平成17年9月定例会代表質問(平成17年9月26日)No.6
<鳥取県の農政について> |
国では、ことしの3月に新たな食料・農業・農村基本計画が策定され、閣議で決定されました。基本的には、農業の国際化や高齢化が進む中で、競争力と生産基盤を維持するために強い担い手をつくろうというものであると理解をしております。 農業にしても漁業にしても林業にしても、最低限の生活はできるという保障があれば、後継者は必ずできると思います。毎年毎年、専門的基礎知識を学んで、たくさんの若者が農業高校や農業大学校を卒業していますが、しかし、そのうち一体何人が大きな夢を持って農業の専従者として歩むのでしょうか。農業高校や農業大学校においては、しっかりとした農業の担い手を育てようと、教える側も一生懸命教え、育て上げられるわけですが、結局は身につけたノウハウを生かすことなく、卒業後は農業以外の道に歩んでいく現実は、生活への不安が大きな要因であると思います。 確かに、畜産や園芸などは担い手に農地を集積し、より効率的な農業を推進することにより、競争に強い農家をつくることは可能であると思います。しかし、鳥取県のように中山間地域が多く、小区画での稲作しかできない地域では、米価が低廉な上、農地を集積しても作業効率が悪く、若い人が夢を持って専業農家に参画できる状況ではないと思います。 向こう5年間の国の基本計画が策定された中、鳥取県では知事の意向で、鳥取県の農業のあり方についての指針がないわけですが、知事としては、どんな形で何を重点にされ、鳥取県の農業を再生あるいは構築をされていかれるのかお尋ねします。 私は、合併後のまちづくりの一つのあり方として、地域コミュニティーの醸成について、知事とも議論をしてきたところです。鳥取県の農業のあり方として、個々の農業客体の努力で、規模拡大とか経営の合理化等の推進によって、元気な農家として育成できる畜産や園芸、果樹などの部門では、認定農業者を中心に農地の集積化を促進し、元気な農家を育てていただければよいと思っております。 ただ、兼業農家が大半で小規模経営の多い稲作については、幾ら規模拡大や農地の集積をしても、大きな課題があると思うのです。それは、水田に不可欠な用水路の維持管理です。長いところでは農業用水路が何キロメートルにも及び、個々の農家の力では極めて手間のかかる大きな問題です。 そこで、私の提案ですが、鳥取県においては、地域コミュニティーづくりの1つとして、担い手の主体は集落営農と位置づけ、国が言わんとする法人化にこだわることなく、集落内のリーダーの育成と集落営農の育成支援に施策の重点を置かれたらいかがなものかと考えます。 農村では高齢化が年々進み、耕作放棄地もふえる一方です。それぞれの集落において農業組織を立ち上げ、リーダーを中心に農業機械の共有化、農作業の共同化等を進めることにより、隣近所同士が同じような農業機械を持たなくてもよいし、人手が多くかかる農業用水路の維持管理も負担が軽減化されることにより、大幅なコストダウンと労働力の省力化が図れるものと思いますが、あわせて御所見をお伺いします。 |
●知事答弁 |
農政ですが、伊藤議員がおっしゃったように、私が知事になってから、基本計画といいますか、当時は農業農村活性化構想と言っていましたが、そういう統一した指針のようなものをつくらないということにしております。そこで今後、どうやって鳥取県の農政を考えていくのかということですが、私は農業農村活性化構想をつくるのをやめました。それは、基本的には農業も産業ですから、産業についてお役所が絵をかいて、指針や計画を書いて、5年後にこうしよう、ああしようということは、経験上うまくいかないという確信を私は持っております。そういうことを大々的に国を挙げてやったのがソ連で、これは崩壊しました。そこまで大々的でなくても、しかし同じようなことを実は日本の農政もやっていたわけで、国主導で全国一律に方針に基づいてやっていたわけで、日本は滅んでおりませんけれども、しかし農業はかなり弱体化したということは否めないと思います。自立度が低くなったということは、もうこれはどなたも認められることだと思います。やはり、産業を活発にしようと思うと、役所が号令をかける、右向け、右というようなやり方ではだめだと私は確信しております。 農業も企業ですから、生産する側、生産者の皆さんは、やはり何をつくれば売れるのかという、この一番の基本のところをよくにらみながら生産をしていく、自己責任でということ、いわば現代版の独立自営農民、独立自営農家といいますか、そういう農家をふやしていくということがこれからの農政の一番大切なことだろうと思っております。政府の方針どおりに耕作をする、そういう農家ではなく、みずからの考えで、みずから市場をにらみながら農業をやっていくという農家が増えていくということが理想だろうと思います。もちろん、これまで長い農政をやってきて、一挙に理想的な姿に変わると思いませんから、今は過渡期だろうと思います。過渡期であることをよく承知しながら、一歩ずつ理想に近づけるような、それが当面の農政の課題ではないかと思っております。 ということで、当面の農政の課題について、農林水産部長の方から補足を申し上げたいと思います。 これからの農業は集落営農ということに着目して、トップリーダーを育成していくということが重要ではないかというのは、当面の農政を考えたらそうだと思います。私も異論はさしてございません。当面はそういうことだろうと思います。 ただ、根本的には少し違った見解も持っております。それは何かといいますと、農業を活性化しようと思ったら、やはり農業にももっともっと新規参入がなければいけないと思います。新規参入というのは、資本もそうですし、人材もそうです。今までの我が国の農政というのは、限られた地域の限られた人材の中でどうやって活性化していくか、その中で人材を、リーダーを行政がどうやって育成していくかという、そういうことをやっていたわけで、いわばクローズドシステムなわけです。