平成18年6月定例会一般質問(平成18年6月27日)No.3

高校教育のあり方について
 過日、ある週刊誌に国立大学に強いベスト150校の記事が掲載されていましたが、何と、そのトップに倉吉東高校がランクづけされていました。
 人によっては、高校の教育論、あり方論など、いろいろな考え方があるわけですが、私も学力や進学率が高ければすべて結果オーライというわけではありませんが、子ども達の秘めたる個性、学力を磨こうという校長を中心とした教師集団のひたむきな日々の努力に、敬意と称賛を素直に贈りたいと思います。
 私も倉吉東高校の保護者として、高校の学校経営を側面から見てまいりましたが、進学校と言われている割には、部活動も盛んな上、韓国の安養高校との交流、学園祭、社会問題をとらえた国際高校生フォーラム、ボランティアの実践など、生徒主体の盛りだくさんの行事、また、何といっても「倉吉東高のかたち」という教育ビジョンが数年前につくられてからは、教師、生徒、保護者がこのビジョンを共有しながら、社会に役立つ人間形成を目指して取り組んでこられたことが、一つの形になったのではないかと思います。
 この議場でいつも話題になるのは、教師の指導力不足や資質の問題など、一部の教師をとらえ、厳しい議論ばかりですが、子ども達の持っている基礎学力を限りなく伸ばし、それぞれの目標が達成できるようにと努力されている教師も、現実にはたくさんおられるという一つのあかしであると思います。この結果について、知事並びに教育長の感想をお尋ねしたいと思います。
 また、来年度から、県立高校普通学科の通学区域が全県一区に拡大されることになりました。すでに実業高校では実施されているわけですが、来年春から県内どこの高校でも受験が可能となったわけです。このことは、受験する中学生にとっては高校の選択肢が広がるとして期待されている反面、特定の高校に生徒が集中し、学校間格差が広がるのではないか、地域との関係が希薄になるのではないか、単なる学校間競争によって廃校される高校も出るのではないかと心配される声があるのも事実です。そうした不安の解消について教育長の御所見を求めます。
●知事答弁

 
 倉吉東高校が週刊誌で非常に高い評価を得たのは私も拝見して、関係者の皆様に敬意を表したいと思います。
 なぜこういういい評価を得たか、いい成果を上げたかということだろうと思いますが、いろいろな見方があると思いますが、私は1つは、学校の教育ビジョンというものが非常に明確に示されているということ、これが大きいだろうと思います。今、県でもミッションというものを各部・課だけではなく一人一人の職員に自覚をしてもらって、そのミッションに基づいて仕事をしてもらいたいということをやっているのですけれども、やはりミッションというものを自分で会得して、それに基づいて仕事をするとなりますと、随分従前とは違ってくるという印象を持っております。学校の現場でもやはり同じようなことが言えるのだろうと思います。先ほど触られましたけれども、ミッションといいますか、ビジョンといいますか、それから明確な目標というものを倉吉東高校は打ち出されているということ、このことが大変大きな意味を持っているし、その目標というものに教職員が一丸となって当たっているということ、これが大変大きな成果を生んだのだろうと思います。
 特に、明確な目標ということですけれども、いろいろユニークな取り組みをされていますけれども、結局は、生徒が社会に出たときに、社会の成員として一人前になるようにということ、これを基本に置いておられるのだろうと思います。韓国との交流ですとか、自分たちで考えていろいろなプログラムを組むとかやっておられますけれども、要するに自分に考えて、社会に出たときに、考える力を発揮して、社会の成員として、一人前の大人として生きていく力を与えるという、これを最終的な大きな目標にされているのだろうと思います。自分で考えて、しかも友達やほかの皆さんと一緒に考え合うということを重視されているというのは、大変いいことだと私は思います。そんなことが学校の成績といいますか、大学受験の結果、成果にも結びついてきているのではないかという気がしております。
 実は、東大に苅谷剛彦さんという教授がおられまして、この方は私が中央教育審議会の委員をしていて自来親しくしているのです。特にあいうえお順でいつも並ばされるものですから、梶田、片山、苅谷、梶田先生というのは米子出身の兵庫教育大学の学長ですけれども、かのつく人が大体いつもたむろしているのですけれども、隣近所におられまして、いろいろな雑談をしたりするのですけれども、この苅谷教授も倉吉東高校のいろいろな取り組みを高く評価されております。時々倉吉東高校にも来られていたようですけれども、先般本を読んでいましたら、これはちくま新書の「考え合う技術」という本ですけれども、この中に苅谷さんが書いておられまして、倉吉東高校の取り組みを幾つか紹介しておられます。総括をして、一つの高校生フォーラムを取り上げて、それを評価しておられるのですけれども、その中で、これを財政面で支援した知事の決断も大きいと。これはどうでもいいことなのですけれども、その後に、「教育委員会も頭が柔らかくて特定の学校に費用をつけることができたというのが実情です」といって、教育委員会の頭の柔らかさも高く評価しておられまして、そんなことも倉吉東高校をバックアップする環境として有効に機能したのかなと思ったりもしています。大変いい本ですから、もし御関心があれば読んでみられたらいいと思います。

