平成21年6月定例会代表質問(平成21年6月12日)No.9

<鳥取環境大学について>

 
 鳥取環境大学の設立の発端は、平成7年、鳥取商工会議所等から県と鳥取市に提出された東部地区に公立大学を設置の要望からです。その後、大学設立準備委員会等で検討され、県議会でも随分活発で濃厚な議論が行われ、最終的に平成11年6月県議会において、鳥取環境大学設置に関する決議が可決され、鳥取県、鳥取市それぞれ約 100億円ずつ、合わせて約 200億円の巨費が出資されました。
 当時としては全国的にも数少ない先進的な大学運営として、多くの関心と期待を抱く中で、平成13年4月に「人と社会と自然との共生」を建学の理念として、公設民営の形態で鳥取環境大学が開学し、8年が経過しました。
 当時の議論を思い起こすと、少子化が進む中、学生の確保は大丈夫なのかという疑問と不安を抱く声がある中、圧倒的な待望論が大勢を占め、県議会で最終決断されたことがきのうのように思い起こされます。
 確かに、環境をテーマにした大学ということで、一般論としては時代のニーズ、流れにフィットした大学であると思います。キャンパスも太陽光をプリズムで集め、補助照明として活用し、太陽熱を活用した給湯設備、太陽光発電、バイオディーゼル燃料の活用等も行われている先進的な施設です。
 ところが、開学から8年経過した今日、当時の不安が現実化してきたのではないかと危惧しています。開学からわずか4年で募集定員を割る状況が続き、昨年度は 141人と定員の4割程度にまで入学者が落ち込んでいます。
 そうした中、21年度からは従来の環境政策学科を環境マネジメント学科と環境政策経営学科に分離して改組するなど、学科再編の改革も進められてきました。改革の効果もあり若干改善したものの、21年度の入学者は4学科 276人の定員に対して、入学したのは定員の55%に当たる 152人という厳しい結果でした。公設民営の改革で期待されたのは、運営面で私学のよさを発揮できる経営形態だったわけですが、期待どおりの運営になっていないのではないかと思うのです。今日の現状ついて、知事としての所見をお伺いします。

●知事答弁

 
 確かに鳥取環境大学、このたび非常に厳しい中ではありますが、大学のほうでも学校の改革を進めている状況だと思っています。
 そもそも、人と社会と自然とが共生する、そういう未来型の環境の世紀にふさわしい、そういうライフスタイルを研究し、そこで必要となる有為な人材を地域から育てようではないか、これが鳥取環境大学の試みだったと思います。もともとの問題意識としては、鳥取には鳥取大学以外に大学はなく、そして短大はありますが、18歳の高校生を終えた後の行き先がない。これが都会地へ出ていってしまう。人口流出の原因にもなる。そういうことではなくて、やはり地域で入学できる大学をつくろうではないかということで大学構想は始まったわけです。紆余曲折がありまして、結局のところは公設であって民営の、そういう民間のほうで経営責任をとっていただきながら、公的にはその設置を応援する、こういう形態を選択したわけです。当時、同じようにこうした公設民営方式を選択したのは、例えば高知工科大学とか、いろいろと各地にありました。第三セクターがはやるような時代でもあったので、一種の一つのブームの中で公設民営の方式による鳥取環境大学ができたわけです。
 しかし、これは平成11年に6月議会など大議論がありまして、そもそもこの大学をつくるべきかどうか、それについては伊藤議員も議論の中に加わっておられたと思います。最終的には、藤井議員が委員長で、その改革の方向性を取りまとめたり、いろいろとしました。そして、設置しようということになったわけです。ただ、そのときの基調としては、公的には関与するが、民間の私学の経営のよさで、自由に濶達な学校運営をしてもらいたい、これが基本だったと思います。
 果たせるかな、開学してその後、入学試験がありましたが、全国から多くの志願者も集まり、滑り出しは入学定員を大幅に上回るぐらいでした。ですから、貯金もたまったわけです。しかし、その後、急激なカーブで入学者が減ってきている、志願者も減ってきているということです。
 今回は、それにブレーキをかけるべく、大学の改革を古澤学長が試みられました。その結果として、環境マネジメント学科、それから環境政策経営学科の2つが誕生したわけで、こうしたことで学生が変わる中、入学者は 152人と、先回、昨年よりも上回ったことになりました。今までずっと下がってきましたので、初めて入学者が前年を上回ったということになったわけです。しかし、内実として志願者数は減り続けていますし、入学者はふえたものの、厳しい状況であることは否めないと思います。
 現在は、まずは大学としてできること、そもそも私学で自由濶達に経営しようということですので、独立の精神でいろいろと組まれています。例えば奨学金制度だとか、それからアパートに入居される学生さんの助成制度だとか、そのようにさまざまな改革がなされる中で、やや下げどまったかなという状況は出てきたと思います。
 しかし、議員が御指摘のとおり、この議場で大議論をして、設置する、しないから始まったときに夢見ていた大学の運営の理想が実現でたかというと、必ずしもそうではないと言わざるを得ないのではないかと思います。
 現在の状況を申しますと、ずっと大学側は積立金をしていて、これが30億円あります。それから、過去に入学定員が大幅に上回ったときの遺産があり、7億円ほど剰余金があります。ですから、直ちに大学運営が行き詰まるということは絶対にありません。ただ、向こう10年ぐらいはまず問題ないとしても、では、それから持続可能な経営になるかどうか、これはまだ十分ではないと思います。これは一つの感覚として申し上げれば、例えば入学者が 200人ぐらい確保できるということにならないと、持続可能な経営ということにはならないのかもしれません。ですから、現在、大学の中では大学の改革の委員会を設置して、みずから今、改革の考え方の取りまとめに入っているところです。私としては、それを当面は見守っていきたいと思いますし、大学側としての自助努力にこたえるためにも、入学者がふえるように、志願者がふえるように、そのPRだとか、あるいは高校の教育サイドの問題とかがあるので、いろいろな応援はしていきたいと思います。

