≪県民への安全・安心対策について≫ |
<戸籍謄抄本取得に関する人権施策> |
県人権局、中部県民局、西部県民局に開設されている人権相談窓口には、平成21年度で264件、22年度で296件、23年度は1月末現在で285件と、相変わらず多くの相談が寄せられています。
県では、県議会で議員からの指摘、提言を受け、昨年6月、宅地建物取引上の人権問題に関する鳥取県の行動指針、アクションプログラムを策定されるなど、前向きな御努力に敬意を表します。
戸籍謄抄本や住民票は、結婚や離婚、親子関係など個人情報が記載されている大変重要な戸籍の証明書ですが、他人に不正取得されたり他人が虚偽の届け出をすることがないように、平成20年5月1日から本人確認が義務づけられています。
しかし、不正に戸籍の証明書を取得し、悪用する事象が全国的に発生したことから、米子市ほか3町では、戸籍謄抄本または住民票の写しなどの証明書を本人の代理やそれ以外の第三者に交付した場合、事前に登録した人に対しては証明書を交付した事実を郵送により通知する制度が導入されています。
私は、いろいろな課題があるにしても、この制度を県下全域に拡大していくことが個人情報の悪用を防ぐ抑止力になるものと思います。ただ、住民基本台帳は自治事務であり、それぞれの自治体の判断によるところが大きいわけですが、知事の所見をお伺いします。
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●知事答弁 |
これについては、戸籍とか住民票について、本人通知をするという制度が始まってきています。ただ、これは市町村が独自に導入しているというレベルです。
住民基本台帳の制度に由来をするわけですが、これはたび重ねて制度改正がなされてきました。昭和42年に体系的な個人の名簿をつくると。それをもとに合理的な行政運営をしようということから住民基本台帳制度がつくられました。ただ、この台帳が非常にしっかりしているものですから、それを使ったいろんなビジネスも起き始めたわけです。悪用する事例も出てくると。そういう中でダイレクトメールを出したり、事件となったりということが起きてきて、あるいは一斉に閲覧をしてアンケート調査的にやるというようなことに使われたり、こういうことで、一たん昭和60年に改正されて適正利用ということになります。さらに、平成18年、19年と相次いで改正が行われましたが、これも前の改正のときは例えば鶴岡市名鑑事件だとかそういう事件がありましたが、今回の場合も例えば関西のほうなどで行政書士の権限を利用して名簿づくりをするとか、そういう事件がどうしても起きてしまうということがありました。
そういうことで、行政書士とかいろんなタイプの方々がいらっしゃいますが、興信所の身元調査に使われるなどが防止されるようにさらなる改正をしようと。だから、請求の主体の問題だとか、例えば同じ世帯の中の人とか、それから行政上の必要だとか、正当な理由がある場合だとか、厳格な制度へと閲覧の規定が改正されたわけです。そういうようになってきたところで一定の抑制は図られたと思うのですが、それでも心配だと。もし請求があった場合には本人に通知しましょうという制度を一部の市町村で導入されて、米子市だとか琴浦町だとか、県内でも4つの市町村でそういう制度が導入されてきています。
これについて、2通りの考え方があるわけで、やはり本人に対する請求ですので、それは本人に知らせるべきではないかということで、人権に特に配慮しようということでそういう制度を設ける市町村が出てきた。ただ片方で、典型的には日本弁護士連合会が反対しているのです。それは、依頼人の依頼に応じて職務を遂行しようとした場合に、それが阻害される場合があるという主張をされているわけです。非常にデリケートで微妙な問題で、これは議員もおっしゃったように自治事務で裁かれるべき事柄ですので、私ども県としては、市町村としていろいろと関係方面の御意見も聞きながら御判断いただきたいと考えています。
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<戸籍謄抄本取得に関する人権施策>2 |
今日の情報社会の中にあって、インターネット上での差別書き込みや誹謗中傷が今大きな問題となっています。お隣の韓国では、有名なタレントがインターネットの書き込みにより自死した痛ましい事件もありました。こうした書き込みはプロバイダーの責任で削除することができるわけですが、すべてを監視するわけにもいかないために、これからもやはり激化することも心配をされています。県としてもその対応について、昨年から国に要望されているわけですが、引き続き粘り強く要望活動を続けていただきたいと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。
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●知事答弁 |
この問題については、議場でもたびたび取り上げられたところでもあり、確かに凄惨な自死事件なども引き起こすきっかけにもなるわけで、現代の病理として人権問題の中核にすえてやっていかなければならないと思います。
これについては、私どもも去年人権についての意識調査を行いましたが、従来より3倍ほどインターネットでの被害というものが報告されているところで、やはり時代が変わってきて、従来の落書きのような形態から、もっと一般への流布の危険性の高いインターネットでの攻撃ということが実際に起きていることを確認したところで。
したがって、今議員もおっしゃったとおり、本県としてこれまでも要請活動をやってきました。具体的にはプロパイダー法が問題だと思います。プロバイダー法の中で、事業者は問題のある書き込みを削除した場合の免責の規定というものはあるわけですが、積極的にこういうものは削除しなさいと、例えば行政からの申し出がこのようにあったと、そういうものは削除しなさいとか、そういうところがないわけです。したがって、我々もプロバイダーのほうに問題のある書き込みがあったときは当然ながら通報や要請を強力にやります。中には応じてくださったのか、ある日突然なくなることがあります。しかし、なかなかそうならないものもあります。そういう場合に非常に困るわけで、何だったら法的手段もとって裁判所を絡めてやるかというような場合も考えるわけですが、最終的には法的な義務がないことを義務づけることはなかなか第三者であるプロバイダーに対しては難しい。書き込んだ人が問題なのですが、書き込んだ人はだれかわからないというのがインターネットの世界ですので、そういうものに対して直接これを削除せよということができない、事実上やりにくいのです。この辺の問題がありますので、制度改正が必要だと私たちは考えています。
国のほうでも、これらの要請が私どもだけではないのでしょう、各種人権団体からも同じような要請があるのだと思いますが、検討はされるようですが、昨年、これは最終的なものではないと思いますが、政府の一機関がこの問題についての研究レポートを出された中には、削除するという、そういうことを何らかの要件を決めて課するということは困難であると、こういう報告を政府として出されています。したがって、プロバイダー法の改正に一気に進むような国のほうの検討状況には残念ながらなっておりませんで、私どもとしては人権救済法の制定、それからプロバイダー法の改正を引き続き強く求めていきたいと思います。
人権救済法については民主党のほうで検討がなされていて、法案化の準備もあるとなっていますが、残念ながら実際に国会に提出するという段階にはなかなか至らないようで、この辺もぜひ進めていただきたいと考えています。
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