平成21年6月定例会代表質問(平成21年6月12日)No.4

<市町村合併の総括について>


 平成の大合併と言われていた市町村合併、県内でも39あった市町村も半減し、19市町村となりました。最後に合併した北栄町もことしの秋には4年目を迎え、新しい町づくりが徐々に定着してきた感があります。しかし、合併後の地方自治体の選挙結果を見ると、合併を推進してきた首長さんが極めて厳しい洗礼を受けている状況です。想定されていた問題、想定外の問題と、いずれも現実の生活の中でくすぶり続けてきた不満が投票結果として表われたのではないかと思います。
 合併本来の目的である質の高い行政のもとで、自分たちの町のあるべき方向は自分たちで決めるという本来の自治が十分機能していないことがこのような結果を招いている大きな原因の一つと私は思います。
 知事は今日までの市町村合併をどのように総括しておられるのか、また、県として市町村との関係をどう考え、今後の施策展開を進められようとしているのかお伺いします。
 

●知事答弁
 
 市町村合併は、功罪、両方あったと思います。これは合併をする前から随分議論がなされていて、メリットとデメリットが強調されて、その中で鳥取県では市町村合併を選択する、市町村合併を選択しないということが個々の自治体で行われました。その当時から私も思っていましたが、合併とか自治体の規模については2つのスケールメリットがあるだろうと。一つは、行政効率の面でのスケールメリットですが、その面のスケールメリットは、大きくなればなるほど費用対効果はよくなってくるということは言えようかと思います。それから体制的には有為な人材を雇えるだけの余裕は出てきますので、特に専門性の高い行政水準を達成するには、大きな自治体ほどメリットはあり得るというのは事実だろうと思います。ただその片方で、もう一つ大切で見逃されがちなスケールのメリットということがあって、これはデモクラシー、民主的な決定を行う、自治的な機能を十全に果たすというそういうスケールの問題です。これは必ずしも大きければいいということになりません。
 例えば私は、 300万人もあるような横浜市が果たして市議会と市長だけで民主的な自治的な機能を十分果たし得るかどうか、それは現在も果たしておられるのでしょうが、小さな自治体のほうがそこは得意分野かもしれない、そのことは考えてもいいのではないかと思います。ですから、むしろある一定の規模ということで我々は自治的に話し合いをしていこうというのが、その地域地域の特異性はあると思いますが、例えば大都市地域とそれから中山間地域ではスケールメリットの働き方が変わると思いますが、そうした意味での、別の意味のスケールということも考え得るのではないかと思います。このバランスの上に立って、市町村合併だとか、あるいは道州制も本当はそういう議論も絡み合うかもしれませんが、そうした議論がなされていいのではないかと常々思っているところです。
 合併については、数年たって最近は厳しい見方も浮上してきているようにも思えます。議員から指摘があったように、今、現職シンドロームとでも言うべきものがあり、首長さんで現職と新人と選挙をして、新人のほうが勝利をおさめるケースが大分多く見られるようになってきたと思います。例えば県内でも大山町の首長さんが入れかわるということになりましたし、それから島根でいえば出雲市とか、岡山でも美作市とか、こういうように各県で同じような動きが出てきています。
 その背景にはいろいろとあるわけです。もちろんその地域地域のいろんな行政課題があり、論争があって、それが闘わされた面も当然あると思いますが、片方で、合併について大分盛り上がって選択をしたわけですが、果たしてそれがメリットだったかどうだろうか、見直すべき点はないかと、人々の心が動き始めているのではないかと思います。そういう意味で、私たちも冷静に合併についての功罪を今議論していく。もう合併した後ですから、もし足らないところがあれば補って、市町村自治を十全のものにしていく、そういう努力があっていいのではないかと思います。
 町づくりは、おもしろくなってきた面は多分にあると思います。例えば湯梨浜町で先般トライアスロンが開かれました。これは旧の市町村でいえば、羽合町とそれから東郷町にまたがるところですから、果たしてかつてはああいうイベントをやるという元気があっただろうか。ところが、今は皆さんが随分ボランティアに出て、参加者にも非常に好評なぐらいホスピタリティーのある大会をされたわけです。また、琴浦町でも従来の町内のバス路線が再編されて、新しい琴浦全体のバスとして、それも利便性が高まる要因になったと思います。
 こういうように市町村の行政サービスなり、あるいは町のあり方としてメリットは結構あると私は思います。ただその片方で、自治的な要素だとか、あるいは役場が遠くなったとか、そうした声も根強く出てきているのもまた事実で、例えば南部町とかで行われているように、集落ごととか学校区ごとの新しい自治組織、それに行政機能を持たせて再編しようではないかとか、そういう動きに私は評価できるのではないかと思います。そのようにして合併がなされた後の本当の町づくりの時期が今やってきているのではないかと思います。
 市町村は住民サービスの中核を現場で担う、それから県は広域的な事務を担う、ということで、お互いの関係性を規定しているわけですが、私は、鳥取県のようなところであれば、そういうドグマは少し低くしてもいいのではないか、垣根を低くしてもいいのではないかと思います。市町村と連携ということを就任当初から訴えて、話し合いの機会も多く設けましたし、正直なところ市町村の問題意識にこたえるような県政にもなり始めているのではないかと思っています。そうした意味で、本当の意味でイコール・パートナーシップ、パートナーシップであるのは対立するだけではなくて強調し合って補い合っていく、そういうことも追求していきたいと思います。
 そういう中でこれからテーマになるかなと思うのは、市町村の行政領域と都道府県の行政領域があるわけですが、今、地方制度調査会などが垂直的な統合というような話もありますが、私は、垂直的な統合に対する抵抗感が強いようであれば、むしろ市町村と都道府県で、共同で行政領域をつくることもあってもいいのではないかと思います。
 例えば、納税という市町村にも県にも共通する行政領域があります。あるいは道路行政だとか福祉だとかそうしたところを共通にしたり、あるいは県で持っているものを市町村のほうにお渡しすることで動きやすくしたり、住民サービスを向上させたりということを私はこれから強く打ち出していってはどうだろうかと思っています。現在もこの点で市町村との話し合いを始めているところです。
 これは、市町村側にもメリットがあると私は思います。単独で存続しているところの厳しさがよく言われますが、合併したところもこれからだんだんと合併のメリットが薄れてきます。例えば大鳥取市であっても、合併特例の交付税措置が切れると約5%財政影響があります。財政全体に対しての5%の交付税が失われる。それは、例えば八頭町とかだと8%を超えるぐらいの財政影響が出ます。米子のようなところは大きいところと小さいところが合併したというような面もあって、 1.5%かそこらですか、1%台ぐらいの財政影響ですが、ただ、少なからず影響が、今後特例が切れてくると出てくるわけですから、やはり強調して、効率のいい財政で行政サービスを追求することは、市町村側にも意識が出てくるのではないかと思います。

