平成24年2月定例会代表質問(平成24年2月27日)No.8

≪人材育成について≫
<特別支援学校の教員の養成>
 
 知的障害のある生徒を対象に、職業教育を通じて就労機会の拡大を図り、社会参画を促進しようと、平成25年度、琴の浦高等特別支援学校の開校に向け、現在鋭意努力されていることに敬意を表します。教育長として、この琴の浦高等特別支援学校開校への思いをお聞かせください。

 ところで、県内の特別支援学校教諭免許状の保有率を見ると、平成22年5月1日現在の数字ですが、盲・聾・養護学校全体で、教諭435人のうち免許状保有者は323人で、74%の保有率です。近年、この保有率が低下の傾向にあります。県内の小・中学校に配置されている特別支援学級の状況も、平成23年5月1日現在の数字ですが、教諭333人のうち免許状保有者は129人で、39%の保有率であり、余り高くない現状です。
 特別な教育支援を必要とする児童・生徒が増加する傾向の中、専門的な教育を受けた教諭の確保も子ども達の学ぶ権利を保障するために大変重要なことで、教育現場でしっかり一人一人の子ども達と向き合える資質を持った教員を配置することは、県教委の最大の責務でもあります。したがって、琴の浦高等特別支援学校の開校に伴い、学校の教員定数を幾らに設定され、その教員養成をどのように対応されていくのか、さらには養護学校等を含めた特別支援学校並びに特別支援学級の専門教諭をどう養成されていくのか、目標があればその目標と計画を教育長にお伺いします。 

●教育長答弁

 
 琴の浦高等特別支援学校は、知的障害のある生徒に対して職業に関する教育を行う高等部だけの学校で、本県で初めての設置となる新しいタイプの学校です。現在、平成25年4月の開校に向けて、今議会で工事費等の予算や、あるいは学校設置に係る条例改正をお願いしているところです。
 県内の特別支援学校卒業生の就職はとても厳しい状況にあり、年々ふえてきてはいるものの、2〜3割が就職するにとどまっているのが現状です。このような中で、保護者を初め県民の方々からも、障害のある子ども達が仕事につき、地域の中で自立して暮らしていくことができるように願う声が非常にたくさんありました。こうしたことがあり、関係者の御意見を伺いながら、高等特別支援学校の設置について検討してきました。
 私自身も、大阪のたまがわ高等支援学校や、あるいは東京の永福学園を訪問して、施設や設備が子ども達のために、職業訓練のために本当によく考えられていること、あるいは、子ども達が生き生きと学習に取り組んでいる姿に直接触れて、このような学校を設置していくことの大切さを強く感じました。
 琴の浦高等特別支援学校では、生産流通科とサービスビジネス科という2つの学科を設置して、農業、食品衛生、ビルメンテナンスなど6つの作業種を設けることにしています。学校の設置に当たり、当初、旧赤碕高等学校の校舎を耐震改修して使用する予定でしたが、職業教育の施設や設備を重視させるために、一部校舎を解体して新築することとしました。また、県産材を使ったランチルームを新設し、木のぬくもりを感じながら食育を行ったり、あるいは食事マナー、集団活動のルールも指導したりしていきたいと考えています。
 生徒たちの通学については、社会性をはぐくむ観点から公共交通機関を利用することとしていますが、遠距離のため通学が困難な生徒もいますので、45名定員の寄宿舎を設置することとしています。
 このように、施設や設備を充実させながら、専門性の高い教員を配置して職業教育を行ったり、集団生活、集団活動などを行ったりして、自立して生きていくことのできる生徒を育てていきたいと考えています。
 一方、地元である琴浦町にも大変御協力をいただいています。町のほうからは町内の物産館のチャレンジショップで製品を販売してはどうかとか、あるいは町の青年団からも町内のイベントに一緒に参加してはどうかというようなお話もいただいています。また、学校周辺の地域の方と何回か意見交換をさせていただきましたが、寄宿舎の生徒は地元の子どものようなものだから地元の祭りに参加してもらってはどうかというような提案をいただいたりして、地域で盛り上げていただいています。
 校名である琴の浦という名称は古風ですが、この由来は旧赤碕町から旧東伯町の海岸一帯の呼称で、今後、地域とよりよい関係を築きながら、地元からも愛される学校となるように努力していきたいと思います。
 琴の浦高等特別支援学校の生徒数は、初年度は1学年40人で、法令に基づき教員、実習助手、事務職員、寄宿舎指導員等合わせて40人を配置する予定です。3学年がそろい、120人の生徒数となる平成27年度には約60人の教職員の配置となる予定です。
 学校の大きな柱である生徒の自立に向けた職業教育を行うためには、専門性の高い教員が必要で、計画的に配置をしていきたいと考えています。現在、企業等にお願いして、実際の職場で研修を行っているところです。平成24年度は、高等特別支援学校での実習の内容に沿って、4名の教員を企業などに派遣することを予定しています。今後も職場研修先として障害者雇用に御理解いただいている企業等の協力をいただきながら、教員の研修を積極的に進めたいと考えています。
 続いて、 議員御指摘のとおり、特別な支援を要する児童・生徒一人一人のニーズに応じた指導を行うためには、教職員が特別支援教育について理解を深めることがとても大事だと思います。このようなことから、本県では平成14年度から特別支援学校を初め小学校、中学校、高等学校の教職員を対象に免許の認定講習会というものを開催して、特別支援教育に携わる教職員の免許保有率の向上を図っています。
 平成19年度から、小学校、中学校、高等学校の通常学級においても特別支援教育が行われるようになりました。平成20年度からは講師や非常勤講師も受講者の対象にしたことから、免許の認定講習会の受講者が大幅に増加しています。平成20年度433人だった受講者が、平成23年度は731人になっています。
 議員からは、県内の特別支援学校の教員の免許状の保有率が低下傾向にあるというお話をいただきました。これは、近年特別支援学校と小学校、中学校等との人事交流が活発になっており、小学校や中学校から異動する教員の中には、特別支援学校教諭の免許を保有していない者もいます。このことで、特別支援学校の教諭の免許保有率は一時的に下がっていると考えています。全県的な視点で見た場合にマイナスになっているわけではなく、小学校や中学校などでの特別支援教育の充実や、あるいはまた、特別支援学校では専門の教科の教育内容の充実、そういうものに使っていると考えています。
 教員の専門性を高めるには、やはり免許状の取得が重要です。鳥取県の教育振興基本計画とそのアクションプランにおいて、特別支援学校の免許保有率は全国では70%程度ですが、本県では平成25年度までに90%、そしてまた小・中学校の特別支援学級の免許保有率は全国は30%程度ですが、本県では40%を、まずは25年度までに目指したいと考えています。今後も免許の認定講習や県教育センターの研修講座等を通して、専門性の向上につなげていきたいと考えています。


