平成17年9月定例会代表質問(平成17年9月26日)No.15
<県民所得について> |
平成17年8月の内閣府の月例経済報告によると、景気は企業部門と家計部門がともに改善し、穏やかに回復していると報告されました。しかし県内では、まだそのことが実感できる状況ではないと思っていましたが、県税収入もようやく16年度分から増収に転じたと報道され、ようやく底打ちをしたのかなどと思っておりますが、知事の感想をお聞かせください。 ことしの3月、内閣府が発表した県民経済計算によると、2002年度の1人当たりの県民所得が 246万 1,000円で、全国で最大の下げ幅であると発表されました。この所得は、92年度の 246万 8,000円を下回るものです。この要因はいろいろな説があり、私も経済学者でありませんからよくわかりませんが、いずれにしても、この現実を直視し、県として真摯に受けとめなければならないと思っております。知事はこの現実をどう受けとめておられるのか、お伺いします。 金融広報中央委員会の調査では、貯蓄ゼロの世帯も、お年寄りや就職につけないフリーターなどの若者を中心にふえ、5人に1人と報告され、厚生労働省によると、日本の世代別所得水準は、80年代前半で上位2割と下位2割の開きが10倍以内であったのが、90年代後半から急激に拡大し、2002年度には 168倍に達していると報告されています。また、内閣府の2005年度版の国民生活白書に、親の世代の格差が子供の世代でも受け継がれる、世代をまたがった固定化につながる可能性もあると指摘されております。バブルのころには国民の大半が中の上という生活意識でしたが、いつの間にか大きく開いて、国民の所得格差にはただただ驚かされる実態であります。この現実について、知事に御所見をお伺いします。 私が問題にしたいのは、我が県における所得の下げ幅が一時的な傾向ではないということです。今後もこの傾向が予想されるとするならば、県としても総合的な対策を早急に検討することが必要ではないかと思いますが、知事の御所見をお伺いします 我が国の経済は、海外需要にも支えられ、回復の傾向にあると言われておりますが、このほど発表された日銀松江支店の報告のとおり、県内においては期待できる要素どころか、依然厳しい状況が当分続くものと思われます。特に有効求人倍率は、昨年の6月をピークに下がる傾向にあるなど、89カ月連続で 1.0倍を割り込んでおります。 このように企業成績が思うように回復しない県内企業、特に中小の企業においては、正規の職員から派遣職員、パート、アルバイトに移行されるところが多く見受けられ、雇用をめぐる状況が随分変わってきました。企業の中には、社会保険や厚生年金の負担が高くて、正規の職員を減らされているところもありますし、仕事は同じであっても、あえて正社員からパートや派遣社員などの非正規社員に移行されているところがあります。派遣職員の皆さんは、新しい職についた時点で次の仕事場を探さなければならないのが実態です。 いずれにせよ、雇用されている人の労働環境は厳しくなるばかりです。このような社会が続くとしたら、自治体の財政運営にも影響を及ぼすどころか、若者が働き場を求めて県外に流出することさえ心配されます。この現状について知事の認識をお尋ねするとともに、有効求人倍率が下がり続ける理由、この現状を打破するためにどのような施策で歯どめをかけられていくのか、お尋ねします。 |
●知事答弁 |
景気の問題で、本県の景気の状況をどう見ているかということですが、やや明るくなったとの印象も、私も特段その具体的な根拠はないのですけれども、そんな印象を持っております。ただ、実際に統計数値、例えば有効求人倍率などを見ますと、決してそうでもない、顕著な改善は見られないということだと思います。個々の企業を見てみますと、収益を回復している企業もあります。これを見ますと、やはり多少底を脱したのかなという気もしないでもないのですけれども、それぞれの企業にはそれぞれの事情があって、個別特殊な事情もありますし、それからもう1つは、やはり徹底したリストラによって経費削減、例えば人件費を削減するとか、そういう経費削減によって、コストを下げて収益をふやしたという面もあるわけです。 