平成14年2月定例会一般質問(平成14年3月14日)No.2

30人学級について
 2月13日の記者会見の席上で、職員給与5%カットと同じように、突然県内の小学校の1〜2年生を30人学級にすると発表されたときは、多くの教育関係者を初め県民の皆さんは、さすが人づくり、教育に見識のある知事だともろ手を挙げて喜び、どこかの報道機関風に言いますと、片山知事の支持率は急激に上がったと私は思いました。しかしながら、後で市町村の持ち出しが教師1人につき200万円必要という教育委員会の文書を見て、市町村は唖然とするとともに、片山知事の支持率もすぐにもとに戻ったのではないかと思います。
 教育に重点を置くかどうかは市町村の姿勢、財源を県職員の賃金カットで賄うので市町村も協力があってもしかるべきと記者会見席上での片山知事。確かに県職員の給与カットで実施される鳥取県版雇用のためのニューディール政策の一つであり、しかも、国の基準を上回る教育施策でありますから、地方分権の時代に入った今、市町村にもしかるべき負担があってもよいと発言されました片山知事には、私も違和感はありません。しかし、知事の発言は各市町村の予算編成が終わった中での唐突な話であり、具体的な内容は県教育委員会から2月22日の金曜日付で発送された照会文書で詳細が明らかにされ、しかも、土・日の休みを挟んだ25日の月曜日が回答締め切りの文書でありました。文書を受け取った市町村教育委員会は、学級を2つにすることによる教室の確保や給食の問題など、検討を加えなければならない問題も数々あり、間髪を入れずに回答を求められて、時間もなく大変であっただろうと思います。
 知事は全員協議会の中で、教育に重点を置くという気持ちがあれば200万円くらいは捻出できない金額ではないと言われましたが、以前にも申し上げたとおり、町村の教育委員会は財政権もなく、1万円の余裕がないのも現実であります。子供たちのためとはいえ、200万円の判断を教育委員会独自で到底できるものではありません。幾らすばらしい施策、政策であっても、生かされなければ意味がありません。もっと事前に、なぜ30人学級なのか、なぜ1〜2年生な
のか、なぜ200万円なのか、なぜ今取り入れなければならないのか、もう少し懇切丁寧な説明を記者会見の場でされるとか、時間的余裕を持って教育の現場を預かる市町村教育委員会と意思の疎通を図られてもよかったと思いますが、片山知事の御所見をお伺いいたします。
私は以前にも申し上げたことがありますが、確かに混迷を極めている時代ですから、思い切ったシステム改革、制度改革を行うためには、トップダウン方式の強いリーダーシップの必要性が問われておりますが、あわせてフォローアップをきちんと同時進行で行わないと、ただのカリスマ性の強い知事としか理解されない危険性があることを極めて心配しているところであります。
 このたびはいろいろな問題の中で説明する時間がなかったかもしれませんが、トップダウンであればあるほど、逆に受け手側の皆さんの立場に立った懇切丁寧な説明といいますか、フォローアップが重要ではないでしょうか。多分片山知事の政治手法からいたしますと、今後も引き続き、あらゆる場面でトップダウン方式がとられると思いますが、今後のトップダウン方式のあり
方について、考えるところがあれば御所見をお伺いいたします。
知事答弁

