平成19年6月定例会一般質問(平成19年6月25日)No.3

<地方独立行政法人について>

 
 ことしの4月に鳥取県産業技術センターが地方独立行政法人として発足しました。この分野の先進県である岩手県は、準備に3年かけ、理事長となられる方も事前に招いた中で、しっかりとした話し合いや計画が立てられ、移行されてきた経過については、執行部を初め議員の皆さんも承知のところです。

 私は、当時所属していた経済産業常任委員会において、鳥取県の場合は期限だけが定められた中での法人化ありきで、少し拙速ではないかと申し上げて、問題も提起しながら議論をしっかり行ってきたところです。ところが、鳥取県においては、経済産業常任委員会において、前商工労働部長が法人化には絶対の自信があると大見えを切られたように、岩手県で3年かかった準備作業を見事1年でやってのけられました。
 残念ながら、鳥取県産業技術センターの地方独立行政法人への旗振りをされた前知事、前商工労働部長、前センター長が1人もこの議場におられない中で、さらなる議論をすること自体、より私の不安をかき立てていますが、行政の継続性の中で、あえて質問をさせていただきたいと思います。
 4月1日から独立行政法人として歩み始めた鳥取県産業技術センターは、直ちにその成果が評価の対象となっているわけですが、新たに知事に就任された平井知事は、この移行並びにそのプロセスをどのように評価されているのか、お伺いいたします。また、地方独立行政法人となった鳥取県産業技術センターは順調に業務が進んでいるのか、何か想定外の問題が発生していないのか、お伺いします。

 

●知事答弁

 
 4月1日から、この議場でも議論を随分経られたと伺っておりますが、地方独立行政法人として鳥取県産業技術センターがスタートをしたわけです。プロセスは、先ほど議員のお話の中にも何となく聞こえてはきましたけれども、結構性急といいますか、大分タイトなスケジュールで進めたのではないかと、確かに思います。ですから、岩手は3年とおっしゃいましたけど、当県は1年でそれをやったと。
 私も就任された稲永理事長ともお話をしましたが、就任されて随分、結構苦労していると、大変だということをおっしゃっていました。それは、やはり3月までに、例えば独立行政法人化をして作っておくべきいろいろな書類だとか制度の仕組みだとか、あるいは職員との調整だとか、いろいろなことがあるのだと思います。そういうことを片づけておいてから4月1日に必ずしもスタートできたわけではなくて、随分と走りながらのスタートアップになったということで、随分と苦労されたということをおっしゃっていました。幸い稲永理事長御自身が国の方の独立行政法人で研究機関を束ねられておられましたので、そうした経験も豊富ということで、これを乗り切られたということだと思いますが、そういう意味でのプロセス上の大変さは、私はあったのだろうと思います。
 また、職員の方々もいろいろな意識で、この問題にかかわられたと思います。身分が切りかわるということになります、職場が変わるということになりますから、それは人生にかかわることですし、それを納得されたり、あるいは自分としての身の回りの整理をされるという意味で何らか必要なことはいろいろあったと思います。中には、お二人ほど、その独立行政法人化に当たり、県庁の方に移籍されるという決断をされて、試験を受け直してこられた方もおられます。そういうようなことを経て、今回の独立行政法人化がなされたわけで、その過程においてはいろいろなきしみとか、あるいは大変さというものは、それはあったと思います。
 この独立行政法人化自体をどう考えるかですが、私も企業の方々とか商工会議所の皆さんとも話をさせていただきますが、随分、産業界の方は期待をしていると思います。今まで何だかんだいっても、やはりお役所の一部でしたので、敷居が高いとか相談がしにくいとか、言ってもすぐ動いてくれるのだろうかとか、そういうことはいろいろあったと思いますが、こうして法人化がなされて、いわば県から経営分離がなされ、自由に動き回れる、そうした裁量権を得たわけで、そういう意味での期待は高いと思います。
 ぜひ、このせっかく独立行政法人化したのですから、これを活用していただき、日ごろ、これをちょっと計量してみたいとか、あるいは人材育成で支援してもらいたいだとか、あるいは研究分野として連携してこういうことをやりたいとか、そういうことをどんどん、この行政法人の方へ持ち込んでいただき、使い勝手よくやっていただければありがたいと期待しております。
 何か想定外の問題が発生していないかというお尋ねに対しては、副知事の方から御答弁申し上げたいと思います。

●副知事答弁

 
 伊藤議員がおっしゃいましたように、限られた時間で、十分でなかった面も確かにあります。例えば、県から切り離されることもあって、労働安全衛生関係のコンサルティングを受けました。その結果、有機溶剤を取り扱う施設において労働安全衛生面での機器整備が必要であるということがわかりまして、本議会に機械設備の整備費を提案させていただいております。これは、本来、センターが発足する前にすべきことだったと思います。そのほか、スタートしてみて不具合を生ずるといいますか、十分ルールを決め切れていなかったというものもあったかもしれないと思います。
 現在、法人の具体的な行動計画となる中期計画を策定しております。これの策定に向けて法人の中で議論を深めつつありまして、センターの役割について理事長初め職員の間の共通認識とか意識がさらに高まっていくものと思っております。県としてもよくお話を聞いて必要な対応はすべきだと考えております。
 なお、産業技術センターの本来の業務である県内企業の支援業務というものについては、独法化の前と利用状況は変わりなく推移しており、4月、5月の2カ月間を前年度と比較しますと、平成18年度は機器の利用とか依頼試験が 292件で、 2,348,000 円という金額になりますが、19年度独法人化後は、件数が 343件と50件余り伸びて、金額的にも 3,373,000円と 100万ぐらい伸びているというところで、この面では比較的順調に推移しているものと思っております。

