平成14年9月定例会代表質問(平成14年9月26日)No.3

<財政問題について>

 右肩上がりの経済成長の中で、どの市町村とも現実離れした総合計画の中で、視覚的に華やかな事業が競うように実施されてきました。例えば人口が全く見込めない中であっても、あたかも将来は人口がふえるかのようなシミュレーションを描き、現実の自治体規模に不釣り合いな建物を建てたり、補助事業だからといって住民の皆さんが利用勝手の悪い施設をつくったり、利用頻度の少ない道路をつくったりしてきました。つまり、公共事業の実施状況が市町村長の政治手腕を評価する手段として活用されてきた部分が多分にあったと思います。したがって、その時々にある補助事業を中心としながら、財政状況を踏まえて優先順位もつけることなく、また利用者の声も聞くことなく、現実と乖離した計画、理論構築の中で起債、つまり借金を重ねながら進めてまいりました。
 その結果、国と地方合わせてその借金の額は 700兆円にも上ると言われ、まさに天文学的な数字となってしまいました。この膨大な借金は、借金をつくってきた私たちみずからが到底返せる金額ではなく、私たちの子供や孫たちに贈らざるを得ないものとなってしまいました。このことは、社会資本の先行投資という論者もありますが、次の世代の子供たちにとっては、親の借金のために、その時々に必要な社会資本整備ができないというありがた迷惑を話でもあります。一つの時代を預かる責任的立場にある片山知事としては、こうしたたくさんの借金について、次世代を生きる子供たちに何と説明責任を果たされるのでありましょうか、知事の御所見をお伺いします。
 
●知事答弁
 負の遺産ということを伊藤議員が強調されまして、幾つかの論点を提起されたわけであります。
 最初に、国、地方を合わせて 700兆円になんなんとする借金を後世に残すということでありまして、本当に次世代の皆さんからすれば、伊藤議員が言われたようにありがた迷惑な贈り物でしかないわけでありますが、現実にこうなってしまった以上、これをどうするかということを具体的に考えなければいけないと思います。 
 地方自治体の借金、これは鳥取県も御多分に漏れず 5,000億を超える借金を抱えているわけでありますけれども、また県内の市町村も多額の借金を抱えております。どうやってこんなに借金が積み重なってきたのかということは、いろんな事情がありますが、一番大きいのは、やはり国と地方との財政関係がゆがんでいたからだろうと思うのです。それはどういうことかといいますと、国は数次にわたって毎年のようにいわゆる景気対策を実施してきましたけれども、本来マクロ経済の管理は中央政府の仕事であるにもかかわらず、我が国の場合には、従来から地方団体も動員しながらやってきているわけであります。その際に、国の行うべきマクロ経済の管理であるにもかかわらず地方団体を動員するものですから、そこに国、地方の財政の不正常な関係ができてしまいまして、とりあえず地方団体は借金で事業を実施しておきなさい、それの償還は国が交付税という形でちゃんと面倒見ますと、こういう枠組みをつくってやってきたわけでありますけれども、しかし、結局は交付税というのは将来の交付税を先食いする形で当面地方債で事業をやるわけでありまして、この辺のからくりが最近結果として破綻に向かっているということが暴露されてしまったわけで、最初から冷静によく考えれば、こんなことはわかっていることなのでありますけれども、だれも結末を見ないで交付税の先食いをするような制度をつくってしまった、ここに一番の罪があると思います。
 もちろん、その先食いの制度に乗っかってぱくぱくと先食いした地方団体も悪いのでありますけれども、しかし、自分だけが志を高くして、ある1つの地方団体だけが志を高くして、先食いなんかしない、乗らないという立派な政策をとった場合には、結果として損になるわけであります。みんなが先に食うのに自分だけ食わなかったら損になるわけでありまして、そういうまじめな人が損をするような制度をつくったのが一番悪いと私は思います。ですから、今なすべきことは、今までやってきたような交付税の先食いをする、せざるを得ないような、競って先食いをするようなそういうモラルハザードを生む制度をやめるべきだと私は主張しているのであります。
 政府もそういうことに少しずつ変わりつつありますが、まだ変わっていません。例えば合併をしなさい、合併をすると合併特例債という恩典が与えられて、これでハード事業がいっぱいできますよと、こういう馬の前にニンジンをぶらさげるようなことを合併問題でも提起しているわけでありまして、やっぱり反省が身についていないと思うのであります。
 ともあれ、こういう景気対策とか中央政府の政策に乗っかってどんどんと借金を積み重ねてきたという愚は、これからは繰り返さない方がいいと思います。鳥取県では、私が就任しましてから、いろんな物議を醸して、過去からの経緯にかんがみますと大変失礼なことでもあったのでありますけれども、いろんな箱物を中止したり、凍結したり、大幅縮小したりしたのは、以上私が申し上げたような考え方に基づくものでありますが、結果としては、当時いろんな議論はあったにせよ、今にして思えばいろんな見直しをしていてよかったと考えているところであります。これからも、私も議会の皆さんの協力も得て、むだな借金を新たに積み重ねないようなそういう財政運営をやっていきたいと考えております。
 