●中永教育長答弁
 
 週刊誌で倉吉東高の記事を見たけれども、実績を上げていると考えるが感想はどうかということでした。学校の取り組みを評価していただいたといいますか褒めていただきましたので、頑張っている学校の方では、元気が出るのではないかと思っております。 お話のとおり、先日の週刊誌で倉吉東高の国公立大学の合格者の割合が全国一と報道されました。また同じ記事で、鳥取西高校ですけれども、同じくベスト150ぐらいまであったのですが、その中の71位ということで載っておりましたし、同じ今の鳥取西高校は、最も多くの種類の国公立大学、71大学だそうですけれども、そこに合格者を送り出した高校ということでも記事の中で紹介されていたということです。この記事とは直接関係ありませんけれども、例えば西部の方の米子東高校では、今春の現役生徒の国公立合格率が前年度に比べて9%、1割ぐらい増えているということも挙げて、それぞれ努力をしているところと考えているところです。
 倉吉東高がそうした実績を上げている理由はどういうところにあるかということで、先ほど、知事も答弁されましたのでダブりますけれども、私は同じように大学にただ合格者を出すための進学的な勉強というものをやっているだけではないと思っています。議員のお話にありましたように、「倉吉東高のかたち」というビジョンを何年か前しっかり定めて、文武両道とか、授業の質を高めるということをしっかりやりながら、21世紀の日本を支えて、世界に向けた高い志を持った人材の育成を学校目標に掲げたということ、それを核にしていろいろな教育活動をしていること。例えば、先ほどもお話がありましたけれども、韓国やイギリスの高校生も参加する国際高校生フォーラムを開催して、いろいろな問題点をそこで討議しています。それから、1年時には、全員がボランティア活動を自分で企画してやるということもしております。それから、平成15年度からですけれども、文部科学省のスーパー イングリッシュ ランゲージ ハイスクールというものがあります。これは授業など日本語は全然使わないで英語だけで授業していくということですけれども、そういうような指定を受けて、先進的な学習プログラムを取り入れるということもやっております。こういう取り組みをしておりますし、それから先ほどもありましたように、社会の中でどういうように生きるのか、これから社会の中でどうやって自分は生きていくのか、そのためにはどういうことが必要かということを強く深く考えさせるということもしておりますので、そういう意味で人間力を鍛えるといいますか、それがひいては進学実績の方にもつながったと認識しているところです。こういう取り組みがほかの学校にもぜひ広がっていただきたいと思っております。
 特に私は、ちょっと感想的になりますけれども、学校は先ほどありましたように、教育の目標といいますか、学校方針といいますか、これをしっかり定めるということがまず1つだと思います。方針が定まると、一丸になりやすいということがあると思っています。2点目に、生き方を考えさせたり、豊かな人間性を養う、内面性とか精神性というものを大事にした教育をしてほしいと私は考えているところです。そのために、スポーツはもとより、読書とか文化芸術とか体験活動とか、こういうものが非常に大きな力を持つと私は思っていますので、そういう内面性や精神性を大事にして、体験的なことをしっかりしてほしいということを校長会、教頭会でもかなり強く申し上げているところです。そういう意味で、倉吉東高のことが広がっていただきたいと思っているところです。
 通学区域の見直しに関しましての懸念の点です。普通学科の通学区域の直しについては、さきの6月の教育委員会で決定して、来春から実施するとしたところです。
ねらいですけれども、普通科において、学校の特色づくりが進みました。昔は同じような感じの普通学科だったのですけれども、いろいろな教育課程、その他部活動などいろいろな特色づくりが進みました。受験生が、その希望に応じてより多くの選択肢の中から自分の行きたい学校、本当に行きたい学校を選択していくということで、目的意識や学習意欲が高まるということ、これが一番大事だと私は思っています。それが一番のねらいです。また、市町村合併に伴い、市町村域の拡大がありましたので、同一市町村内で通学区域が異なるという状況もありましたので、こういうものを解消することもねらいとしてはありました。なお、先ほどお話に出ましたが、農業や工業などの専門学科か、あるいは総合学科、定時制課程については既に県全域化をしておりますので、この普通学科だけ通学区域があったというところです。
