平成17年9月定例会代表質問(平成17年9月26日)No.3

<市町村合併について>

 
 たくさんのごちそうが用意され、国策の1つとして進められた平成の大合併と言われている市町村合併。鳥取県内の市町村合併も、この10月に北条町と大栄町が合併して北栄町が誕生すれば一段落を迎え、市町村の数も39から19となり、県内の市町村の規模も、合併しなかった人口 3,000人余りの日吉津村から20万人都市となった鳥取市と、まさに大きなまだら模様の合併となったわけですが、この市町村合併の状況について、知事としての感想をお聞かせください。
 この市町村合併のありようについては、議会において知事と何度も議論をしてきたところですが、このたびの市町村合併、国策合併という部分があってか、何か合併の議論が、合併してどんな町をつくるかということよりも合併に向けた作業に全精力が費やされ、合併疲れといいますか、合併した市町村の方が何か元気がうせているような気がするのは、私だけでしょうか。逆に、厳しい社会条件の中で単独のまちづくりを選択した市町村は、生き残りをかけて、知恵と汗を流しながら、元気のよいまちづくりが進められているように思うのです。
 例えば三朝町は、「三朝町の自立に向けた変革のための行動計画」なるものを策定し、地方分権時代に即した行政システムを再構築するとともに、住民とともに厳しい現実を共有しながら、まちづくりへの発想転換が進められています。
 このように、単独で残る市町村は、行政のあり方、まちづくりのあり方の原点を模索するような何らかの取り組みが真剣に進められており、その中でも特筆すべきは、境港市が第三者機関である経済ビジネス誌「週刊ダイヤモンド」のランキングで行政改革度日本一になったことであり、このことをよく示していると思うのです。
 知事は、このように単独で残る市町村と合併した市町村の現状について、どのような所感を持っておられるのかお伺いするとともに、このようにかなりの温度差のあるまちづくりのありように対して、県として今後どのような助言をされていかれるのかお伺いします。
●知事答弁
 
 市町村合併について、今日までの県内の合併の状況についての感想をということですが、それぞれの地域でそれぞれの市町村で合併をするかどうか、いかなる合併をするのか、合併をする際にいろいろな問題がありますが、それをどうやって克服するのかということを努力されてきたたわけで、その結果を私としては尊重しているところです。
 合併された市町村におかれましては、一応規模の拡大ということはできたわけですけれども、決して規模の拡大が目的ではないはずです。規模を拡大する過程で、例えば不要なものを除去するとか、2つでやっていたものを1つでやることによって、より機能的で、より質の高い行政ができるというようなことが目的であったはずです。ぜひ規模の拡大にとどまることなく、質の向上ということに力を入れていただきたいと思います。
 その質の向上というのは、1つは例えば先ほど来言っております透明性を徹底する、透明化を徹底するというようなこと、それから物事を決める際に密室で談合しながら決めるのではなくて、オープンな場で合意形成を図っていくという、これも透明性ですけれども、そういうようなことをぜひ心がけていただきたいと思っております。
 もう1つは、合併したときに決して多様性を失わないでいただきたいと思うのです。多様性というのは、例えばそれぞれの旧市町村とか、さらにはさきの昭和30年代の合併の際の旧々市町村というのでしょうか、それ以前の市町村で持っていたような、例えば伝統芸能とか伝統文化とか祭りとか行事とか、いろいろな文化資産もありますけれども、そういうものをぜひ失わないようにしていただきたい。ともすれば、合併をしますと一律の基準ですべての新しい区域に同じような基準でもって物事を律していくということになりがちです。それが有効な面もあるかもしれませんけれども、例えば文化の多様性などになりますと、それは全く邪道といいますか、逆の面になっていくわけです。最近もよく聞きますけれども、去年まであった祭りがなくなったとか、花火大会が消えてしまったとか、校庭の松が切られてしまうとか、そういうことのために合併をしたのだろうかと皆さんは思われると思うのです。校庭の松を切るために合併をしたのかと。これもお役所ではよくあるのです。一律で例外は許さぬと、どこの中学校でもこれはこうだということになるのですけれども、合併をした直後というのは、もう少し多様性とか柔軟性があってもいいのではないかと私などは思うのです。これは市町村が決められることですから、私が文句を言う筋合いのものではありませんけれども。
 というのは、合併をしても、今次の合併は10年間は合併算定がえといいまして、従来の市町村がそのまま残っていたと同じような交付税上の財政措置がなされるわけです。ある程度余裕を持って財政運営ができるような仕組みがとられているわけです。したがって、何事もすべて一律にしなくてもいいような財政措置もあるはずなのです。

