運転免許の取得、更新の可否等についして相談を受ける、いわゆる運転適性相談の取り組みを進めています。東・中・西の各運転免許センターで、昨年中はその前年の25%増となる640件の相談を受理しています。本年に入ってからも増加傾向が続いており、1月末現在で昨年同期と比べて既に3割以上多い52件の相談を受理しています。これまで高齢化に対応し相談体制の整備も若干進めていたので、これらが出てきた結果だと思っています。
 今後さらに高齢ドライバーの増加が見込まれる中、認知症による交通事故防止を図り、社会全体で認知症対策を進めていく上でも、御指摘のとおり専門の相談員の配置等を通じた相談への適切な対応を一層進めていく必要があります。この観点から、県警としてもかなり効果があると認識しており、熊本県の取り組みも参考にして、看護師等医療関係者の運転免許センターへの配置等による相談対応の実施に向けて、関係機関と協議を進めていきたいと考えています。
 高齢化が進展する中、認知症対策は大変大きく重い課題で、県、自治体、関係機関、そして御家族も含め社会全体で取り組みを進めていく必要があり、警察のみの取り組みでは不十分でもあります。議員から御紹介のありました熊本県の取り組みも関係機関の大きな御協力がないとできなかったことと聞いています。
 県警察では、関係機関との現状の連携のあり方、ネットワークを一層強固なものとして、組織ごとでできる取り組みを促しつつ、県警がやるべき施策については可能な限り取り組んでいくということで、認知症による交通事故防止に取り組んでいく所存ですので、今後とも御支援のほどよろしくお願いいたします。

<認知症の事故防止対策について>2


 前向きに対応されるということで、本当に大きな課題というのは、気持ちよく免許証を返納していただく、それが一番大事だと思うのです。そのための環境づくりには、やはり一生懸命汗を流してほしいと思いますし、それと今、若年性認知症というのが一つの社会的な問題になっているわけです。ですから、75歳以上の高齢者の皆さんの認知症についてはいろいろな取り組みを法令的にもされるのですが、若年性という部分については、これはまさに医師でしか見抜けないのです。そこのところもこれからの一つの大きな課題として、その対応策についても御検討いただきたいということで、要望にとどめておきたいと思います。