 この見直しに当たり、アンケートや直接いろいろ話を伺いました。その中学校や高等学校の校長先生や一部市町村の教育長さんの意見からですけれども、東中西それぞれの地域の普通科の学校は、それぞれ努力して特色を出しているので、従来の通学区域を越えて大きく移動するということはないということを我々も受けとめ、考えているところです。そういう意味で、御指摘の特定の学校に受験生が集中してしまい過ぎるというようなことはないと考えています。
 また、地域とのつながりについての点ですけれども、高等学校は小学校、中学校ほどは日常的には地域とのつながりはそれほど強くはないとは言えますけれども、学校によっては地域と連携したいろいろな教育活動を行っております。それが変わっていくことにはならないと思っております。
 学校間競争によって廃校になるのではないかということでしたけれども、学校がみんなが一丸となって特色づくりや魅力づくりを進めるということで、中学生に選択してもらうということが、それを解消していくことではないかと考えております。いずれにしても、通学区域を県全域化することによって、生徒が自分の本当に行きたい学校を選んで行くということ、学校同士が切磋琢磨して魅力ある学校づくりが進むということを期待しているところです。
高校教育のあり方について>2
 倉吉東高校の結果は、鳥取という地方にあっても、指導力は優秀な教員がたくさん県内にもいるということで、やればできるという大きな自信につなげていただきたいということと、勉強だけでなく、あらゆる分野において子ども達の持っている可能性を伸ばしていただきたいと思います。このことは、実業高校にあっても同じように、個々の生徒の進路保障に当たっても指導力を十分発揮していただきたいということを願っております。
 そこで、教育委員会の出番ですが、教育委員会の果たす役割としては、やはり教師の皆さんのモチベーションをどう高めていくか、そういう環境整備をどうつくり上げていくかであると思います。このたびの結果を踏まえ、今後の取り組みについて教育長の御所見をお伺いしたいと思います。
●中永教育長答弁
 先ほど述べましたように、このたびの倉吉東高の場合は、校長のリーダーシップのもとで学校のビジョンや目標をしっかり定めて、教職員が一丸になって教育活動を行うという中で達成感が得られてモチベーションが高まったということだと考えております。
 県の教育委員会の方の学校の支援、環境整備ということですけれども、例えば18年度から県立学校に導入しております教職員評価育成制度です。これを行いまして、校長、教頭等と面談をしたり授業を見てもらったりしながら、意欲、あるいは資質を高めていくというようなことも一つです。
 それから、今年度から同じく導入しております学校評価制度ですけれども、学校の評価をもとにして、学校が一体となって目標に向かって頑張っていくという取り組みができるものと思っています。
 学校の掲げる目標に共鳴して、意欲を持った人材を確保できるようにということで、今年度末から人事異動の公募制度を導入しましたので、こういうものも生かしていけば、それぞれの学校の方の力になるのではないかと思っております。
 さらに、財政的な面もありますので、学校独自で予算の執行ができて、学校の教育活動が自立的に行えるようにするための県立学校裁量予算導入事業というものを今年度から実施しております。このようなことを活用しながら、県の教育委員会としては学校長のリーダーシップのもとで、教職員がモチベーションを高めて仕事を行えるように支援をしていきたいと考えております。 
高校教育のあり方について>3


 倉吉東高の問題をあえて取り上げたのは、スポーツの分野で活躍すると、頑張った選手だけではなく指導者も社会的に賞賛が浴びせられスポットがよく当たります。しかし、これまではどちらかというと、勉強という学習の分野においては、努力している教職員が賞賛される機会はほとんどなく、教職員にとってはただ子ども達が喜んでくれる姿だけがまさにその生きがいであるという現状にあると思うのです。やはり、このたびの場合、一部能力のある生徒を対象にして成果を上げたということではなく、入学した生徒全体の基礎学力の引き上げに成果を上げたということで、私は賞賛されてよいと思っております。
 いずれにしても、子ども達が選択する人生の中で、力強く生きるためには教師の努力に大きく影響する部分がやはり多いと思います。教育委員会としても、現場の教職員が持っている力を十分に発揮できるよう、引き続きより一層の努力をしていただきたいと思います。