<地方財政について> |
先ほど申し上げたように、今日の地方財政の困窮を招いたのは、政治の責任に大きなものがあると思います。特に小泉政権が誕生する直前の5年間は、景気浮揚対策と称し、公共事業を短期間に発注し、国だけで 150兆円にも上る借金だけを残し、結果的には国・地方とも後世の人々に大きな負の遺産を送ることになりました。短期間にこれだけ多くの負の遺産を残しながら、政権を担当した当時の政治家、政治が責任をとったわけでもないし、国民に対して一言のおわび、断りさえされていないのが現実です。
とりわけ大変なのが、こうした国のおつき合い景気浮揚対策に翻弄された地方自治体。大半の自治体が、国のおつき合いの景気浮揚対策の中で基金を使い果たし、大変厳しい状況に陥ってしまいました。先日も、県下市町村の今年度の当初予算状況が公表されました。どの市町村とも、景気低迷による税収の落ち込みと固定資産税の評価替えによる減により、自主財源が乏しく、基金の取り崩しによって何とかつじつま合わせの予算編成がなされており、その苦労が伺えます。
こうした中、前段で申したとおり、6月18日の経済財政諮問会議において、2006年度までの今後3年間で公共事業を含む補助金を約4兆円程度廃止・縮減する。補助金削減額のうち、国が地方に義務づけている義務的事業に関しては全額、それ以外は8割程度をそれぞれ地方に税源移譲されると発表されました。具体的な内容は今後の検討課題でもあるわけですが、義務的事業以外は8割という税源移譲について、私は強く不安を抱くところですが、知事の御所見をお伺いします。
また、交付税特別会計が先行きならなくなったことから、平成13年度から交付税の一部を穴埋めするため、臨時財政対策債が発行されております。この臨時財政対策債は、交付税特別会計が厳しいため、現ナマで交付税が払えないので、地方団体は独自で借金をしておいてください、元利償還金相当額を全額後年度の交付税でお返ししますからという制度で、平成13年度から15年度までの間、地方交付税法、地方財政法の制度改正として法改正が行われた時限立法です。
平成15年度における臨時財政対策債は 394億円余りで、本来交付税として配分される額の22.9%となっており、この3年間だけで発行額が
700億円を上回っています。 このたび公表された中期財政見通しの中でも、この臨時財政対策債が平成16年度以降も継続されるものとして取り扱われておりますが、時限立法であるはずの臨時財政対策債を、引き続きあえて見込まれた知事の御所見と認識をお伺いします。 |
●知事答弁 |
中期財政見通しの中で、臨時財政対策債を織り込んでいるのはなぜか、時限立法であるにもかかわらずということですが、これは担当部長の総務部長の方から御答弁申し上げます。
三位一体改革が実行されれば、一番意識改革を迫られるのは市町村長を初め議員の皆さんであるということですが、そのとおりなのですが、県ももちろん同様です。ただ、一番本当は意識改革を迫られるのは、住民の皆さんなのです。従来はいろんな県の事業であっても、市町村の事業であっても、国庫補助金がついたからやりますということで、ある程度みんな納得をしていた傾向があります。住民の皆さんから見て、ちょっとこんなの要るのだろうかと思いつつも、補助金がついたからやりますとか、有利な起債がついたからやりますということで、どんどん計画が進んでいったという例はあります。本県でもありました。
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●瀧山総務部長答弁 |
中期財政見通しの中で、平成15年度までの時限立法とされている臨時財政対策債が、なぜ平成16年度以降見込まれているのかということです。
そもそも臨時財政対策債は、本来交付税で措置されるべきものを、一種の赤字地方債という形で賄うものです。法律の制度上、まさに恒久的に設けるものではなくて、当面の措置ということで3年にされたものと承知しております。
幾ら後年度に元利償還金相当が交付税措置されるとはいいましても、地方の借金には変わりありません。発行しないのが当然なのですけれども、現在の日本の景気状況、経済動向を見ますと、交付税の財源となっています法人税ですとか所得税、あるいは酒税等の税の増収が見込めない状況です。そのような現在の状況の中では、当面継続せざるを得ないのではないかということで見込んでいるものです。
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<地方財政について>bQ |