これだとなかなか活性化しないと思います。やはり新しい人材、新しい資本が、新しい経営手法とともに1つの産業に入ってくる、これがその産業が活性化する原動力になるというのが一般論だと思います。 話は飛躍しますけれども、今回の総選挙で自由民主党が非常に活気が出ましたけれども、これも従来の地盤、看板、かばんという、選挙の三つ道具、3つの要素の中で、どうしても二世の人が多いという、一種のクローズドシステムであったわけですけれども、そこに刺客と言われるような、一切地盤も看板もかばんもない人が闖入したり参入したりして、それが自民党だけではなくて政治の世界全体を活性化したということはあるのだと思いますけれども、私は同じようなことが農業にもあるのではないかと思います。 最近少しずつ変わってきておりますのは喜ばしいことだと思います。先般も議論しましたけれども、土木建設業の中に新しく農業の方に転身しようという人たちが出てきたというのは、私は大変注目に値することだと思っているのです。それは、土木建設業でなかなか苦しい経営を強いられているので転身することがいいという、そういう面もありますけれども、もう1つは、農業から見た場合に、新しい資本とか人材が参入してくるのは活性化の一つの原動力になるのではないかと思ったりもしています。 ただ、私が申したのは、これも理想論ですので、当面、トップリーダーをどうやって育成するかなどにつきましては、農林水産部長の方から補足答弁を申し上げます。 県内でいろいろな活性プランというものをつくっておりますけれども、これがこれからの農政の1つの柱になるのではないかというのは、そのとおりです。これも全く同感です。数年前からプラン構想というのをやっているわけで、例えば一番最初に実施されたのが福部村、今の鳥取市福部町のらっきょう生産組合の皆さん方で、ラッキョウ販売額10億円構想というので、本当にできるのかなと思ったら、3年間でできましたけれども、これを皮切りに県内各地で幾つかのプランが出てきております。 先般も琴浦町のブロッコリーの生産関係者の皆さんからお話を直接伺ったのですけれども、この方々も含めて、プランをつくって、うまく軌道に乗せようとしている方々というのは、ある種の特徴があります。やはりみずから創意工夫をしているという気風が感じられます。それから、農業に対する意欲と自信というものもみなぎっています。私は、これが農業という一つの産業をこれから活性化するには一番大切な要素ではないかと思うのです。それはどこに原因があるかというと、従来のように、お役所に言われて、来年はあれをつくろう、これを減反しようという、そういう枠組みの中でやっているのではなくて、自分で考えて、ここにこういう産地を形成しようという、ベクトルが全く逆になっていることが大きな要因ではないかと思っております。こういう意欲と自信を持つ生産者グループ、組織というものがこれからもっともっと出ればと願っているところです。 これにつきましても、補足と詳細を農林水産部長の方から若干答弁したいと思います。 |
●河原農林水産部長答弁 |
先ほど知事答弁にもありましたように、農業も産業の一つである以上、農業者が主体的に取り組むことが大切であるとの基本的な考え方に立ち、現在県では、農業者等がみずから作成したプランに基づいて実施する意欲的な取り組みに対して、重点的に支援をしているところです。もちろん、プラン策定に当たりましても、普及所を中心にお手伝いさせていただいているところです。 次に、集落営農の育成支援についてです。 お話にもあったように、集落営農は大規模農家や法人といった担い手の確保が難しい地域においては、水田農業を維持するための効果的な取り組みと考えております。集落営農の組織化は、あくまで地域のやる気と合意が大前提ですが、実際にはなかなか進んでいないというのが現状です。 |
<鳥取県の農政について>No.2 |
農業用水路の改修ですけれども、これまで農業用水路、単県でも補助しながらやってきたのですけれども、現実、県内各地、まだ井手の改修事業というものは過去にあったのですけれども、その事業を御理解しておられずに、まだまだそういう素掘りの井手が残っておるようです。 やはり、私のところも以前そうでしたけれども、素掘りの井手でした。しかし、U字溝で改修した後は管理が3分の1程度に減った、それと、大雨が降っても災害が少なくなってきたという部分で、管理が随分楽になってきたということがあります。特に中山間地においては、山腹等が走っておりまして、その管理は極めて大変な状況であります。そういう災害の温床にもなっております中山間地域の素掘りの農業用水路をもう一度きちんと改修することによって、逆に言いますと、災害等が起きた場合、投資的経費が逆に高くつきますので、もう一度単県の井手の改修事業というのを時限立法的にも復活されないかということを要望しながら、また御意見を聞きたいと思います。 |
●河原農林水産部長答弁 |
地元負担を軽減した井手改修の単県事業を復活する考えはないかということです。 平成8年度から平成12年度にかけて、中山間地対策の一環として、改修費が平地に比べ相当割高になる山腹水路を対象に、5年間限定の特段の措置として、地元負担を大幅に軽減した事業を実施しております。事業名はジゲの井手保全事業と称しまして、補助率が県が60%で市町村の義務負担30%、地元負担が10%という枠組みで実施をしております。その当時、通常の単県かんがい排水事業の県費補助は35%でした。市町村が20%、地元負担が45%ということで、地元の負担を45から10に軽減した事業で、これを時限的にやったということです。その後、要望もありまして、経過措置として、事業期間を2年間延長して、14年度まで実施しております。全部で52地区、12キロメートルを実施しております。 |