<市町村合併の総括について>No.2

 
 日本人は過去を総括することが大変苦手だと私は思っています。しかし、苦手といって看過するのではなく、市町村合併についてはやはり既に一定の時間も経過したことですから、いま一度冷静になって、住民の目線でしっかり総括することが必要ではないかと思っています。先ほど取り上げた生活保護の基準額の設定の問題、さらにまた、以前私が取り上げた局地激甚災害制度の問題、これらもやはり合併に伴い十分な議論がされていない部分だろうと思っています。

 現在もそういう市町村合併が行われたが、まだまだ放置されているいろいろな課題があると思うのです。もう一度その辺を皆さん方がきちんと点検して、改正を求めるべきものはしっかり国に改正を求めていくということをしていきたいと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。

●知事答弁
 
 先ほどの生活保護もそうですし、以前伊藤議員がこの議場で指摘された局激と呼ばれるような局地的な激甚災害、その仕組みもそうです。
 本来、それぞれの政策的なアプローチとしては、例えば災害であれば、急激な災害が起こり、局地的に起こっているわけですが、従来であれば台風のようにのべつ幕なしに災害が起こったものが、今は集中豪雨で起こるようになってくるというふうに変わってきている。それとあわせて市町村は枠組みが変わってきて、大きくなったわけですから、この災害に対する財政援助の仕方とか国の負担のとり方も当然ながら変えなければならないのですが、変わっていないというのが問題です。こういうような現場の視点での制度改革をこれからも求めていきたいと思いますし、この議場での大いなる議論から生まれた提言も国に届けていきたいと思います。