アメリカの景気回復のときに、景気は回復したけれども雇用は全然伸びない、ジョブレスリカバリー、要するに雇用なき経済回復ということがよく言われましたけれども、私は有効求人倍率などの推移を見ておりますと、鳥取県内の企業でも、ささやかながらそういうジョブレスリカバリーが見られるのかなという印象もちょっと持っております。 これは藤井議員の代表質問のときにも少しお話ししましたけれども、基本的に県内の産業構造というのは、やはり例えば土木建設業の割合が非常に高い。これが今の政府や県や市町村の財政政策の中で伸び悩みといいますか、だんだんと市場が縮小してきているということがありますし、県内一般に下請企業の体質が強いという傾向も見られますので、それやこれやをあわせて考えますと、自立的に景気が回復する、県内の企業の収益が回復する、自立回復というのはなかなか困難な産業構造になっているということ、これもよく認識をしておかなければいけないと思います。 したがって、これは今日明日の問題ではありませんけれども、長い目で見た場合には、産業構造自体を転換していく、下請体質からの脱却ですとか、土木建設業に過度に依存している経済構造を変えていかなければいけないということがこれからの課題になってくるだろうと思います。 県民所得が減少しているということですが、これは全国的な傾向の中で鳥取県の県民所得も落ち込んでいるということです。ただ、御指摘になった時期のことを思い起こしてみますと、あのころは企業の倒産やリストラが非常に相次いだわけです。そうしますと当然、民間企業の賃金が落ち込むわけですので、そういうことが県民所得の落ち込みに当然反映していると思いますし、さらに民間企業のリストラですとか雇用の状況をにらみながら、これは14年度からだったと思いますけれども、県の職員の給与の5%カットをやったわけで、官のウエートのかなり高い地域ですので、この5%カットなども、統計上は雇用者報酬の減少につながって、それが県民所得の減少にいささかなりとも反映しているということはあるだろうと思います。そんなことで、鳥取県の県民所得の減少ということは説明できるのではないかと思います。 ぜひ、これから県内企業の収益が回復して、そして雇用もふえて、そして給与も上がり、それを背景にして公務員給与も回復できるという、そういうような状況になればいいなと願っているところです。 金融資産がゼロの世帯もある、二極分化が起こっているのではないかということですが、今しきりに言われておりますのが勝ち組と負け組というので、このことだけで爆発的に本を売っている森永さんなどという変な経済学者もおられるわけですけれども、やはり実態としてあるのだろうと思います。勝ち組、負け組という言葉がいいかどうかわかりませんけれども、もっと違った言い方で言いますと、正規雇用のポジションにある労働者と、非正規雇用のポジションに甘んじている労働者の皆さんとの間にかなり経済格差ですとか、金銭面だけではない処遇面での大きな格差があるだろうと思います。これは社会のあり方として決して好ましいことではないと私は思っております。 我々が理想とする社会というのは、もちろんみんなが平等ということは、これはそんなことを想定しているわけではありませんけれども、少なくとも機会は均等でなければいけない、機会の平等は保障されなければいけないと思うのですけれども、例えば今言われている勝ち組、負け組というのが世代を超えて固定化してしまうということになりますと、これは我々の社会にとってはゆゆしい問題です。そういう認識を持っております。 今後の課題ですけれども、1つは、非正規労働者の割合が今、高くなっておりますけれども、これをできるだけ正規の方へ持っていくということ、これは一つの方向だろうと思います。ただ、今の趨勢を見ますとむしろ逆で、正規の方から非正規の方に移る、非正規労働者の方がふえるという傾向にありますので、この民間の実態を今直ちに押しとどめるということは、なかなか難しいだろうと思います。そうすると、今、非正規労働者のポジションにある方々の処遇を考えなければいけない。 今、県でも雇用の中での非正規労働者の現状というものの実態をよく把握しようというので調査をしたりしておりますけれども、例えば、労働基本権の問題はどうなっているのかとか、これは労働組合というのが当然あるわけですけれども、どちらかというと、やはり正規労働者を正規メンバーにして、非正規労働者はわき役のようなことでずっと来ていると思うのです。