平成17年11月定例会一般質問(平成17年12月9日)No.2
<組織改正について> |
県が来年4月から予定されている県の組織改正では、市町村振興課が廃止される計画になっております。県下の市町村においては、ことしの10月に大栄町と北条町が合併して北栄町が誕生し、地方分権という耳ざわりのよい国策として進められてきた平成の大合併も県下においてもようやく一段落となりました。まさに市町村合併が一段落したこれからが、質と自立を追求した市町村のまちづくりのありようが進められていく時期だと思うのです。組織の見直しに伴って、なぜ合併直後の今、市町村振興課を廃止されようとしているのか、知事の考え方をお伺いします。 |
●知事答弁 |
市町村振興課、組織の問題ですけれども、市町村振興課をこの時期になぜ廃止するのかというお尋ねですが、廃止しようとしているわけではないのです。市町村振興課の機能、いろいろな機能がありますけれども、その機能を純化しようと。そうしますと、残ったもの、純化して残すものの機能というのは今よりも小さく、少なくなりますから、そうすると一課をなすほどのものでもなくなるのではないかということで、機構改革によって室というものに改めたいということです。 では、どんな趣旨かといいますと、今の市町村振興課というのは昔は地方課と言っており、私も地方課長というのを25〜26年前にやっておりましたけれども、当時も今もそんなに変わっていないと思いますが、地方自治の護送船団的な県の一つの拠点です。本来、県と市町村との関係というのは、これは地方分権推進一括法ができてから対等の関係であって、役割はもちろん違いますけれども、上下関係がない。これは国も都道府県も市町村も同じですけれども、対等の立場なのです。パートナーシップの関係です。 ところが、実態を見てみますと、やはり例えていえば親子関係みたいなことになっているのです。指導、その指導に従う、それを通じて護送船団的な運営がなされている。私はやはり一番改めなければいけないなと常日ごろ思っておりましたのは、法律の解釈などをつい市町村は県に伺いを立てる。従来は、県はいわゆる本省と称する中央官庁にお伺いを立てる、その解釈に従うと言う、こういうことをずっとやってきたわけです。分権時代に、法律の解釈を上下関係にもない、従来上級官庁と言われたところにお伺いを立てて、それに縛られるなどということは、そもそもやめなければいけないことなのです。条例もそうですけれども、法律というのは万人が解釈するものです。一たんできれば、それは万人が解釈できるわけです。その解釈の違いというのは、最後はだれが解釈権を持っているかというと、これは司法です。これは立法権者でもないわけです。まして役所でもないわけです。ですから、市町村は市町村でそれぞれ行政に関係する法律ですとか条例ですとか、そういうものは自分で解釈して、自分の立場から法律を援用したり主張したりすればいいわけです。それを日常、県の市町村振興課に聞いて、それで例えば議会に説明するとか、対外的に、住民に対しても県の見解で説明するとかということは、分権時代ではもうあるまじきことだと私は思うのです。 それは、別に悪気があってそういう関係になったわけではなくて、県の方は親切心です。法律に詳しい職員が市町村よりは比較的多いですから、頼まれれば無料法律相談所を常時開設しているということになっているわけです。しかし、その親切があだになって、結果的に、市町村の方では法律解釈能力が醸成されなかった、養成されなかったという、そういう恨みがあるわけです。いい機会ですから、これからはそれぞれ市町村で法律解釈をちゃんと責任を持ってやってくださいと。そのためには、当然人材の養成が必要です。それに努めてくださいということもかねてお願いをしております。直ちにそんな養成はできないと言われる方も多いですけれども、それなら、県の方で研修もやりますし、県の法制室などでオン・ザ・ジョブ・トレーニングとでも言いましょうか、しばらくの期間派遣してもらって、仕事をしながら法制執務などについて熟練してもらうという機会も提供しましょうということです。要するに役割を、一々個別の問題について、県が親身になって市町村にかわって解釈をしてあげるという個別のサービスではなく、それぞれの市町村に拠点をつくるといいますか、核をつくる、そのための人材養成のようなところに県の支援サービスの重点をシフトさせましょうと。そうすることによって自立度も増すでしょうという考え方です。 もちろん市町村振興課の機能が全部なくなるわけではありません。例えば、不本意ながら、起債の許可事務などはまだやっているわけです。私はこんな市町村に対する県の起債の許可事務などはやめたらいいと思っていて、独自に特区の制度を利用して、鳥取県市町村起債無許可特区というのをあえて申請したのですけれども、あっけなくはねられてしまったのです。これからも許可制度ないし、それの後継としての協議制度というのは残りますから、これはしようがありませんので、渋々ですけれども、やらざるを得ません。