平成19年12月定例会一般質問(平成19年12月4日)No.2
<地方公共団体財政健全化法について> |
今年の6月、地方公共団体財政健全化法が成立し、地方自治体は財政の健全化に関して、前年度決算に係る4つの指標を作成し、公表すること、また各指標が一定の基準を上回れば地方自治体は財政の健全化または再生計画を策定し、改善策を実施することになりました。この指標の作成及び公表は平成20年度から実施され、計画の策定等は平成21年度からの実施が、想定されているようです。 これまでの地方財政再建促進特別措置法は普通会計のみを対象とし、その赤字比率が都道府県にあっては標準財政規模の5%、市町村にあっては20%を超えると、いわゆる赤字再建団体とされ、法に基づく財政再建を行わなければ建設地方債を発行できませんでした。つまり、特別会計に巨額の累積赤字があったり、土地開発公社などの外郭団体が多額の含み損を抱えていても、法的には問題とされず、健全団体とされてきました。 ところが、新しく制定された地方公共団体財政健全化法は、普通会計だけでなく、公営企業や一部事務組合、公社、第三セクターなども監視の対象として、単年度の会計状況だけでなく、将来負担をも把握する内容となっており、財政悪化を可能な限り早期に把握し、改善に着手させようとするものです。 簡単に言うと、これまではイエローカードの段階がなく、一気にレッドカードが出るような法律でしたが、このたびの地方公共団体財政健全化法は財政再生というレッドカードの前に、イエローカードに当たる早期健全化段階が新設されたということです。 内容は、普通会計の実質赤字比率のほか、普通会計と公営企業会計などを合わせた連結実質赤字比率、さらに、これらに一部事務組合などを含めた実質公債費比率、そしてさらに第三セクターを含めた将来負担比率と、4つの健全化判断比率を監査委員の審査を経て、その意見を付して議会に報告し、公表することとなっています。その上で、これらの比率が一定水準以上となった場合、財政の早期健全化、財政の再生を図る計画を策定することとなっており、それぞれの比率の水準をどの程度にするかについては、年内に政令として整備される予定となっております。 このことは、夕張市のような財政破綻を未然に防ごうと制定されたものと思いますが、夕張市の場合は、一時借入金をやみ起債的に運用し、これを繰り返していたもので、極めて特殊な事例ですが、県民が自治体の財政に大きな関心を寄せている今日、議会を初め、県民が自治体全体の財政状況を把握し、監視できることは極めて有意義であると思います。 ただし、問題がないわけでもありません。これから示される指標の水準によっては、各自治体の財政運営に大きな影響を及ぼし、自治体の予算編成権、強いては特色あるまちづくりや個性的な自治体運営に支障を及ぼしかねません。つまり、これまで以上に国の監視や関与が強くなり、地方分権の流れと相反する危険性も含んでいるものと思いますが、地方公共団体財政健全化法について、知事の認識並びに見解についてお伺いします。 また、平成18年8月には総務省が地方公共団体における行政改革のさらなる推進のための指針を策定し、この指針を参考として、より一層積極的な行政改革の推進に努めるよう通知しています。 この通知の中では、地方公共団体は、財政状況を示す簡易な貸借対照表など4つの財務諸表を作成し、公開するよう求められています。県下市町村の財務諸表の作成状況はまちまちであると思いますが、現時点で作成しているところはどの程度あるのかお伺いします。 さらに、想定でしかありませんが、機転がきく市町村では財政健全化計画、財政再生計画から逃れることを至上命題として、住民生活に直結する医療や福祉など住民サービスの縮減や切り捨て、安易な人件費抑制が起きることも懸念されるわけですが、県としてどのようなかかわりを持たれるのかお尋ねします。 |
●知事答弁 |
