<耕作放棄地対策について> |
農地再生のため、耕作放棄地の実態調査が昨年の4月から1年間かけて県内の市町村並びに各農業委員会で行われてきましたが、その結果、県内の耕作放棄地の面積は
1,094へクタールと発表されました。これまで県内の耕作放棄地の面積は、農林業センサスから得られた数値
3,410へクタールを使っていたように思いますが、このたびの調査で得られた 1,094へクタールと2つの数値が存在することになりました。今後、県はどちらの数値をベースとして耕作放棄地対策を考えられるのか、知事に所見をお伺いします。
このたびの実態調査で判明した耕作放棄地は、県全体の耕作面積の4%で、全国平均の
6.3%を下回っています。市町村別では、米子市の 233へクタールが最も多く、最も少ない三朝町が3へクタール。耕作放棄地の内容を見れば、草刈り等をすれば耕作可能な田畑が約65%の
707へクタール、抜根等手を加えれば何とか耕作できる田畑が25%の 272へクタール、残り10%、
115へクタールが既に原野となり、耕作は困難となっています。この調査は、国が農地の復旧を支援する耕作放棄地再生利用緊急対策に合わせて実施されたもので、これを契機に市町村耕作放棄地解消計画を策定し、平成23年度をめどに農用地区域内の耕作放棄地を解消することが目的とされていますが、このたびの調査結果をどう受けとめられているのか、また、目標達成に向けての対策、見通しについて知事にお伺いします。
また、調査結果によると、市町村の耕作放棄地の面積にかなりのばらつきが見られ、調査基準がきちんと共通認識されていたのか疑問を抱きますが、この点知事はいかがお考えなのか、お伺いします。
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●知事答弁 |
1番目、3番目の質問など、詳細は農林部長のほうから申し上げたいと思いますが、今回、耕作放棄地対策、国を挙げてやろうとしています。私は、重要な視点だと思いますし、この議場でも繰り返し、耕作放棄地を何とかすることが鳥取県農業の再生の道だと、こういう議論が強かったようです。私も同意します。ですから、国としても取り組み始めたこのときをとらえて、鳥取県も大いに乗り出すべきだと思います。
現在の耕作放棄地対策の主役として位置づけられているのは、市町村、それから市町村農業委員会で、今回の耕作放棄地対策の取りまとめ、それから調査もこれらの市町村レベルでやっているわけです。結果を見てみると、例えば琴浦町が4ヘクタールの耕作放棄地だとか、それから三朝町が3ヘクタールだとか、本当に実態に合っているのかなという声は議員の皆様から伺っているところで、私も、果たしてこれが実態どおりの数字かなという気がします。ですから現在の
1,000ヘクタールちょっとのことですべてが終わるのではない。実際の真実を見失ってはいけないのだと思います。
従来の農林業センサスを、では使えばいいのかというと、そういうことでもないのだと思います。むしろ今、調査したところですべてではないので、さらに補った調査を市町村でやるとか、そうしたことで本当の意味の耕作放棄地対策の基礎数値をつくっていくべきではないかと思います。
そして、耕作放棄地対策についてですが、調査結果をどう受けとめるか、目標達成をどう考えるかというようなお尋ねでしたが、各市町村で耕作放棄地対策協議会をつくりました。米子が特に先頭を切って今回は走っておられましたが、非常に詳細に、例えばネギをつくるとか、あるいはニンニクをやってみるとか、そういう作物を考えたり、担い手についてはこういう担い手でやっていこうではないかとか、それぞれの地域地域での計画をつくっています。それから、圃場としてもう一度再生するためには、水を通す必要がある、暗渠が必要だとか、そんなようなこともあり得るわけで、こうした地域ごとにまとめたものを着実に執行していくべきだと思います。
県のほうで今回応援できるかと考えていますのは、そうした基盤整備の部分などが中心だろうと思いますが、今、国のほうで、荒れてしまったところ、県下でいうと、
1,000ヘクタール弱のところは再生可能な農地だということなのですが、その中でも荒れてしまったところがあります。この荒れてしまったところをよみがえらせるための事業費について国庫補助制度があり、その残りのところを、市町村が見るのであれば、鳥取県として半分見ましょうと。すなわち、地元の農家のほうではその基盤整備について負担がかからない形で、急速にその再生を進めていこうではないかということです。
あわせて、担い手の問題がありますので、我々のほうでも担い手農家をふやしていく、そういう集落営農を推進していく事業を従来からやっています。例えば、集落営農をやるという場合には機械化の助成をするとか、そうした担い手側のほうの仕組みづくりもやりたいと思いますし、あわせて今議会にも提案している農林水産業就業サポート事業、これを推進していくことで、つくり手側のほうも整えていくべきだと思います。
土地のほうと、それから耕す人と、両面にわたって施策を行うことで、耕作放棄地をこの際解消に向けて力強く前進させてはどうかと思っています。
