平成21年2月定例会一般質問(平成21年3月11日)No.2

<県の債権の取り扱いについて>

 
 県の債権の取り扱いについては、一般質問通告の後、一昨日の常任委員会で福間議員の指摘により、その資料が提出され、あらましが報告されました。議員の皆さんにはその概要については御承知かと思いますが、改めて知事に質問したいと思います。
 智頭町市瀬の採石場から土砂が崩落し、千代川をせきとめる事故が平成14年と平成16年に発生し、総額112億円かけて既存の国庫補助事業等を活用し、災害復旧工事が行われました。この災害復旧工事は、原因者である久本砕石が本来行うべきものであったわけですが、被災住民の生命、財産を守るため、速やかに工事を執行する必要があったことから、県が肩がわりをして工事を行う行政代執行を行ってまいりました。
 この2回の災害復旧工事に係る工事で原因者に求めてきた負担分と行政代執行経費は19億5,800万円余りで、そのうち収納できたのは差し押さえた預金と有価証券でわずか2,130万円余り、残り19億3,700万円は回収できないままになっています。
 ところが、一昨年11月には平成14年分の行政代執行に要した費用5,015万円が、昨年8月には平成15年分の行政代執行に要した費用3億7,056万円余りが、既に時効が成立し、地方税法第18条の2に基づき、回収不能として、不納欠損処分とされています。
 これを私が知ったのは、先々週の新聞報道を見てのことでした。約4億円もの焦げつきが出ているのにもかかわらず、県民に十分な説明がなされなかったことはどういうことでしょうか。また、今のままでは、ことしの4月11日には平成16年分の行政代執行に要した費用6億2,675万円余りが時効を迎えます。原因者負担分の9億1,058万円余りについては、前段で申し上げたように、預金や有価証券が差し押さえられているため時効は中断中ですが、回収の見込みは立っていないようです。原因者である久本砕石が払いたいのに払えないのか、払う気がなくて払わないのか、原因者の思いが私たちには全く伝わってこないのです。こうした現状を踏まえると、通り一遍の返済督促であったのではないでしょうか。次々と行政代執行に要した費用が時効を迎えるに当たり、まじめに納税義務を果たされている県民の皆さんの理解が得られるのかとても心配です。
 災害発生直後、当時の県の土木部長が、県の指導監督がぬるかったと県の落ち度を認めた経過があるわけですが、このように原因者負担分や行政代執行に要した経費の回収ができていない現状には、そうした背景の後ろめたさがあり、返済の督促が弱腰になったのではないか、また、うがった見方かもしれませんが、初めから行政代執行はしたが返済は無理だろうという思いが県全体にあったのではないかと想像もされます。知事の所見をお伺いします。
 