<特別支援学校の教員の養成>2
 
 専門的な知識を持った質の高い教諭を早急に養成しなければ、複合的な問題を抱えている子ども達に対応することは極めて困難だと思っています。先ほどもありましたが、しっかりとした目標を持って対応していただきたいと思います。これは要望です。
 あわせて、子ども達が上級の学校に進学するのに伴い、個別の情報が伝わらないため、個別の教育支援計画が遅れがちになるとも聞いています。高等特別支援学校の開校を契機に、やはり子ども達の進学に伴う小・中・高の学校間の連携を密にした対策というものを、改めて検討すべきと思いますが、教育長の所見をお伺いしたいと思います。


●教育長答弁
 
 特別な教育的支援を必要とする子ども達が進級や進学をしても、一貫した指導を引き続き受けられる体制をつくっていくことが大切だと思っています。小学校と中学校の間では、同じ市町村にあるので行き来もあって、教員が授業参観などを通して子ども達の状況を把握して、学校間での情報の共有が進んでいます。一方、中学校から高等学校に進学する場合には、個人情報であることなどから情報の共有が進んでいないのが実態です。
 このようなことから、昨年度から保護者の了解をいただき、子どもの様子や支援の内容などが書かれた個別の教育支援計画を活用して、中学校から高等学校への情報の引き継ぎを進める取り組みを始めました。現在、高等学校と中学校との間で日程等の調整を行って情報の引き継ぎを行っており、平成23年度は26人の引き継ぎを行いました。しかし、高等学校で発達障害と診断されている生徒の数から見れば、まだまだ十分とは言えないと思います。今後、中学校と高等学校で協力して保護者に理解していただく取り組みを積極的に行って、進学先の学校へ生徒の情報が伝わるようにすることで子ども達の支援が有効にできるようにしていきたいと思います。