平成21年6月定例会代表質問(平成21年6月12日)No.11

<自殺防止対策について>
 
 4月2日警視庁から、昨年1年間に自殺された人数が公表されました。それによると、自らとうとい命を断たれた方は、全国で3万 2,249人と発表され、3万人を超えたのは1998年以来11年連続、鳥取県では男性 150人、女性62人と、合わせて 212人、前年を21人上回る過去最悪の結果となっています。
 自殺対策支援センターライフリンクというNPO法人があることは以前この議場で澤議員が取り上げられたこともあり、御記憶にあると思います。このNPO法人がことしの3月に都道府県及び政令指定都市の自殺対策推進状況調査、2008年度の調査結果ですが、これを取りまとめ発表しています。
 この調査は、全国の都道府県政令指定都市の自殺対策推進状況を統一的な評価体系に基づき状況を把握し、評価を行う目的で実施されたものです。この調査結果によれば、本県は、都道府県・政令市合わせた全64自治体中、60番目という大変不名誉な順位に評価されています。
 一NPO法人の行った評価に一喜一憂していても仕方がないように思われるかもしれませんが、本県が置かれた状況、調査結果で浮き彫りになった課題を見る限り、静観するわけにはいかないと思い、3年前に引き続き取り上げさせていただきました。
 まず、本県の自殺者の現状について簡単に触れておくと、全国と同様に増加の傾向にありますが、1980年に79人であった本県の男性自殺者は、2008年には 150人と約2倍に急増しています。このように多くの自殺者が生じている状況にあって、本県の対応を見てみると、例えばホームページ一つにしても、政府が開設する自殺予防総合対策センターのホームページの中の地方自治体の自殺予防対策には本県の取り組みが掲載されていないなど、不十分との感はぬぐえないのです。
 さきに紹介したライフリンクの自殺実態解析プロジェクトチームが、昨年の7月に自殺者 1,000人の遺族に面接調査した結果等をもとに「自殺実態白書」を取りまとめています。この白書では自殺を多角的に分析し、非常に鋭い指摘がなされていますが、その中で私は、次の点に注目します。
 まず白書では、自殺者 1,000人の調査の結果として8つのことが指摘されていますが、中でも自殺の背景にはさまざまな危機要因が潜んでいること、危機の進行度にはきっかけ、連鎖、深刻化という3つの段階があること、危機連鎖度が最も高いのがうつ病から自殺という3点に注目しました。つまり、自殺者は動機となる要因が発生してすぐに行為に及ぶのではなく、その動機の周りに幾つかの要因が絡んで、しかも段階を踏んで、多くの場合はうつ病を経て行為に及ぶということです。予見不可能で防ぎようのないケースもあるかもしれませんが、多くはそうではなく、気づくことができるケースが多いということです。つまり、自殺者の7割以上は相談機関、その多くは精神科及びその他の医療機関に行っていたという調査結果です。このように人知れず、ではなく、介入する余地がある場合が多いことを考えると、何か抜本的な対策がとれないものか、少なくとも医療機関任せではなく、医療機関と行政やさまざまな専門機関が連携していくことが必要ではないかと思えてなりません。
 以上、私の思いを申し上げましたが、このことを踏まえ、本県の自殺者数をどう考えておられるのか、ライフリンクの評価結果を素直にどう受けとめておられるのか、特に未遂者に対するケースワーカー、アフターフォロー、救急医療から精神科への連携、民間相談から精神科への連携、未遂者への情報提供体制といった評価項目の自殺未遂者支援に係る評点が0点であるということをどう考えておられるのか、本県の自殺対策をどう考えておられるのか、以上4点について、知事にお伺いしたいと思います。
 