●知事答弁

 これはいろいろな経緯がありますので、詳細については県土整備部長からお答えしたいと思います。これについては我々も非常に残念であり、正直、債務者に対する憤りも感じているところです。経緯について県土整備部長からお話しますが、我々としては、今回の行政代執行、それから負担金の請求については、手段を尽くして法律の専門家ともよく相談し、可能な限りの手段を尽くしてやってまいりました。さらに、その実行行為者に対しても刑事責任を問いたいということで、告発もさせていただきました。ただ、なかなか我々の思うようには進まない、先方の協力というか、誠意ある対応が見られないことは本当に遺憾に感じるところで、これがもとで県財政に対して大きな影響を与えてはならないという思いでやってきました。残念ながら結果が出ていないというのはそのとおりで、それについての責めは負わなければなりませんが、そういう意味で、手ぬるい対応ということではなかったということは御理解いただきたいと思います。
 あと、非常に厄介な問題は、そこに問題のある事業者、砕石事業者がありまして、崩落を繰り返してきました。平成14年の崩落に伴う我々のほうの代執行措置、あるいは我々のほうの行政としての負担金の請求が問題になっていますけれども、この事件、崩落事故の以前からもありまして、その際には集落が水に埋まってしまうということがありました。その後、結局、砕石業者のほうに責任を問うという形で、繰り返し繰り返し指導をしてきたわけですが、誠意ある対応が出てこない。その中でさらにまた崩落が起こったというのが、平成14年の1月の崩落事故です。これで36億円の出費をしたわけですから、当然ながらその原因者である者に責任を追及するのは当たり前で、我々としても訴訟を起こしたりしてやってきたわけです。ただ、先方が会社としては破産したり、個人の資力には限界がありますので、そこで全額返済ということに至っていないという状況にあるということです。
 ただ、このときの措置も、正直申し上げれば恐らくいろいろな手段が考えられたのでしょうが、とにかくまた崩落が起こるようなことがあってはならないということで、考え得る限りのことはやったわけですが、状況はさらに悪かったわけで、その後にまた平成16年に崩落事故が起こりました。このときは市瀬の集落が再び水没するということになり、76億円の費用を費やして河川の災害復旧工事などを実施したわけです。振り返ってみれば、責任追及ができるかどうかというところで躊躇する以前の問題として、地域の安全、河川の流路の確保など、現実的にもっと早目に手を打っておくべきだったのではないかと、行政としても反省すべき点はあると思います。そのことは率直に申し上げなければならないと思いますが、責任追及は我々としても今後も継続してやっていきたいと思いますし、今回の原因者の方や、あるいは関係者の方に、普通であればみずからの法的な責任を乗り越えてでも県に対して、あるいは公共に対して償いをするというのが本来であろうかと思いますが、それが一向に出てこないことについては残念だと言わざるを得ないと思います。これからも当然働きかけは継続してやっていく部分があるだろうと考えています。

●谷口県土整備部長答弁
 
  昭和60年の最初の崩落以後、県として緊急措置命令、それから災害防止命令というものを出しながら、その都度、安全対策などを指示してきましたが、なかなか指導に従わないということで対策は進まなかったという状況です。当時は営業を続けさせながら、業者の責任と負担で安全対策を講じさせていくのが現実的なのではないかという判断で指導してきたと思いますが、結果的に平成14年の1月の崩落、これは残廃土の崩落を招いたというものです。約20万立米の土砂が千代川のほうに入りせきとめたというものです。これについては、河川管理者としてやはり放置できない、対策を実施しなければいけないということで、河川法に基づく原因者負担ということで、河道内については原因者負担で行っております。河道外、河川敷地外については、やはり不安定な土塊がまだ残っている、これがまた河道に流入してくるおそれがあるということで同社のほうにメールをしたが従わない、やむを得ず行政代執行で県が対策を実施したというものです。
  こういうような反省を踏まえて、16年の4月に新たに安全対策を主眼とした鳥取県砕石条例を制定して、現在、採石業者に対しての指導強化をしています。
 今回問題となっている債権は、平成14年の崩落に係るものということで、約19億5,800万です。この債権について、回収に当たって、弁護士に法律相談等いろいろとしてきました。平成14年の崩落直後から民間調査機関に依頼を複数回行い信用調査を行っています。それから刑事告発、それから会社役員に対する損害賠償請求、あと、各方面の専門家の意見を聞きながら、最大限の回収に対する努力を行ってきています。
 その回収の中身としては、動産、株券、株配当金、預金、売掛金等を差し押さえて、14年の7月には2,100万円余を現金化して回収したというものです。あと、砕石とか看板などの差し押さえも順次行っています。しかし、同社は14年1月以降休止状態で、19年5月には清算結了されているということで、今後新たな財産を見つけることは極めて困難だという状況です。
 先ほど県議会の常任委員会での説明ということがありました。第1回目の5,000万円余の時効を迎えた19年11月には常任委員会で報告しましたが、その際の説明で、弁護士のほうに相談したが法人からの回収が困難との説明をしています。それ以後も新たな財産が見つかることの状況変化がなかったということで、20年8月の時効を迎えたとき3億7,000万円で、この報告をしなかったということについては深くおわびを申し上げたいと思います。以後きちんと報告させていただきますので、よろしくお願いいたします。 

<県の債権の取り扱いについて>No.2

 県が会社役員3人を相手に求めた損害賠償訴訟が、平成16年10月に1億円の支払いを命じる判決が出ているわけですが、今日までの納付額の状況並びに今後の納付の見込みについて、知事にお伺いしたいと思います。