地方公共団体財政健全化法は新しい法律ですが、夕張問題であらわれたように自治体も破綻し得るものだ、破綻してしまったら大変に住民生活に影響を及ぼすわけですから、これを回避する、また破綻した後の再生の手順というのをきちんと策定しておかなければならないだろうというものです。したがって、今回のこの地方公共団体財政健全化法自体は、私は手法として肯定し得るものだろうと思います。議員も恐らく同じ考え方ではないかと思います。 これは、今までだと、いきなりこれは再建団体ですと、あなたのところは再建団体ですから、一つ一つ、はしの上げおろしまで、紙1枚買うことまで国の許可を得なさいというような仕組みでした。しかし、これは余りにも極端で、その前に引き返す努力を住民の皆さんの監視のもとでやっていく必要があるわけで、そういう意味で、単に財政再建の団体のカテゴリーをつくる以前に、そこに行く一歩手前で早期に健全化を進めるべき団体のカテゴリーをつくって、あなたのところはもう危なくなってきましたよ、ですから監査委員の皆さんの目だとか住民の皆様の十分な監視のもとに立ち直っていく、そういうプログラムを考えてください、それに従って財政健全化を進めてくださいというスキームで、このこと自体は施行し得るだろうと思います。 また、今回いろいろと指標が出されて、これについて心配だと伊藤議員の方で御指摘がありましたけれども、県内市町村のストックですね、財産の公表の問題ですとか、あるいは連結決算をして連結して実質の赤字はどうであるかとか、第三セクターも含めて将来の負担がどういう状況であるかとか、そうした指標をとらえて、このメルクマールをつくろうとしているわけですが、これ自体は、実は鳥取県など、ある程度気のきいたといいますか、財政に対して注意深い団体はこれまでも把握をしてきましたし、公表もしてきて、県民の皆様、住民の皆様の御判断を得る材料にしてきたわけです。ですから、私はこのスキーム自体にそれほど疑問の点はないのですが、ただ問題は、伊藤議員の方でも御指摘がありましたが、余りにも過度に厳しい基準を設けて財政再建団体にすぐに行ってしまうというようなことになると、国の直轄のもとに財政運営をやれというのに等しいことになりますので、この点は十分注意する必要があるだろうと考えています。 次に、地方公共団体の財政健全化法の施行ということがあった場合に、財政健全化に迫られて住民生活の切り捨てにならないか、これに対して県としてどういうふうにかかわるかというお尋ねです。 私は、市町村も県もそうですが、地方自治体は、これは住民の皆様がみずからの責任で参画して、そしてあれかこれかの選択をして、財政健全化の選択もあれば、あるいは財政健全化についてこういうスピードでやろう、少し調整しながらこういう事業はぜひ今のうちにやっておこうと言うこの辺の選択の余地は住民の皆様に与えられるべきものだと思います。ですから、基本的なスタンスを申し上げれば、市町村が財政健全化の状況をにらんで自分たちで判断するのを県の方も尊重すべき立場だろうと思います。自治体は、市町村も県も対等のパートナーですので、そういうスタンスで基本的には臨むべきだろうと思います。 ただ、全く無関心でいいかどうかということは、私は場合によっては、県としても関心を持って、県として対処すべきことがあるならやるという場合も考えられると思います。 例えば、前回の議会で内田議員の方からも御指摘があったかと思いますが、地震のときに大変な借金を自治体はしました。県もしましたし、西部の市町村は住宅復興の助成金などのために随分の借金を背負い込んだという実情があります。この借金を背負い込んで、それを返済することの1点で、自治体が倒れてしまう。財政破綻に向かって、財政再建団体へ突き進んでしまうという引き金を県も手伝ってやるかどうかというのは、これは一つ考慮の余地はあるだろうと思います。こういうような、若干、県としても最終的に財政破綻ということになれば、苦労するのは住民の皆様であり、それはひとしく県民でもありますので、財政破綻を逃れるために、避けるために市町村が努力をする。その努力に対して県も協力できることが本当にあるかどうか、そこのところは最後におつき合いをする場面も考えられると思います。 ただ、基本は、これは財政秩序であり、市町村は市町村の財政責任を住民と一緒になってとっていただく、考えていただく、こういうことであろうかと思いますので、住民サービスをどのように差配するか、それは切り捨てという言葉が当たるかどうかこそ、住民の皆様と一緒に自治体で考えるべき問題ではないかと思います。 |
●青木企画部長答弁 |