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●鹿田農林水産部長答弁 |
今回、耕作放棄地については、耕作放棄地解消ということで、21年度から23年度までに解消するという国の目標に沿って、平成20年度に調査しました。目的としては、それぞれ一筆調査して緑、黄色、赤の仕分けをしようということで、緑についてはすぐ復旧が可能なものということ、黄色については基盤整備等若干必要なもの、赤が難しいものという仕分けでます。
今回、大きく違うのは、耕作放棄地のセンサスの分は 3,410ヘクタール、それで耕作放棄地の全体調査の分は
1,094ヘクタールということで、 2,315ヘクタールの違いがあります。もともとセンサスの定義の違いも若干あるのですが、違いの多くは調査未実施と。この調査未実施の位置づけがどうなのかというと、山林原野化されて、もう既に見た現状が耕作放棄地だという認識が市町村段階であったもので、そういう分については調査の全体のところから外しているという状況があります。それが、一応調査未実施という形で行くと、
2,386ヘクタールあります。ですから、この数字がそのセンサスとの相違に若干近いというようなこともあるので、これから国のほうでは毎年フォローアップ事業ということで耕作放棄の確認調査をしていく状況もありますので、町村とそこら辺をきちんと、その中にまだ復旧できるようなところがあれば、それは耕作放棄地に位置づけて事業で解消していきたいと考えています。
市町村の調査に当たってのかなりばらつきがあったかという話ですが、先ほど申し上げたように、市町村によってこの現況の農地の扱いについて若干違いが出ています。というのは、農地の基本台帳があって、その中に実質は既に現況が農地でないものですから、実際はその農地台帳から農地として外しておくべきなのですが、外されていないものもあるということで、外されていないものについても、実質外していいものという解釈で初めから調査対象から外したという経緯もあり、先ほどいろいろな事例が出ましたけど、米子市などは一応
233ヘクタール全筆調査していますが、三朝町については、既に畑、樹園地が山林原野化しているというような面積が調査未実施として78ヘクタールあります。琴浦町についても、耕作放棄地は4ヘクタールですが、畑、樹園地が山林原野化しているようなことで調査未実施の面積が50ヘクタールあるということで、町村によって調査実施に当たってのばらつきがあったということは事実です。
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<耕作放棄地対策について>2 |
私は、このたびの耕作放棄地の実態調査について聞き取り調査をしたところ、町村によってやはり調査基準が共有されていないのではないかという感じを受けました。この調査の目的は、現地調査を行い、現状を的確に把握した上で、市町村の耕作放棄地解消計画を策定し、23年度を目途に、農業上重要な地域である農業地区域を中心に耕作放棄地の解消を目指すとされていて、極端に言うと、センサスで整理した以後の耕作放棄地を中心に、しかも平成23年度までに耕作放棄地が解消できる田畑に対して調査が行われたのか、という感じを私は受けています。つまり、耕作放棄地解消計画を策定することへのこだわりというか、その理解度というか、現場で相当の温度差があったように思いました。
したがって、このような調査では実態を把握することは難しく、国が要請する計画策定に余りにもこだわり過ぎかなと思っていますので、もう一度、県下の市町村が調査基準を共有しながら、県独自の再調査をすべきと思いますが、改めて知事の所見をお伺いします。
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●知事答弁 |
これは、結局、調査の仕方の制約から、数字において確かにばらつきがあると思います。その意味で、この耕作放棄地対策を進めていく基礎数値として、もっと調査を進めるべき未調査の部分などは加えていくべきだと思います。その意味で、いわば再調査といいますか、調査を補足していくことは必要だと考えています。
現実問題としては、先ほど農林部長が申しましたが、今年度フォローアップを図っていくことになっていますので、フォローアップの中でこの調査を、事実上不足しているところはやりかえていくということが現実的なアプローチではないかと考えています。
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<耕作放棄地対策について>3 |
耕作放棄地をゼロにするため、耕作できる田畑にするためには、自己負担でなくすべて公費で賄うというような、これまでと一転した国の強い意向に基づいた補正予算がこのたびの県議会にも提案されています。このたびの国の一連の対策を見ていますと、とにかく耕作放棄地をゼロにしたいというだけのことで、なぜ耕作放棄地が発生したのか、なぜここまで放置されてきたのか、農家の思いがわかっていないと思います。耕作放棄地を田畑に復元して、本当に何をつくれというのか。調査を行い協力してきた農業委員会や農家にはその姿が見えないと思うのです、今の状況では。しかも国の補助金を受けて再生された田畑は、向こう5年間作物の作付が義務づけられています。農業で食べていければ耕作放棄地がふえるはずもなく、やはりいかにして食べていける、生活の糧としてやっていける、そんな農業の青写真をつくることが、今、政治と行政に求められているのではないでしょうか。知事の所見をお伺いしたい。