●知事答弁
 
 詳細のライフリンクの状況とか、それについての考え方などは、医療政策監のほうからお話したいと思いますが、まず自殺者数のお尋ねがありました。これは平成14年以来の高い数字になって、とうとう 200人を突破して 212人、過去最高がそのときの 192人でしたので、20人ふえた格好になりました。これは深刻なことだと思います。その内容をよく分析する必要があると思いますし、この議場でも取り上げていただきながら進めてきた我々の自殺対策を、さらに上を目指してバージョンアップしなければいけない、それがあらわれていると率直に受けとめなければならないと思います。
 ライフリンクの評点の結果についても、いろいろと現場サイドではこういうのはちょっと評価してはいけないのかということでいろいろあるようですが、総体としては、お伺いして謙虚に受けとめなければならないと思っています。
 その意味で、今後の自殺対策についてどう考えるかということですが、そのライフリンクの、これは可能かどうかわかりませんが、確かに辛口の点がついていることはありますので、そのライフリンクの当事者の皆さんに一度うちの担当者も面談させてもらって、評価としてこういう評価でもいいのではないかという意見は、いろいろと言いたいことはあるかもしれませんが、それだけではなくて、むしろ我々として率直に他県と比べてここはこうしたほうがいいという客観的な目がいただけると思いますので、アドバイスをもらってはどうかと思っています。
 そして、今までの自殺対策連絡協議会というのがあって、ここには鳥取大学とか、医療関係だとか、あるいはいのちの電話の方とか、行政関係者、警察、こういうものが入ってやってきました。ここがこれまで自殺対策のコアの組織ではありましたが、私は今の伊藤議員の御問で思ったのは、もっと広げてこの自殺対策を考えなければならないということです。それは、これは社会全体の問題であって、家庭でのいろいろな気づきだとかケアのこともあろうし、あるいは職場だとか、あるいは老人クラブとか、地域社会だとかでもサポートできることはいろいろ多いはずだと思います。ですから、県全体としてそうした自殺対策に取り組むべきではないかと思います。
 この議場での議論が重なったので、平成18年には 300万円規模の自殺対策でしたが、平成20年には 600万規模、現在の21年は 800万規模ぐらいですね、自殺対策、もう倍増以上にふやしてはいます。しかし、金額の問題だけではないと思います。今回は、例えばPRのパンフレットとか、それから先ほどの御摘にもあった、医療サイドで精神科とかかりつけ医を結ぶやり方だとか、いろいろと考えていることはありますが、それも実行に移していきますが、そのほかにも、我々も他県と比較しながら、もっと効果があるものがあればそれを取り入れていったり、いろいろな方々の知恵をいただいて議論してみて、いいと思えることはどんどん実行すべきだと思います。
 この6月の予算の中でも相談させていただいていますが、自殺対策について当面 3,000万ぐらい、さらに思い切ってやってみてはどうかという考え方を持っていますので、従来の自殺対策連絡協議会の枠組みとはまた別に、広くいろいろな主体の方に加わっていただいて、自殺対策を論議しながら政策を考えていく、そういう場を設けて対応をとっていきたいと思います。

●藤井医療政策監答弁
 
 ライフリンクというのは、自殺対策を行う団体等を支援するための情報提供等を行うことを目的として2004年に設立された特定非営利法人です。今回のような独自に自治体の自殺対策の調査、評価のほか、自殺の実態調査ですとか、行政等への提言活動もされている団体です。
 このたびの調査は、昨年10月に実施されたもので、評価項目は、推進体制の重点施策等多岐にわたるもので、当県の対策について、御指摘のとおり、大変厳しい評価をいただいたところです。
 ただ、個々の項目を見ると、例えば自殺未遂者の支援について、自殺未遂者の場合には救急医療のほうで対応することになりますが、救急医と精神科医との連携体制というのは県内の病院においても実際にはとられているところですが、このものについて県の施策として取り組んでいるか否かという点が評価点となって、私どものところは0点となっているという面も一方ではあります。
 しかし、本県における自殺の現状等を踏まえたとき、ライフリンクの評価については、自殺対策の検討組織のメンバーとか、本当に参考にすべき点が多々あると認識しています。このたびの6月補正においてもお願いしていますが、自殺対策強化基金を活用しての事業も現在検討しているところですので、これまで県内の関係者の皆さんで構成している鳥取県自殺対策連絡協議会を初め、広く関係者の御見を聞きながら、より充実した対策に取り組んでいきたいと考えています。

<自殺防止対策について>2

 
県は医師会に、うつ病に関するかかりつけ医等の調査を委託されていて、先般報告書がまとめられているようですが、私は何か漠然とした調査で、その結果の生かし方をどうするのか、いま一つ理解できないもののように感じました。知事はこの内容をどう評価しておられるのか、この調査を今後の自殺予防対策にどう役立てようとされているのか、お尋ねしたいと思います。
 また、同時に、鳥取大学医学部に働き盛りのうつ病実態調査を委託され、報告書がまとめられています。この中で、過重労働者に該当する労働者は、うつ状態を発症する率が高いことが指摘されていますが、一方で、1カ月に 100時間または6カ月平均80時間を超える労働者のうち、医師の面接指導を受けた割合は2割程度との調査結果が示されています。労働安全衛生法では、過重労働者から申し出があった場合は、事業主は過重労働者に医師による面接指導を受けさせなければならないと規定されていますが、実態としては、鳥大医学部の調査結果のとおり、著しく低い状況にあります。労働安全衛生の所管は国ではありますが、過重労働、うつ病、自殺の関連を考えた場合、県としても国との連携、そしてまた制度の改正、さらにはそれらの対策の要望等進めることが必要ではないかと思いますけれども、知事に所見をお伺いします。
 