こういうものですとか、交付税の計算、配分、これは当然やらなければいけませんし、その他、選挙の執行管理ですとか、あと、例えば公務員関係ですとか、その種のどうしてもやらなければいけない統計調査事務がありますので、そんなものは当然やりますけれども、従来のような、無料法律相談のようなことはもうやめようということです。 むしろ、これからは私は市町村自治の振興というのは、従来のような手法、すなわち、県から市町村に対して、さあ、地方自治ですよ、情報公開ですよ、行政改革ですよという、こういうベクトルではなくて、住民の皆さんの方から市町村に対して力を及ぼす、住民の皆さんの方の力で市町村の情報公開を促すとか、行政改革を促すとか、そういう方向の方がいいのではないか。それが本当の草の根自治のベクトルではないかと思っております。ですから、次の機構改革では草の根自治振興とでもいうような機能を強化したいと思っております。それは、例えば住民団体ですとか、NPOなども入るかもしれませんけれども、要するに、市町村、自治体の自治を高めようとする運動などに対して情報を提供するとかアドバイスを差し上げるとか、解決のヒントにつながるような資料を提供するとか、そういうことに力を尽くした方がいいのではないか。今までとは違ったベクトルを目指したいと思っております 60年間、いわば国、県、市町村という、こういう流れ、こういうベクトルの中で自治振興というのはやってきましたけれども、今日のような状態です。それならば、半世紀を過ぎたわけですから、違った逆のベクトルで、我が国の地方自治というものを考えてみるというのも一つのやり方ではないかと考えております。 |
<組織改正について> No.2 |
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●知事答弁 |
県と市町村との関係で、やはり広域行政主体としての県の役割があるのではないかということですが、それは当然です。基本的には、市町村自治の原則で、市町村中心自治の原則ですけれども、市町村は比較的規模の小さいところもありますから、それを広域団体として県が補完をするとかカバーをするということはあるわけです。それは例えばどんなことかと言いますと、義務教育というのは、これは市町村の仕事です。市町村の自治事務です。ですから、市町村が本来全部やるべきですけれども、例えばその中で、教員の採用とか人事、研修とか、そういうことになりますと、市町村単位で全部賄えますかというと、そこは難しい面があるわけです。日吉津村で、小・中学校の教員を全部自前で採用して研修して、ずっと一生その人事をやるかというと、これは無理だろうと思います。そこで今、これは制度的に都道府県が義務教育の教職員の人事を行うということになっているわけで、これなどが一つの典型的な広域事務だろうと思います。あと道路にしても、本来ならば市町村道でいいのかもしれません。ところが、やはり市町村と市町村を貫通する道路がありますから、そういうのは広域的に県が広域団体として設置、管理をしましょうと、これらが広域行政です。 どう考えても、万人が解釈する法律を県が無料法律相談に応じなければいけないというのは広域事務ではないと思います。というのは、住民の皆さんだって法律の解釈に困ることがあるわけです。企業だってあるわけです。どうしているかというと、それは、法律問題は弁護士に頼むわけです。ですけれども、経済的な問題とかでなかなか弁護士に頼めない人もいますから、そこで行政や弁護士会などが時々しつらえて、例外的に無料法律相談機能というものを持っているわけです。例外的でなく、堂々と無料法律相談をやっているのが市町村でして、では、市町村は零細で、本当に経済的にも法律相談を自前でやる、人に頼んだりすることはできない存在なのかというと、私はそんなことはないと思います。市町村は、それは社会の中ではやはりかなり力量のあるしっかりした団体だろうと思いますので、そういうところがいまだに無料の法律相談所がなければ困るというのは、私はやはり自治、分権、自立の時代にはふさわしくないのだろうと思います。率先して、法律解釈ぐらいは自前でその機能を持つというふうになってもらいたいと思っております。 合併した直後だから、もう少しという考えもあるかもしれませんけれども、合併は何のためにしたのかというと、これは自立度を高めるため、鳴り物入りでやったのは分権の受け皿づくりということであったわけで、しかも、合併されたところなどは、人数的にはかなり余裕があるわけです。9町村なども一緒になりますから。ならば、その中でこれからは法令などに詳しい職員を養成しようということは当然あっていいのではないかと思います。 |
<組織改正について>No.3 |
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●知事答弁 |