各市町村がそれぞれの財務状況について、議会、それから住民にわかりやすく財務諸表を作成して公表すること、これは大変大切で望ましいことであると考えております。そのための技術的助言として、総務省からお話のありました行政改革のさらなる推進のための指針というのが平成18年の8月31日付で出ています。そのポイントは、発生主義それから複式簿記という民間の会計の考え方を導入して、貸借対照表、これはいわゆるBSと呼ばれているものです。それから行政コスト計算書、それから資金収支計算書、これはキャッシュフロー分析に相当するものだと思います。それから純資産変動計算書、これは民間でいいますと損益計算書、PLに相当するものと思いますが、この4表の整備を標準ケイとして技術的助言が出ております。 作成する対象としては、その地方公共団体、これは普通会計それから公営事業会計双方を含みます。それから公社、第三セクターといった関連団体も含む連結ベースで整備をするという内容。それから通知をした時点である程度、取り組みが進んでいる団体、それから都道府県、人口3万人以上の都市は3年後、平成21年となりますが、までにという一つの期限。それから比較的取り組みの進んでいない団体、町村、人口3万人未満の都市は5年後、平成23年までに4表を整備し開示するという技術的助言が出ています。 この技術的助言を踏まえて、各市町村の判断で今、作成に取り組まれているところと承知していまして、おおむねの状況をお話ししますと、貸借対照表については、普通会計ベースで申し上げますと8団体、それからさらにその中で公社、第三セクターも含めた連結ベースですと2団体が作成して公表しているところです。それから行政コスト計算書につきましては、普通会計ベースで8団体と、こういった取り組み状況になっているところです。 |
<地方公共団体財政健全化法について>No.2 |
財政健全化法は市町村のみならず県にとっても大変厳しい法律であると思うのです。県の一般会計は依然として厳しい状況に置かれているものの、そこそこ維持はされておりますけれども、特別会計の中には多額の負債や塩漬けされた資産を抱えているものもあり、今後これらの処理が喫緊の課題になろうかと思いますが、今後の取り組みと対応策について、知事の御所見をお伺いします。 そして、我が県においては、地方自治法の改正に伴い、今年度から県の監査委員が4名から6名に拡充されて、しかも公認会計士と税理士が任命されており、連結収支計算書など監査に対応できる体制が準備されているわけですけれども、市町村においては、監査事務局体制が十分でない上に監査委員も2人と、少ないところがほとんどで、今後、複雑化、専門化する監査業務に対応できるのか、とても心配するところです。早急に市町村の監査体制の充実と機能の強化を促進する意識の醸成が必要かと思いますが、知事として市町村の現状について認識及び今後の対応策についてお伺いします。 そして、現在、総務省では同法の施行令、規則の制定を急いでおり、施行令についてはその概要を公開して、広く一般からの意見を募集しているところです。その概要については、さきに申し上げましたとおり、将来負担率の算定範囲や各指標の基準数値等についても施行令で定められてきます。つまり、本法が地方自治体の活動にどれだけ制約を加えていくかは、ここでのさじかげんが大きく影響してくるのではないかと思っております。 地方の独立性を保ち、地方分権を進めるためには、県として具体的な内容についてきちんと点検し、過度な制約とならないよう必要な事項があれば国に物を申すべきだと考えますが、知事の所見をお伺いします。 |
●知事答弁 |
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<地方公共団体財政健全化法について>No.3 |
いずれにしても、地方分権の時代ですから、市町村の主体的な考え方が一番ですが、しかし、先ほど申し上げたように、今度は監査委員というのはかなり財政の専門性が求められてきます。そういう状況の中で、やはり市町村の意識醸成、これをどうやるかという事が私は一番大きな課題だと思っています。 |
●知事答弁 |
監査委員の専門性が必要なことは私も理解します。そして、それに対して住民の皆様も関心を持っていただくべきだと思いますので、県政だよりなどのメディアを通して、私どもも県として財政の後見役ですので、市町村にも財政健全化の法律が施行される、この意味で監査の果たす役割が高まることなどをPRしたりして、意識の醸成を図っていきたいと思います。 |