<鳥取環境大学について>No.2

 
 開学以来、入学者の大幅な減少により入学金、授業料、国庫補助金ともに減収となっており、今後は単年度で6億 5,400万円もの赤字が見込まれています。20年度末には確かに運営費余剰金並びに減価償却引当金などの留保資金が37億ありますが、今年度末には34億に減ると予想されています。早晩、留保資金も今の状況なら底をつくというおそれがあると思います。知事は10年と言われましたが、私は10年は今の状態ではもたないと思っています。
 これまで民営という見地から自治会の成り行きというものを見守ってきましたが、そろそろ開学の最終決断をした県議会としても、また多額の税金を出資してきた県としても、一歩踏み出して、それぞれの立場から議論を深めていく時期が来ているものと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。

●知事答弁

 議員のほうから指摘があったように、6億 5,400万円の赤字ということになります。ただ、他方で3億円ほど毎年積み立てもしているわけで、差し引き考えると実質は3億 5,000万ということになるかもしれませんが、ともかく予断を許さない状況であることは全くそのとおりだと思います。
 先ほど10年と申しましたが、それは一つの雑駁な話であって、どのように坂を転げ落ちるようになるか、これからずっと、毎年入学定員が下がっていましたので、在校生は必ず毎年減るわけです。卒業者と入学者の間差ですから。そうすると、大学の経営状況はなお悪くなってくると。たとえ入学者が変わらずとも悪くなってくるということですので、決して予断を許さないという認識をしています。
 議員が御指摘のように、そもそもこの鳥取環境大学を開設するときは、随分と議論があって、いわばこの場が生みの親の立場だろうと思います。ぜひ活発な議論をしていただいたら結構かと思います。私は、そもそも最初に私学のあり方ということ、行政と独立して学校というものを開設していく、そこで自立的に採算も合わせていくという考え方は間違っていたとは思いませんが、それが現実に難しくなっている状況も見てとれます。これをどうするかというのは、地域の重要な知的インフラである大学の存立にいずれはかかわってくることです。今々急々に立ち行かなくなるということではありませんが、ただ、今から抜本的な対策を講じておくという考え方も当然あろうかと思います。
 その意味で、現在、昨年の5月以来検討しています大学のあり方検討会が学内にあるので、その議論がこれから煮詰まってくる段階だと思いますから、私はこれを注目して見ていますし、ぜひ議場でもその議論の進展を横にらみしながら活発な御意見を賜ればと思います。