<地方独立行政法人について>bQ

 
 私も稲永理事長に先日お会いしました。知事も先ほどありましたようにお会いされたようですけれども、本当にすばらしい理事長ですね。私も感心しました。稲永理事長は、県民の皆さんに信頼される質の高いサービスをどう提供するかが問われていると、センターにとっては人材が宝、職員並びに研究員の皆さんと情報の共有化、意思疎通を図りながら県民の期待に応えたいと、何一つ愚痴も言われずに話をしておられました。はっきり申し上げて、法人化への時間が限られていた中で、まだまだいろいろな課題が産業技術センターの現場で発生する可能性は十分あると思っております。県としても、法人化になったから自助努力で頑張ってください、というふうな冷たい対応でなく、法人化になった今後も、やはり積極的に支援すべきと考えますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。

●知事答弁

 
 これは、節度を持ってこれから接していくことが必要だと思います。私どもの県とは経営分離をして、そこで独立採算というとちょっと弊害がありますが、実際、交付金などで支援をすることになりますが、その中で一定の財政的な秩序の中にやっていく、そうした単体をつくったわけですから、ここの間で余りルーズなことにならないように、そうした節度を持ってお付き合いをするということが必要だろうかと思います。
 やり方としては、年々の交付金で支援をする。例えば人件費など、とても収入では支え切れないところもありますので、そうした今回の産業技術センターの特性に従った財政的な支援の交付金をつくる。あるいは大きな修繕費については、それも支援をしていくとか、そうした財政的にもきちんと一定の節度を持った中での関係を保っていきたいと思います。
 大切なのは、せっかくこれは我々の別働部隊としてできたものですから、今まで県庁の中にあったのとは違い、彼らの発想で民間の活力を掘り起こすために動いていただきたいと思いますし、民間の皆様にも、彼らは県とは別の存在だからということである意味、使いやすく思っていただいて活用していただく。そうした空気をつくることが必要だと思います。
 私どもの方で、ほかに産業振興機構もありますし、この技術センターそれから県、また他の商工会議所、商工会といったグループ、これらがネットワークを組んでいけるような仕組みをつくっていくことが今大切ではないかと思います。独立行政法人化にもうしてしまった、せっかくなってもらったわけですから、これを活用することを考えていきたいと思います。

<地方独立行政法人について>bR

 
 
副知事から報告がありましたが、私も行きました時に、理事長は職員や研究員の皆さん方とのコミュニケーションを一生懸命深めるように努めておられましたし、法人として経営のあるべき姿を一生懸命協議しておられました。この姿を目の当たりにして、私も万全だという理解をしていたわけですが、我々の判断に少し甘さがあったのかなというふうに、法人化を承認した当時の議員の一人として大きな責任を痛感しました。
 県では、産業技術センターに続いて農林の試験研究機関等でも法人化の検討がなされているようですけれども、このたびの法人化の取り組みをしっかり総括される中で、焦らずに将来のあり方を判断されるべきだと思いますけれども、改めて知事にお伺いしたいと思います。

●知事答弁

 
 
私どもも今庁内で、その農林系の試験研究機関、これを産業技術センターのように法人化できるだろうか、すべきだろうか、こうした検討をやっているところです。これについては、今の産業技術センターでの取り組みをひとつ総括しながら検討をするということに、議員がおっしゃるようになると思います。
 ただ、私どもで幾つか検討の視点として考える必要があると思うのは、産業技術センターとは違い、例えば、機械を開発しようということで企業からある程度収入が入る、いずれ特許料が入ってくるとか、そうしたことの料金収入を当てにできるかというと、農林系の場合は農家の皆さんが相手ですので、なかなかそういうわけにはならないだろうと思います。もちろん一部農業機械の開発、促進だとか、そうしたミッションもありますので、そういう部分がないわけではありませんが、ただ、なかなか難しいというふうに思います。そういう財源的には産業技術センターとは違いがあるだろうと。
 あと、人の問題で言えば、私ども農林系の場合は、普段は農業改良普及員など農業指導を行っている人が、この研究の場合、回ってくるということがあり、もうずっと、例えば稲作の改良について、米の改良についてずっとやっていく、品種改良をずっとやっていくということで、それは育つようなものにはなっておりません。むしろ現場と研究機関とを行ったり来たりしたり、また現場の方へ技術的な指導をする司令塔のような役割を果たすような面があったりします。ですから、研究機関というよりも行政機関の一部という、そういう性格があるのかなというように思っております。
 このように幾つか違いがあり、私も現場の農業試験場の若い職員とも話をしましたが、いろいろと不安がある、その中にはなかなかもっともなものもあるように思いました。慎重に検討してみたいと思います。