30人学級についてでありますが、伊藤議員がおっしゃいましたように、非常に時間的に綱渡り的に市町村に照会をかけたということは事実であります。その点は、市町村の教育委員会の皆さんにとっては唐突な面があったかもしれないし、戸惑いも多分随分あったと思います。
  それはしかし、実はあえてそうしたわけではなくて、やむにやまれずそうなったという当方の事情もあるのであります。本当はもっと早く市町村に話を持ちかけるつもりでおりました。といいますのは、市町村の方が早目に聞いて、早目に相談をして、対応を決める時間的余裕というものを持っていただくということも当然でありますし、教育委員会の内部の事情として、30人学級をやりますと教員の数をふやさなければいけませんので、採用計画を変えなければいけないわけであります。配置計画も変えなければいけない。そういう事務的な問題もありますので、できる限り早くということを考えておりました。
 ただ、今回の30人学級の財源は、市町村からいただく分は別にいたしまして、県費の方はいわゆる5%カットによって生ずる財源でありますので、どうしても職員組合の皆さんとの合意ということも重要なわけであります。合意に至らないのに、一方でどんどんどんどん教員の採用準備を進めるというのも、これもちょっと、それこそ大きなエチケット違反でもありますし、またリスキーなことでもあります。そういういろんな要素を見ながら、できる限り早くということをやっていたわけでありまして、私といたしましては、できれば2月の中旬にはもう正式に決めて、そして市町村と相談の上、教職員の採用計画も発動したいと思っておったのですが、交渉の方がやはり多少長引きましたし、組合の方のスケジュールもありまして、組合の大会を2月18、19日にセットしているというようなこともありまして、組合としての結論がなかなか出せないというような事情もありまして、あちらを立てればこちらが立たずというようなことがありました。その辺の苦衷はぜひお察しをいただきたいと思うのであります。
 その結果、結果的には市町村の教育委員会の方に若干のしわ寄せが行って、最終的にばたばたっと返答を求めた、選択を迫ったということ、そういう意味では御迷惑をおかけしたと思いますが、こういう事情で、初年度の導入部分に当たっての少しのトラブルだと考えていただければ結構だと思います。
  ただ、私は先ほどお話を伺っていまして、確かに教育委員会は大変だったと思うのでありますが、この種の問題というのは、200万円を捻出できるかどうかを教育委員会だけで思い悩むというのはちょっと違っているのではないかという気がするのです。本当は、直ちに町長に話をして、町長が決断をすべき、判断をすべき問題だと思います。町長がそんな200万円出してまで30人学級をしないでいいと言われればそれでいいし、町長が200万円財政当局からつけてあげるからぜひやろうと言えば、教育委員会はそこでもう気が楽になるわけであります。
 今の伊藤議員の御質問から、ひょっとしたらそういう首長と教育委員会との関係がないのかなという印象を受けたのでありますが、本来、30人学級というのは保護者の間からほうはいとして日常的に起こっていたわけであります。保護者から何の要請もないのに、県が突然言い出したわけではないのであります。ニーズはいっぱい現場にあったわけであります。それならば、自分の町でどうなるのかなということぐらいは、本当は考えておかれたらよかったのではないか。例えば教室があるのかどうかとか、うちは31人だからどうなるのかなとか、そういうことは当然考えておられるのだろうなと私は推測していたのであります。その上でこういう話が持ち込まれたら、町長に即座に相談をされて、町長が責任持って判断される、こういう町長と教育行政機関との関係であってほしいと思っております。
 今回、確かに戸惑いがありまして、教育委員会が思い悩んで、もしその200万円が捻出できないということであれば断っていただいたらよかったのであります。これはあくまでも選択制でありまして、こういう事情でばたばたっと話を持ちかけるわけですから、やりたいけれども条件が整わないという意味で1年間待つ、来年までに物の判断をしようということでも構わなかったわけであります。それから、今々はもう予算が終わっているので予算措置はできないけれども、途中の補正ででも対応するので、とりあえず手を挙げておくという対応でもよかったわけでありまして、急いだ分、それぐらい柔軟な選択制にしたわけでありますから、その辺はみずからの判断で決めていただければよかったと私は思います。
  私は、トップダウンとボトムアップというのは両方必要だと思います。すべてがボトムアップだと、本当に官僚機構、官僚組織になってしまいます。すべてがトップダウンだと、その判断がすべてよければいいですけれども、場合によってはずれた方向に独裁的になってしまうということもあると思います。いずれにしても、政策形成というのはトップダウンとボトムアップの適度のバランスだろうと思いますし、それをさらに第三者がチェックをするということだと思います。そのチェック機関は、第一義的には議会だろうと思います。そういう考えでおります。
  確かに私もトップダウンをいろんな分野でやってきております。最近、市町村との関係で、市町村に力量をつけていただくときに、いろんな意味でジョイント方式をやるということを申し上げましたけれども、そういう場合も、できる限り選択制度にしております。県が強引に一方的に決めて、市町村に請求書を回すということはしていないつもりであります。あくまでも合意と選択、選択と合意の上で市町村の判断を求めているわけであります。
 例えば昨年、住宅再建支援基金という制度を設けました。これも希望する市町村だけ加入していただくということであります。結果的には、すべての市町村が参画をしていただきました。今回、低年齢児の保育士の加配というのも、ニューディール政策の一環で打ち出しているわけでありますけれども、これも市町村の判断によるわけであります。それは市町村の考え方もあるでしょうし、保育士の確保という面でもそれぞれ事情があるでしょうから、保育士を加配されるというのが政策選択としても現実にも可能なところだけ、一緒にやりましょうということにしております。
  JRの高速化について市町村にも負担を求めております。これも事前に、JRの高速化事業をやるやらないということを決める前に、市町村でこういう負担がしていただけるのならば県としても負担をする、その上で協力して民間の皆さんと一緒に事業に進む、もしそれがだめならやめますという意味での選択を事前に伺って合意形成をしているわけであります。
  これからもそういうことは続くと思います。いろいろ制度の改革、改正がありますので、最初のときには本当にどたばたっと決まることもこれからもあると思いますけれども、いずれにしても、選択の時代に入ったということを市町村もよく肝に銘じておいていただきたいと思います。
 もう1つは、やはり市町村にもスピード感というものをこれからも求めることになると思います。

