平成14年9月定例会代表質問(平成14年9月26日)No.7
<三徳山の世界遺産登録について> |
三徳山の魅力を後世に引き継ごうと、今、地元の三朝町を中心に世界遺産登録に向けた各種の運動が展開されています。国宝の投入堂など建築物や仏像の文化的価値は非常に高いわけでありますが、世界遺産に登録するためには、さらに周辺の自然との融合状況を調査し、文化と自然との複合遺産として運動を展開する必要があります。県としても三徳山の世界遺産登録に向け、もっと積極的に支援すべきであると考えますが、知事の御所見をお伺いします。 |
●知事答弁 |
三徳山の世界遺産登録に向けての動きでありますが、三徳山は本来非常に歴史性と魅力を持っているわけで、これを何とか広めなければいけないとかねがね思っておりまして、まずやりましたのが、切手の絵柄に選んでもらったわけであります。これは郵政省といいますか、今の総務省に本当によく協力をしていただきました。その間、発売に合わせまして1つのイベントをやりまして、県と町とで一緒になって投入堂まで登山をしようということをやったのでありますが、そのころからマスコミでも非常に注目されるようになりまして、訪れる観光客の方も多くなった。登られる方も多くなったということがあって、私も大変喜んでおります。ぜひこの動きをこれからも発展させるように、発展につながるようにしていきたいと思います。 三朝町だけに世界遺産登録に向けての活動をしていただきたいとは毛頭思っておりません。県も当然一緒になってやらなければいけないと思っております。差し当たって例えば登録のために必要な事前準備としての調査なども、協力しながら一緒にやっていきましょうということにしたいと思っております。 登録が成功したら価値があって、成功しなかったら価値がないというものではありませんので、登録の有無にかかわらず、三徳山の持つ魅力、価値というものをこれからも大いに広めていきたいと思っております。差し当たって2006年だったでしょうか、開山1300年祭が開かれますので、それに向けてのPR、必要な施策を行うということも考えなければいけないと思います。 |
<鳥取発ODAについて> |
これまで国が単独で行っていた途上国への政府開発援助、ODAが、何かとむだが多いという国民の厳しい批判の中で見直され、来年度から都道府県などの地方自治体が途上国に行う国際協力事業を全面的に支援すると言われております。我が鳥取県も、これまで友好交流を続けているモンゴルのウランバートル周辺の村に井戸を掘り、大変喜ばれてきました。また、近年は中国の砂漠化防止のために緑の協力隊を編成し、河北省等で緑化の植林を進めております。地道ではありますが、これまで鳥取県が行ってきたこうした活動は、モンゴルにおいても中国においても大変喜ばれております。今後も国際交流の一環として継続すべき大変意義ある事業と思いますが、そこで、鳥取県としても、モンゴルでの井戸掘りや中国での植樹を鳥取県発ODAとして、国の補助を受けて継続すべきであると思いますが、知事の御所見をお伺いします。 |
●知事答弁 |
ODAの件でありますが、ODAはやはり基本的には国の仕事だと思います。例えば鳥取県で何かODA、海外に対して援助するということになった場合に、これだけ財政難であって、しかも県内の課題がメジロ押しのときに、外国に何でそんな大金を使うのですかという疑問が当然県民の皆さんから出てきます。割り切れない感情が出てきます。そこで合意形成をするということ、これはなかなか難しい面もありますし、時間もかかるのではないかと思います。 ただ、国がある程度、かなりの財源をちゃんと手当てをして、それに県が協力してくださいということ、これは大いにあっていいと思うのです。県は国にはないような人材がいたり技術を持ったりしておりますので、そういう面をODAの一環として、県も人材派遣をするとか技術援助をするとかそういうことはあっていいと思うのです。そういう点でありますと、多分大方の県民の皆さんの合意、理解が得られるのだろうと思います。しかも、そういう職員を派遣するということになりますと、ある意味では職員自身の研修ということにもつながるのだろうと思います。そういう前提で、モンゴルの問題も含めて可能な限り鳥取県としても国際貢献をしていくということは、私も大賛成であります。 |
<公文書館法について> |