●知事答弁

この点については、県土整備部長からお答えしたいと思います。

●谷口県土整備部長答弁

 
 平成14年10月に、当該社の役員に対して1億円の損害賠償請求というのを鳥取地方裁判所へ提訴して勝訴しましたが、その後また被告側が控訴して、最終的には16年10月に判決が確定したということで、これに基づいて、財産調査等に着手しました。今日までに回収できたのは2万7,179円という大変少額で、預金等を差し押さえたという結果ですが、現実的に役員の個人財産というものは残っていなかったという状況です。

 現在、役員3名のうち2名が年金生活者、1名の方が自己破産者ということで、年金の差し押さえというようなことも弁護士のほうに相談しましたが、厚生年金保険法とか国民年金法で年金そのものの差し押さえができないということがあり、現在に至っているという状況です。


<県の債権の取り扱いについて>No.3

 厳しい財政状況を反映する中、21年度予算では虎の子の基金であった土地開発基金20億円を取り崩していますが、まさにこれに匹敵する金額でもあります。昨日の議論でもあったように、まさに学校現場での少人数学級の支援教員の問題にしてもそうなのですが、こうした金額があれば県としても十分対応できるのです。そういう金額が回収できれば、基金も取り崩さなくて済んでいたというわけです。
 例えて言うと、中部地区のすべての県税収入が大体50億から60億と言われています。まさにその3分の1に匹敵する大変な金額です。また、県民の皆さんの税金という認識のもとで本当に返済を迫られてきたのか、私は少し疑問が生じています。知事として、県民の皆さんに丁寧な説明をするとともに、原因者の責任追及の姿勢をいま一度はっきりしていただきたいと思います。本当に原因者の皆さんがぎりぎりの生活をしておられるのか、常任委員会の中では、原因者の人はぎりぎりの生活ではないような生活をしておられるという議論もされたとも聞いています。今後の対応方針並びに所見についてお伺いしたいと思います。 
●知事答弁

 これは重く受けとめなければならないことだと思います。私ども県庁として、県民の皆様の大切な税金をお預かりして執行する立場なのです。ですから、いろいろな事情はあるにせよ、その毀損をできる限り避けなければならないのは言うまでもない、論をまたないことです。
 今回は、経緯としては地元の市瀬を初めとした集落の安全とか河川の安全ということもあるので、やむにやまれず、県としても行政代執行に乗り出したり、さらにはその後、河川工事、災害復旧活動に乗り出したりということになったわけですが、これは河川を管理をし、そして安全を図るべきこともあり、やむを得ない出費もあることは御理解いただきたいと思います。
 ただ、その上で、私どもも非常に憤りすら感じるのは、原因者の方々が誠意ある弁済をしているのかどうか。正直申し上げれば、我々は訴訟だとか法的な手段に頼る以外に自発的な弁済をいただいているわけでは全くありません。事情が事情ですので、本来はそこ考えて、協力というか、当然みずからの責務を果たしていただきたいと思いますし、事業に関係される方々はこのほかにもおられるでしょうから、自発的にでも資金を県のほうに戻していただくべきものではないかと我々は思っています。
 ただ、残念ながら、法律に基づく行政執行をする立場ですので、法的手段以外はできないわけですから、例えば年金の差し押さえができるかといえば、それは残念ながら我々は法的にはできない。もちろん、自発的に弁済していただく可能性はありますが、そこのところはできないということになっています。
 今回、議会で常任委員会、そして本会議場でも議論が提起されたので、改めて関係者の皆様にこうした県議会の総意を私どもの気持ちとともに伝える書簡を送ったり、アピールしたいと考えています。これからも手段としては限られる面はありますが、我々はぎりぎりまでその責任追及を果たしていきたいと考えます。
 

<県の債権の取り扱いについて>No.4

 
 やっぱり納税者の皆さんの思いを考えれば、私はとても重たい金額であり、浄財だと思っています。時効が来る前に英知を結集し、当事者並びに損害賠償が命じられた役員から最大限の回収の努力を行っていただきたいということをお願いしたいと思います。