平成17年9月定例会代表質問(平成17年9月26日)No.28

<義務教育のあり方について>

 
 小・中学校の義務教育の目的は学校教育法に示されているわけですが、現実、その目的が達成されているのだろうかと、最近疑問に思うようになりました。そのきっかけは、運転免許試験を受験している青年との出会いからでした。小学生のときから怠学、要するに勉強を怠けていた青年は、結婚し、子どもができたことから、心機一転、仕事をする上で不可欠な運転免許を取得しようと自動車学校に通いました。実技は一発で受かりましたが、学科がどうしても受かりませんでした。なぜ学科が合格しなかったのか。実は、彼は怠学していた、要するに学業を怠けていたせいで、漢字が思うように読めなかったのです。しかし毎晩、彼の奥さんが問題集に仮名を振ることで勉強し、10数回目にしてようやく合格しました。

 そのとき、ふと、義務教育とは一体何だろうと疑問を感じるようになりました。小学校の卒業式、中学校の卒業式では、それぞれ義務教育課程を修了されましたのでということで、ほとんどの児童・生徒に修了証書が授与されております。しかし、この青年を見るにつけ、現実にすべての子ども達が本当にそれぞれの教育課程を修了していったのだろうかと思うのです。
 こうした実態について、教育長の認識と、義務教育という最低限の教育のあり方について見解をお伺いしたいと思います。この青年のような怠学、つまり怠けていた生徒、さらには不登校、複雑化する環境の中で、システム的に義務教育課程の補完が必要ではないかと思うわけですが、教育長の御所見をお伺いします。
 

●中永教育長答弁
 
 義務教育の目的につきましては、伊藤議員がお話しになりましたように、学校教育法に明示されているところです。例えばですけれども、小学校では日常生活に必要な内容を理解したり処理したりする能力を養うことですとか、あるいは中学校では、これも一部ですけれども、社会に必要な職業についての基礎的な知識と技能、あるいは勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うとか、そういうことが学校教育法に明示されているところです。
 具体的な学習内容につきましては、義務教育を修了した段階では、やはり学習指導要領に明示されている内容、これも例えばですけれども、中学校3年の国語には、学年別漢字配当表に示されている漢字を書いて、文や文章の中で使えるようにすることとか、あるいは中学校3年の数学では、数の平方根を含む簡単な式の計算ができることとか、そういうことが学習指導要領に定められている一つの内容ですけれども、そういうものがしっかりと身についていなければならないと認識をしておりますが、議員お話しのように、漢字の読めない方がいらっしゃったということは非常に重く受けとめなければならないと考えているところです。
 児童・生徒に必要な知識や技能を習得させるためには、学校とか家庭ですけれども、日々の着実な学習の積み重ねというのが何よりも大事だろうと私は思っております。学校では当該学年で習得しておくべき知識等を習得させてから進級させなければならないと考えております。そのために、例えば習熟度別の編制による少人数の学習で、わからないところをしっかりとわかるようにしていくとか、教育課程外のゆとりの時間を使ってドリル学習をして、きちんとした基礎的な力をつけていくとか、あるいは放課後の補充学習を個々の子ども達に対してやるとか、各学校で工夫して努力しているところです。
 また、義務教育における各学年の課程の修了や卒業については、平素の成績を評価して学校長が認定するとされておりますので、先ほど申したような平素のこうした努力が非常に大事なものだろうと考えておるところです。
 いずれにしても、義務教育において身につけるべき学力というのは、これから子ども達がいろいろな経験をしながら、しっかりと社会の中で生きていく上で一番基本になる大事なものだということは申すまでもないと思っておりますので、学校で引き続き、子どもの実態に応じたしっかりとした教育を行って、義務教育段階で求められるような知識や技能を習得させるように努めていかなければならないと考えているところです。
 続いて、義務教育課程の、議員は補完とおっしゃいましたけれども、補習的な意味合いかなとちょっとお聞きしておるのですけれども、私の聞き違いかもしれませんけれども。義務教育課程の補完について、システム的に補完するもの、補習が必要ではないかというお尋ねだったと思いますけれども、各学校では退学や不登校を生まない、退学といいましても、学習にしっかりと集中しにくい子ども達や不登校を生まない学校づくりに努めているところですけれども、どうしても学習に集中しない子ども達、あるいは不登校の子ども達がいるのも確かですので、そのため学校では、家庭と連携をとりながら、いろいろな取り組みをしております。例えば、なかなか学習に集中しない子ども達については、さっき言いましたように習熟度別の授業でしっかりと様子を見ながら細かく対応していくこととか、あるいは放課後に個々の子ども達を指導していくとか、あるいは不登校の子ども達については教育支援センターにおいて学校復帰に向けた取り組みをするとか、あるいは昨年度から始めております、長期休業中が中心になりますけれども、大学生を中心としたボランティアによる学習支援員の派遣という行っているところです。
 議員が御提案のシステム的な義務教育課程の補習ということについては、例えば国際的な学力到達度調査でトップクラスになりましたフィンランドでは、9年間の義務教育後に基礎学力が身についていない子ども達がもう1年間履修するということができる制度があると聞いておるところですけれども、こういうふうな制度の導入につきましては全国的な問題ということで考えておりますので、これを期待したいと思っておりますけれども、繰り返しになりますけれども、本県においては、そういうふうなことになりませんように、義務教育段階で確実に身につけておかなければならない基本的な知識や技能、あるいは最近問題になりますのは学ぶ意欲が落ちてきているということがありますので、こういうふうな学ぶ意欲をしっかりと身につけて、そういうふうなことがないまま義務教育を終えてしまうことのないように、きめ細かな指導をしっかりとしていくことが必要だと考えておるところです。