市町村と県との関係ですが、改革、自立、自立を市町村に促す余り、少し性急なのではないかということですが、市町村の皆さんはそう思っておられるかもしれませんけれども、分権推進法が施行されてから既に5年になるわけです。この間、県は本当に必死で自立に向けて努力をしてきたわけです。自立と向上のため、本当に国、県、市町村というものが対等の実を上げるために、国に対して言うべきことをあえて言い、市町村に対しては従来からの県の流儀というものをやめて、本当に対等になるように努力を重ねてきたわけで、そういうことを実践してきた県の方から見ますと、市町村も自分のことですから、もうちょっとスピード感を持って取り組んでいただきたいと実は思っているのです。 ただ、誤解がないように申し上げておきますけれども、今後、市町村からいろいろな相談があったときに、一切お断りと、その種のことは全部お断りですと、こういうことをするつもりはないのです。やり方を変えようということです。それは、先ほど言いましたように、1つは、市町村の実力がつくように、自立度が増すように、人材の養成ですとか、そういうことは県がこれからも一生懸命やります。それは兄貴分といえば、そういうことになるのでしょう。もう1つは、個別の相談については、これも一切お断りというわけではありません。ただ、従来のように、それを我がことのように職員が引き受けて、それで自分で六法全書を引いたり、判例を調べたりしながら、市町村に回答をお渡しするという、そういうことはもうやるつもりはありません。ただ、困った問題について相談があったときに、例えばその問題だったらどこそこに相談されたらどうですかとか、こういう本を見たら解決の糸口がつかめますよとか、ヒントとか道筋とか、それをお示しするということ、これはぜひやりたいと思っているのです。要するに、質問をしたら答えが全部県から返ってくるというのではなくて、質問をしたら、県から解決のヒントといいますか、解決に導く道筋とかアクセス先とか、そういう情報が得られると、こういう関係に切りかえていけばいいのではないか。それが本当の意味の助言とかアドバイスではないかと思うのです。そうすると、例えばどういうことになるかというと、そういう問題だったら弁護士に相談されたらどうですかというようなことは一つの解決の道筋になりましょうし、それは図書館に行って、こういう本を見たら、自分で勉強されたらどうですかというようなことになるわけで、そういうことをしていく過程で地域図書館、市町村立の図書館というものもレファレンス機能を高めて、充実していくことになるのではないかということです。 |
<組織改正について>No.4 |
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●知事答弁 |
県と市町村との関係ですけれども、先ほど来、私の考え方を申し上げましたけれども、一切関係を断つとか、一切助言をしないとか、そんなことではありませんので、問題解決に向けてヒントを伝えるとか、どこそこにアクセスをしたらどうかとか、こういう資料を調べたらどうかと、こういうことは丁寧にやりたいと思います。 私は、いい機会ですから、市町村の皆さんにぜひよく考えていただきたいのですけれども、世の中で、無料法律相談を受けなければやっていけない存在というのは、我が国では市民向け無料法律相談所を開設されるときに来られている方と市町村なのです。ですから、やはりふがいないと思っていただかなければいけないのです。同じようなことで言いますと、成年後見制度というのが世の中にあります。これは自分でちゃんと判断できない──高齢で痴呆になられたりしますと、これはしようがありませんので。そこで、その方々の権利を守り、そのために成年後見制度という普及啓発も今しているのですけれども、したがって、その方々は自分の判断と自分の責任では金銭消費貸借契約が結べません。借金もできません。ちゃんと成年後見人の同意が要るわけです。実は、自治体も同じ状態に置かれているわけです。今は、貸してくれる人でもない、担保を出してくれもしない、保証人にもなってくれない人のところに行って許可を求めているわけです。今後、同意になります。それがなければ借金ができない。これは県も市町村も同じなのです。だから、全国の自治体がすべて成年後見制度の管理下にあるわけです。こんな状態が分権、自治の時代に何であるのかというのは、私などは本当に腹立たしいのです。貸してくれる人には当然頭を下げに行きます。担保を出してくれる人には頭を下げに行きますけれども、何の責任もとってくれない人に何でそんな一々許可とか同意を求めに行かなければいけないのか。我々はそんなにふがいない、判断能力のない存在なのかと腹立たしいのです。今、実態はそうなのです。 知事会などで私はこのことを言うのですけれども、このことを問題視して言うのは私と長野県と田中康夫さんだけなのです。市町村からは全く声が出てきません。私は市町村はこんなことを怒っていいと思うのに、金を借りるのに何で県知事の許可が要るのかというような声をぜひ全国から上げていただきたいと思っておりますけれども、それとこれとは必ずしも一緒ではありませんけれども。いずれにしても、今の置かれている状況というのは、いろいろふがいない状況があるのです。そういうものを一つ一つ解消していきたいということです。 |