30人学級についてbQ
 30人学級という施策については、鳥取県教育を一歩前進するものであり、大変共感をいたしておりますが、有田教育長に2点ほどお伺いいたします。
 教師1人当たり市町村の負担が定額の200万円となっております。この負担金を協力金、つまり任意の寄附金という形で市町村には通知されておりますが、なぜこの負担金が財政法上余り使用しない協力金なのか、お尋ねをいたします。
 また、県県が収入とするときは寄附金扱いとされるのかも、あわせてお伺いいたします。
  また、このたびの実施概要では、30人を上限とする学級編制と限定されておりますが、現実には31人や32人の学級については、学級を割らずに教師を複数制にして対応することも所期の目的を達成する一つの選択肢ではないかと思います。また、教育も地方分権の時代でもあり、制度を導入するに当たっては、市町村も協力金を負担するということもあり、学級を割るのか、教師を複数制にするのかは、市町村の教育委員会の判断に任されたらいかがと思いますが、有田教育長の御所見をお伺いいたします。

有田教育長答弁

最初に、30人学級実施に伴います市町村からの協力金であります。
 小学校1年生での30人学級の実施は、市町村の意向を大事にしてきております。導入するかどうかは市町村の選択でありまして、その自発的な意思によって協力金を提供してもらうというものであります。決して強制や押しつけをしておりません。
 この実施に伴います協力金という名称でありますけれども、市町村と県とがまさに協力をして30人学級を実施したいという意味で、すなわち分権の精神の一環から協力金という名称にしたものというように受けとめております。
 県への収入でありますけれども、決して寄附金とか負担金ではありませんで、雑収入として取り扱われるというように認識をしております。
 次に、30人学級の弾力的な実施であります。これは議員お話しのとおり、私どもも全くそのように考えております。弾力的に扱われるべきであるというように考えております。したがいまして、学級を2つに分けて、あるいは複数に分けて少人数の学級編制にするのか、あるいは複数教員による指導、いわゆるチームティーチング制度を導入するのか、これらについても市町村の
教育委員会の判断にゆだねております。
 現実に教室が不足しているなどによって、チームティーチング方式を採用したいという市町村あるいは学校も数校ございます。31人であるからこのままで分けないでという自治体もございます。こうしたことも、指導主事の派遣ということで平成13年度から既に実施しておりますが、希望のある新たな10町村も、まさに市町村自治体の意思を尊重して県費2分の1というふうなこともやっておりますので、唐突感はないのではないかというような気持ちは持っております。
 ただ、当初予算でというふうなことは私どもも言っておりませんから、恐らく、今後補正予算での対応ということを検討なさる市町村も多く出てくるのではないかというように認識をしております。