臨時財政対策債でありますけれども、本来地方財政法上では、こうした臨時財政対策債、つまり赤字地方債というのは禁じ手です。このたびの臨時財政対策債も、交付税特会の要するに一時しのぎといいますか、そういうことで3年間の時限立法であると私も理解をしていますが、しかしながら、この3年間で抜本的な交付税の特会の改革がやはり依然となされず、結局目先を変えただけの手法であると私は理解していますし、結果的には将来に借金を先送りするだけの政策でないかと、私は本当に大きな危機感を覚えております。
時限立法であるはずの臨時財政対策債を引き続き継続されるものとして予算化しておられますけれども、再度知事に、このあり方の御所見をお伺いしたいと思っております。
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●知事答弁 |
交付税の問題ですが、臨時財政対策債を今のようにやっていて、この先大丈夫かということですが、私、伊藤議員と全く同じ危惧を持っております。
臨時財政対策債というのは、いわば債務のつけかえのようなものでして、ローンの借りかえのようなものです。本来ならば、かつて何年もの間、景気対策その他で起債を発行して、それで事業をやって、もしくは住民税の減税分をそれで賄って、補って、そして、そのために発行した地方債というのは、後年度償還の時点で元利償還について交付税でかなりの部分を面倒見るということでやってきたわけです。
今、その償還期にかかっているわけです。したがって、約束どおり交付税を上乗せしてくれなければいけないわけです。ところが、今のような景気の低迷で、交付税の原資であります所得税とか法人税とか酒税とか消費税とかそういうものが先細っていますので、伸びておりませんので、結果的に政府は今交付税を上乗せして交付することができなくなりました。
従前は、そういうときに国が借金をして交付税の額を増やして配っていたのです。それが交付税特別会計の借金です。ですから、政府が債務を負うことによって約束を履行してきたわけです。ところが、数年前、2年前からだったでしょうか、政府はやり方を変えて、交付税特別会計という政府の会計で借金をして交付税を増やして配るというやり方をやめて、交付税が足りない分はそれぞれの地方団体で借金をしておきなさいということになったわけです。
我々から見たら改悪です。改悪ですけれども、しようがないのです。そういうやり方が臨時財政対策債なわけです。したがって、政府が約束を履行できなくなった部分を、借金のつなぎ、ローンのつなぎでやっているというものです。したがって、そういうものを当てにしていいのかと言われたら、今の段階では当てにせざるを得ないのです。それを例えば借りないとか、それの世話にならないということになったら、途端に各地方団体の財政はパンクします。やはりローンの借りかえだということを認識しつつも、当面はそれを活用せざるを得ないという状態です。
これをどうやればいいのかということですが、私は、まずやらなければいけないのは、もうこれ以上新たな借金をして事業を起こす、後で交付税で返してあげますというようなそういう仕組みをやめるべきだと思うのです。今の破綻に近い交付税になった原因は、まさしく借金で事業をして、後で交付税で返してあげますというシステムをつくって、それをみんなが活用してきた結果にほかならないのです。ならば、過去のことは過去のこととして、これから一生懸命償還しなければいけませんけれども、この先、またあえて借金を重ねて事業をいろいろやって、交付税で返してあげますよというシステムだけはやめなければいけない。それが一番の問題です。
これからその典型例として出てくるのが、市町村合併特例債です。これがまさしくその手法です。借金をしてどんどん仕事をしておきなさい、後で交付税で返してあげますよということで、これから20兆とも30兆とも言われる事業が全国でどんどんと展開される。空恐ろしいことです。
私は、それをもうやめるべきだという話をしているのです。事業をやりたいところは借金してやってもいいです。やってもいいですけれども、それを交付税で面倒見るというシステムを遮断すべきだと思うのです。自己責任でやるべきだと思うのです。
ところが、これがなかなか賛同が得られない。全国知事会で私この種の発言をしたのですけれども、公の場では私一人でありました。後で終わってからは、片山さん、いいこと言ったとか、賛成だと言う人は何人かおられましたけれども、表では私一人でした。今これが一番の争点です。そういう問題意識でおります。
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