<財政問題について>No.2

 鳥取県における平成14年度の当初予算は、県税収入や地方交付税の落ち込みの中で、4年ぶりのマイナス予算が編成されました。このことは、借金である県債残高が年々増加する中で、借金返済のための公債費は増加の一途で、平成13年度末に 700億円あった基金が、平成17年度末にはほとんどなくなってしまうといことが予想されております。長引く景気低迷の中で、どこの自治体も税収の落ち込みが厳しく、鳥取県もその例外ではなく、現実的に税収が上向く材料が極めて乏しい状況であると思っております。引き続き知事として県政を担当されることを想定するとして、今後も単年度赤字が続く財政運営の中、基金が底をつく平成17年度以降の財政運営について、知事の御所見と不足する財源を何に求められるのか、その手法を考えておられましたらお伺いします。 

●知事答弁
 平成17年度以降の財政運営はどうかということでありますが、これは一定の前提を置いて、財政の将来見通し、推計というものをやったわけであります。それによりますと、今ある基金というものは早晩なくなってしまうということになるのでありますが、一番厳しいのは平成15年度から17年度までであります。これは、過去の借金の返済が、そこにある意味では一つの山が来るということであります。現在のやり方をやっておりますと、その山を乗り越えればだんだんと楽になってくるという、こういう一筋の光明も持っております。
 もちろん財政推計によりますと、その山を越えても、山を越える時点で基金が底をついてしまうということになっておりますけれども、これは一つの推計を置いて、その推計どおりに財政を運営していけばこうなるよということでありまして、こうならないようにするのが政治の知恵と力だろうと思うのです。ですから、基金が決してすっからかんになって底をつくことのないように、要らないものを削り、しかし、要るものはもちろんやらなければいけませんけれども、できる限り要らないものはやらないということで、推計どおりにならないように、議会と私どもとでお互い協力しながら財政を運営していきたいと思います。