●知事答弁

 うつ病に関するかかりつけ医の調査についてですが、これをどういうふうに評価しているのか、どう役立てようとしているのかということです。
 御指摘の調査は、お医者さんのほうにお尋ねして、どういう問題を抱えているか、特に自殺に至るような深刻なケースがあるわけですが、そのことに役立つような回答をいただこうということでやったわけです。実際に自殺された方は、非常に多くのパーセンテージの方がその前にどなたかに相談しています。
 特に実際の自殺の形態に立ち入るべきなのかもしれませんが、鳥取県の場合、若干特徴的なことがあって、例えば平成18年の統計をとってみると、男性と女性では男性のほうが圧倒的に多いです。その年齢を見ると、大体30代から70代ぐらいまで幅広くピークがあるわけですが、平成18年は特徴的だったと思いますが、ちょうどお年寄りのところですね、高齢者のところに一つの男性の山があって、もう一つの男性の山は勤労世代、40代とか、そういう世代のところにありました。また、女性のほうは高齢者のほうに山のピークがあります。
 自殺の要因分析をしてみますと、健康問題が圧倒的に多いです。その次に、例えば職場のことだとか、経済関係だとか、江戸時代だったら駆け落ちみたいな恋物語が多いかもしれませんが、それは比較的現代は少なくて、どちらかというと健康問題だとか、そういうほうが多いわけです。そういうこともあるのだろうと思いますが、お医者さんのところに相談に行っているケースが実は多いわけで、お医者さんのところはその意味で大きなゲートというか、門番の役割を果たし得るところです。ですから、そのかかりつけのお医者さんが精神科の方とも連携しながらブロックしていく、誘導をしていく、治療していくということは重要で、今回の調査は、そういう意味では一定の示唆はあったと思っています。
 今回の調査を生かして、かかりつけのお医者さんが精神科の方のほうに実際に患者さんを引き継ぐ、紹介するときに、こういうポイントがありますよというような書面をその患者さんに持って行ってもらうような、そんな仕組みをつくったらどうかとか、そういう具体的な提言に結びつくような話も入っていました。実際、これから現実的に実効性のあるアプローチをしていかなければいけないと思いますので、こうした調査を役立てていこうと思います。
 もう一つは、労働安全衛生法の問題がありまして、過重労働、うつ病、自殺との関連を考えた場合に、国のほうで導入された医者への面接指導、これを活用すべきではないかということです。
 これは詳細、商工労働部長から申し上げますが、管轄でいえば労働基準監督署のほうがこの問題を持っています。鳥取県でも労務管理のアドバイザーを社会保険労務士のほうで活用させていただき、今、回っていただいていますが、そうした事業の中で我々もこの国の制度を説明して歩きたいと思います。
 あわせて、これは労働福祉協会ですか、あちらのほうでメンタルヘルスの講習会をされてまして、これを鳥取県でも応援していますが、そうした場でもこうした制度をぜひ紹介していただき、PRしていくように働きかけていきたいと思います。
 
●門前商工労働部長答弁

 
 労働安全衛生法によると、労働者の週40時間を超える労働が一月当たり 100時間を超える場合などにおいては、労働者の申し出を受けて事業者は医師による面接指導を行わなければならないと規定されていて、労働者の申し出ということが前提になっています。したがって、先ほど紹介のあった本県の長時間労働者の中で、医師の面談指導を受けたのは2割にとどまるわけですが、その原因は、労働者が申し出されていないということです。

 この法律は、平成18年4月に施行されていますし、また特に50人未満の事業所においては昨年4月からの施行ということで、法律の施行後まだ日が浅いと考えていまして、そういった意味で制度の周知不足が大きな原因にあると考えています。この法律の所管は国にあるわけで、国のほうでもリーフレットをつくって啓発に努めていますし、また県としても、先ほど知事からありましたが、労働者福祉協議会が行うメンタルヘルス学習会などの開催を支援することで制度の周知を支援しているところですが、まだまだ不十分だと認識しています。今後も国など関係機関と連携して周知に努めていきたいと考えているところです。

<自殺防止対策について>3


 自殺者の問題、本当に残された家族の皆様は大変です。ぜひもう一度点検していただいて、直すべきところは直す、見直すところは見直すという形で取り組んでいただきたいと思いますし、特に県庁は 3,000人という大きな職場です。それは、いわゆる社会一般の議論だけでなく、県庁組織の中においてもやはりそういう部分も見直しをしていっていただきたいと思います。

●知事答弁

 まず、県庁の中で過重労働など自殺に至ることがないように、しっかりとした体制をとってほしいということでした。我々としても、超過勤務の実態については、日々、今では機械的に把握できる体制をつくりました。それで実際の労働時間の管理をしていますし、議員の指摘にあった医師との面接なども、県でもメンタルな問題を抱えている場合などは、我々の福利厚生の中のチームがそうした精神保健についての専門的な相談も受けるようにしています。
 痛ましい事件も起こるのも事実で、そういう意味で我々としては万全を尽くして、安心して働ける、そして思う存分県民のための力を発揮できる県庁をつくっていきたいと思います。