また、耕作放棄地の再生に当たっては、その責任を個々の農家だけに求めるのではなくて、県としても作付する作物をもっと選定して奨励しないと、耕作放棄地が一たん解消されても、すぐ耕作放棄地になってしまうと思います。県としての考え方をお伺いします。
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●知事答弁 |
今回、耕作放棄地をゼロにしようという取り組みが国全体で始まったことは、私は一つの時代の転換点を思わせるものだと思います。今までみんながわかっていてもなかなかやらなかったことに、やっと火がついたのだと思います。
今回、この新しい事業が始まるに当たり、町村会から強い要望がありました。榎本町村会長もじきじきにお見えになりました。大分議論されたそうですが、いいチャンスなので耕作放棄の問題に取り組んでみたいと、自分らも最大限やろうと思うが、ただ市町村の財政力にも限界があるので県で手伝ってくれと、それが事の趣旨だったわけです。私も、やはり物事にはタイミングというものがありますから、こういうタイミングで耕作放棄地をゼロにしていこうということに向かっていくべきだと思ったので、このたび議会のほうに提案させていただいていますが、県としても半分の費用負担をさせていただくと。それで、国、県、市町村が一体となって地域での荒れ地を、再び農地として再生していくことに取り組むことにしたわけです。
大切なのは、それとは別に、農政全体の問題なのだろうと思います。結局、現在の農業の厳しさというのは、つくるだけの生産コストほど実際には価格がつかないということです。今、非常に急速に問題になっているのは、和牛などもそうで、和牛も2割とか3割とか値段が下がってきていますが、コストのほうが下がっているわけではないので、厳しい。こういうことはどこの農業領域にも起こっているわけです。ですから、我々としては、そうした意味で農業を再生していくような新しい国の農政システムをつくっていっていただきたいというのが一つ基本にあります。
ただ、現場としては、できるだけもうかる農業にしていく、その体制をとりたいと思っています。そのために、積極的に打って出る、外で稼いでくる、地産他消のような、そういう農業のあり方、販路開拓のあり方を目指そうとやってきていて、これも若干方向性が見えてきたのかなとは思っています。
また、実際に厳しい農業の中で遊休農地を耕すのにいい方策はないだろうか、それで耕畜連携事業を進めようとか、それから新しい有望作物はないだろうか、この辺の研究をしてみようとか、やはり稲を植えるのになれているので稲を中心にやりたいけれども、それを飼料用の稲とか、あるいは米粉として使う道がないだろうか、この辺が今回当初予算からずっと来ていますが、県としてもプロジェクトをつくって、我々なりの提案をさせていただいているところです。
いずれにしても、担い手の問題と、それからつくっていく上でのつくり方、高く売れるような付加価値の高い農業生産の問題と、この2つを両輪で進めていかなければならないと思います。
そして、後段のほうですが、作付する作物の選定について、これも実は東・中・西とそれぞれの地域ごとに我々の総合事務所のほうで、例えばこういうものはどうですかというような提案をさせていただいています。例えばニンニクとか、あるいはマコモタケをつくっているところもありますし、そういう地域性に従ったいろいろな作付のあり方を我々も提案をさせていただきたいと思います。
現実問題、耕作放棄地の場合は、耕作放棄地対策協議会を市町村ごとにつくっていて、そこで推奨作物も含めて計画をつくるようになっています。その議論には、鳥取県の農林関係の職員も参加をさせていただいていますので、そうした中で作付のあり方についても我々なりの提言をさせていただきたいと思います。
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<耕作放棄地対策について>4 |
先般、先々議会ですかね、内田議員からも、水田で菜種をつくって油田というか、ダイナミックな提言があったのですが、やはりそれにしても、ただ、つくる側はつくっても、その菜種をどうどこが処理するのかとか、総合的に考えていかないと、本当は例えばこれだけ油の値段も上がってきた、環境に優しいバイオディーゼル等でも活用できる、油かすはまた畑に還元できる。私は、内田議員の提言というのは非常に検討すべき価値はあると思っているのです。しかし、こうした耕作放棄地を解消する手だての中には全く何も出てこないというか、そういうものも含めながら、私は検討していただきたいという、これは要望です。
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