 もう1つは、例えば隣の中国などは、これは合併ではありませんけれども、香港が返ってきたときに、一国二制度を何と50年も続けるわけです。それだけ気が長いというか、おおらかな、おおような考え方で、今まで異なった流儀でそれぞれの地域経営をしていたところを1つにするという、それだけの度量といいますか、あるわけです。そういうのをもう少し見習ってもいいのではないか。香港と違って、我が国の合併は10年という一つの目安をつけておりますから、その間に緩やかに統一化していくということもあり得るのではないかと思ったりしておりますけれども、最終的にはこれは市町村で決められることですから、とやかくは言いませんけれども。
 合併について、合併疲れというものがあったのではないかということです。私も同じような印象を持っております。その合併疲れというのは、幾つかのステージがあったと思うのですけれども、1つは、まず合併するかしないかとか、どこと合併するかということで、かなりくたびれたところもあったと思います。
 もう1つは、いざ合併すると言って枠組みが決まった際に、先ほどの一律化、統一化ということにエネルギーを相当使われたのではないか。どうやってルールを同じにするかということ、これにかなりくたびれたところが多いように伺っております。これは必要なことだと思います。全くばらばらで運用するというわけにはいきませんので、やはり統一化しなければいけませんけれど、すぐに統一化できるものと、50年とは言いませんけれども、やはりもう少し、5年とか10年とか、ある程度の期間を経て、緩やかに統合していくというような手法もあったわけで、そういうことを選択されれば、もう少し合併疲れも起こさなくて済んだのではないかと思ったりしますけれども、我が国の特有のお役所の生まじめさが、やはりここでもかなり力を発揮したのかなと思っております。
 先ほども申しましたけれども、流儀の違いを乗り越えなければいけないのですけれども、ぜひ乗り越える過程で、いい種といいますか、いいシーズを失わないようにしていただければと願っているところです。
 単独で頑張られるところ、それを選択されたところは、やはりそれなりにそれは大変なことも多いと思います。財政的にはやはり政府からはいささか冷や飯を食らわされるようなところがないではない。それは相対的な問題でして、合併するところに異常な優遇をしておりますから、相対的に単独のところは冷ややかな対応をされているということに結果的になるのですけれども、それでも単独を選ぶ過程で行財政の見直しをされて、それで自立に向けて努力をされているという、これは非常に大切なことだと思います。今の非常に難しい時代を乗り越えられましたら、自立が可能となる、足腰の強い自治体に多分なっておられるだろうと思っております。

 県がこれから合併したところにどういう助言をするのかということですが、これは私は、県がああせいこうせいということではなくて、それぞれの自治体の住民の皆さんが我が町をどうするのか、我が町の行政がどうなのかということをしっかり監視していくという、これが一番重要だと思っております。合併した後、また県の方でいろいろと悪いところを是正するとか指導してくださいと私もよく言われますけれども、そのときに必ず言います。住民の皆さんがどれだけ行政をチェックして、行政をコントロールするか、これに町の将来がかかっているわけで、本当の意味の分権時代の草の根自治というものが一層活発になるように願っておりますし、そういう意味での助言はこれからもしていきたいと思っております。