官公労なども典型的にそうかもしれませんけれども。そういう中で労働基本権が果たして認められているのかどうかという、これは大きな問題だと思うのです。そういうことも含めた非正規労働者の処遇の見直しということは、これはやはり一つの大きな課題だろうと思います。 もう1つは、これは多少言いにくい面もあるのですけれども、非正規労働者の割合がどんどんふえるという実態にある中で、正規労働者は非正規労働者に比べて相対的には著しく恵まれているという、例えば終身雇用なんかは典型的ですけれども、そういう二極分化があるわけです。そこで固定化してしまって、非正規労働から正規労働に移るチャンスが奪われてしまうというような、そういう固定化があってはいけないわけです。そうすると、正規労働の部分ももう少し流動化して、非正規労働者が正規労働者の方に移れるという、そういう流動化が本来は必要なのではないか。これは恐らく異論反論があると思います。せっかく正規労働の身分保障があるのにというような反論がすぐ出てきそうですけれども、長い目で見た場合には、今の二極分化している正規労働と非正規労働とを峻別しているような境目はもっと取っ払わなければいけないのではないか。それがなければ、二極分化、勝ち組、負け組というのは固定化してしまうのではないかと、そんなことも私は個人的には考えております。これはここで議論すべき問題ではないかもしれませんけれども。 いずれにしても、今の現状が例えば世代を超えて固定化するようなことは絶対に避けなければいけない。そのためには、必要な施策をとっていかなければいけない。もちろんこれは国の役割が大きいのですけれども、県としてもできることをしていくということです。 鳥取県の県民所得が下がったことが一時的ではなくて、今後もこの傾向が続くということで、それをどうするのかということですが、これは先ほど申し上げましたように、やはり産業構造自体がこれから少しずつ変わっていかなければいけないと私は思っております。どうしても公共事業に依存する度合いが高い、これは国に依存するということですから、国の方の財政によって盛衰が決まってくるということで、こういう依存体質の強い業種が非常に高い割合を占めているというのは、地域の産業構造にとっては決して健全な姿ではないと思っております。 それから、先ほど言いましたように下請体質からの脱却。これからは下請だけではなくて、みずから企画をし、商品開発をして、そしてブランド性を持ち、販売力を持ちというような自立型の企業がふえてくるということが必要だと思います。したがって、県の産業政策も、従来は例えば産業技術センターなどもできるだけコストを縮めるという、下請体質に合った技術支援などがかなりウエートが高かったのですけれども、もちろんそれも必要がある限りはやっていきますけれども、これからはそれとはちょっと違った企画力とかデザイン力とか、そういうものを高めるような、そういう企業支援というものも必要になってくるだろうと思っております。 先ほどの有効求人倍率が下がったことに伴って、特に若い方などがこれから職につきやすくするためにはどうすればいいかということだろうと思いますけれども、県としては同じような問題認識を持っておりまして、特に若い方が雇用される、そういう企業の誘致に努めてきております。先般も藤井議員の方からお話がありましたけれども、コールセンターなどもそういう意味で若い方中心の企業ですので、誘致に努めたわけで、これはうまくいった方だと思っております。 あとは情報提供や職探しの機会をできるだけ提供する、ミスマッチがないようにするということで、これは若者の皆さんを対象にした職業紹介の場なども鳥取と米子に設けているわけで、こういうことをこれからも続けていきたい、努力をしていきたいと思っております。 ただ、せっかく若い方をたくさん雇用する企業を誘致しても、実は、今度はそれに応ずる求職者がいない、求人はあっても求職者がいないという、このミスマッチもあるわけで、その点はぜひ労働雇用市場をにらみながら自分の進むべき道を考えるとか、それを念頭に置いた自己研さんを積むとか、そういう労働側の方の努力、変革ということも求められると思います。 |