昨年の秋に、「キューバの危機、戦慄の記録」という過去の歴史を発見するテレビ番組がありました。1962年10月、旧ソビエトがアメリカの目と鼻の先にあるキューバに核ミサイルを配備したため、以来、米ソが対立し、今にも全面的な核戦争に突入しかねない、一触即発の危機的な歴史的経過を明かす内容でありました。約40年近く経過した中で詳しく歴史的経過が解明されたのは、当時のアメリカの膨大な記録文書がきちんと保存されていたためでありました。 我が国には、昭和63年6月に施行された公文書館法という法律があり、その第3条に「国及び地方公共団体は、歴史資料として重要な公文書等の保存及び利用に関し、適切な措置を講ずる責務を有する」と規定されています。しかし、残念なことに、我が国においては昭和63年に公文書館法という法律ができるまでは、一部の歴史家、一部の資料収集家のところしか歴史的な資料が残っていないのが現状であります。したがって、その時点では歴史的な価値観がなくても、後世においては大きな歴史的な価値のある出来事であっても、資料が少ないため、歴史的な事実を解明できないことがたくさんあります。明治維新後、我が国はさまざまな面で近代的な諸制度を導入してきましたが、残念なことに、文書保存の制度が導入されなかったことに原因があると思います。しかし、諸外国においては、博物館、図書館、文書館は三位一体の文化施設として位置づけられ、多くの貴重な資料が残されてきました。 県内の市町村の現状を見てみますと、それぞれの市町村で制定されている公文書保存規定に基づき、保存期限が過ぎたものは次々と処分されているのが実態であります。しかしながら、市町村によっては後世においても歴史的な価値を発揮する貴重な文書が随分眠っているものと思います。行政文書はだれのものかといいますと、原理的には主権者である住民のものであります。公文書に対する知事の見解並びに現在の市町村の現状について御所見をお伺いいたします。 |
●知事答弁 |
公文書の問題でありますが、伊藤議員は公文書の価値をもっと認めて重視すべきではないかという御趣旨だろうと思うのでありますが、これも私は大賛成であります。同じ認識を持っております。おくればせながら政府も法律をつくったわけでありますけれども、なかなかまだ全国的に公文書に対する意識が深まったということではないように思います。県も公文書館を設けて必要最小限のことはやっておりますが、まだまだ不十分だと思います。市町村の現状は、これも濃淡があるのでありましょうが、おぼつかないところが多いのではないかと推測をしております、大変失礼ながら。 地震がありましたときに、溝口町の役場がもう使えない、傾いたということで、取り壊す前に私も視察に行ったのでありますが、そのときに引っ越しをしなければいけませんので、大あわてで必要な荷物を取り出しておられましたけれども、その際に要らないものは廊下とか床にほうり捨ててありました。その中でみんなが足で踏んでいるのを見て私びっくりしたのは、明治の初めのころの地租台帳があったのであります。それは倉庫の奥の方から出てきたもののようでありまして、これを一体どうしたのですかと言ったら、もう要らないから置いていくのですということであって、これは大変だというので、すぐに県の関係の職員に指示をしまして回収をさせていただきまして、県の方で保管することにしましたけれども、やはりそれも1つの今の実態だろうと思います。 そんなことがあってはいけないわけでありまして、いい機会でありますから、この際、県自身の公文書の管理の体制も点検をしてみたいと思いますし、市町村の実態についても調査をして、必要なお願いもこれからしていきたいと思います。 なお、従来、県もそうなのですが、スペースの問題がありまして、公文書をどんどんどんどんとっていくと際限がなくなりますので、スペース上の限界があります。ですけれども、最近は非常にツールの発達がありまして、記憶容量の巨大な媒体も出てきましたので、スペースの問題というのはそういう新しいツールを利用すればかなり解消できるのではないかということもありますので、そんな点も含めて、これからの県内の公文書管理のあり方を点検してみたいと思います。 |
<公文書館法について>No.2 |
昭和の大合併の際には、明治から昭和の初期までの貴重な資料が大量に廃棄処分された経過があります。今、我が国においても市町村合併という行政的にも1つの大きな歴史的な時代の変革期を迎えております。市町村合併や庁舎移転を契機に貴重な資料が行政内部内の判断のみで処理されないよう、県下の市町村に公文書館法の趣旨の徹底、そういうことをされるのが大変重要であると考えますけれども、このことについて知事の御所見をお伺いしたいと思います。 |
●知事答弁 |
伊藤議員のお考えに私も同感であります。公文書館法の趣旨は必ずしも徹底していないと思います。県でもそうであります。市町村のみならず、県も含めて公文書館法の趣旨をよく認識をして、必要な措置が講じられるように努力したいと思います。 恐らくは、公文書の取り扱いの問題というのは、住民の皆さんの日々の生活に余り関係がありませんので、住民の皆さんの中からこういう問題が役場に対して提起されるということはまずないのだろうと思います。したがいまして、こういう問題については県の方から注意喚起をする、必要な施策についてアドバイスをする、こういうことも必要だろうと思いますので、取り組んでいきたいと思います。 |