<財政問題について>No.3

 現在、国の財政構造改革の一環としまして、国から地方への補助金削減、税源移譲、地方交付税の簡素化を三位一体として見直しが進められております。極端な話をするならば、税源移譲はされるけれども地方財源不足を補うための地方交付税が大幅に縮小される可能性もあるわけであります。知事として、この三位一体として進められている国の財政構造改革に対しまして思うところがあれば、御所見をお伺いしたいと思います。
●知事答弁
 国が今進めようとしております財政構造改革の一環として、国と地方との財政関係についても見直そうという動きになっております。その際に、地方の側からは一般財源をふやすように、そのためには補助金を減らして交付税という形の一般財源に変える、いわゆる税源移譲、財源移譲という問題が提起されるわけでありますが、国の財政当局の方はそういうことには余り関心がなくて、とにかく歳出を減らしたい。したがって、補助金も若干減らしたいのでありましょうが、交付税自体を減らしたい。税源は移譲したくない。移譲だったら国債の発行している部分を移譲してあげましょうというわけのわからないことを言ったりするわけであります。そんな中で、それでは補助金も税源も交付税も、3つ一緒に見直そうというのが三位一体の見直しということであります。
 それ自体は間違っていないと私は思います。やはり国と地方との財政関係は、1つだけをいじるのではなくて、これは相互に関連がありますから、総体的にすべてを総合的に見直すということは必要だろうと思っております。ただ、どうしても財政当局の物の考え方というのが重要な要素になるのでありますが、国の財政当局は決して地方のため、すなわち地方分権を推進するためとか、地方財政の自主性を確立するために財政改革をやろうというような気持ちはみじんもありません。専ら自分のところの国の予算編成のつじつまが合うように、何とか持ち出しを減らしたい、当面の目先の持ち出しを減らしたいというところに財政当局の重点は移るのであります。その辺が我々の目指します地方財政の改革とはかなり違った話として出てくるわけであります。
 例えば、私、何回も申し上げておりますように、今の地方財政というのは本当に何年にもわたってハード事業中心の景気対策につき合ってまいりましたので、その結果として交付税特別会計にも借金がたまっておりますし、それぞれの自治体にも膨大な借金がたまっているわけで、この構造を改革するということが一番の重要なことだと思うのであります。ハードもソフトもイーブンにして、本当に必要なものに従って優先順位をつけて事業をやっていくという構造に変えなければいけない。
 ところが、さっき言いました国の財政当局は、目先当面の金目を何とかひねり出そうとするものですから、例えば地方財政、特に交付税制度などの中で、ハード事業を抑制して将来的に財政構造を改革しようということには、国の方は実は余り関心がないのであります。といいますのは、地方債を少し減らしても、当面現ナマが出てきませんので、地方財政全体がスリムになったとしても、現ナマが出てこないから余り関心を持たない。そうすると、どうしても長い目で見た構造的な改革に関心が向かなくなってしまう。こんな点が私は大分気になっているのであります。目先の来年、再来年の予算編成のことだけではなくて、やはり5年後、10年後の地方財政の姿をにらみながら、今から健全化に向けて制度を改革していく、まさに構造的に改革していということが必要だろうと思っております。
<財政問題について>No.4
 次に、交付税特別会計のことでありますけれども、現在、予算が20兆円弱でありますけれども、これを維持するために借入金総額が46兆円に上っております。平成13年度から15年度まで3カ年の限定ではありますけれども、この財源不足を補うために、交付税の一部を臨時財政対策債、つまり赤字地方債で今急場をしのいでおります。結局は借金の先送りということで、私ども大変懸念をいたしております。今後は、さらに市町村合併で合併特例債、結局は交付税特別会計から対応しなければならないと思うわけでありますけれども、本当に今の形でいきますと空手形になってしまうのではないかと懸念をいたします。知事として、この交付税特別会計の将来をどう分析しておられるのか、知事の御所見をお伺いしたいと思います。
●知事答弁
 その交付税会計でありますが、交付税会計がこんなに借金を積み重ねたというのは、いろんな理由があるのでありますけれども、1つは、やはりバブルのころに長期的な視点を見失ったということが指摘されると思います。といいますのは、バブルのときは税収も非常に好調でありまして、ちょうど昭和63年とか平成元年のころは税収が非常にふえたわけであります。したがって、交付税もふえたわけです。この交付税を何とか使わなければいけないというような発想になってしまいまして、それで、そのころ財政を拡大してしまったということがあります。
 しかも、その拡大する過程で、入ってきた現ナマだけ使えばよかったのでありますが、あえて借金をして、後で交付税で返しますということをバブルの絶頂期にやったものですから、マクロ経済から見ても、景気が加熱しているときにさらに借金をして財政支出をするという、財政のルールからいうと反対のことをやってしまった。しかも、税収が一番多くて、一番余裕のあるときに借金を重ねて、財政のパイを拡大してしまった。それがだんだん税収が落ちてきたときに、なかなかもとに戻しにくいという、こんなことが一番の原因だろうと思います。そのツケが今回ってきております。
 その後もずっと景気対策で、交付税の先食いという形で財政支出をやってきたわけでありまして、そのころは、後で交付税でちゃんと返すから、今借金してやっておきなさいということを言われていたのでありますけれども、今になってみれば本当に空手形になりかねないわけであります。今はどう言っているかというと、もう交付税が足らないから合併しなければいけませんよという話になってしまったわけで、だれがこんな交付税の状況、地方財政の状況にしたのですかと、ついつい反論したくなるのもむべなるかなということであります。したがって、今後は過去の失敗を繰り返してはいけませんので、合併特例債なども本当は慎重でなければいけないのに、まだ国は続けようとしている。この点私は大変不満であります。また第2の空手形のようになるのではないかという懸念を持っているところであります。
 これが私の分析で、分析したからどう変わるものでもないのでありますけれども、こういう認識を持って、できる限り悪い方向に行かないように、みんなで気をつけなければいけないということだろうと思います。