平成22年6月定例会一般質問(平成22年6月14日)No.2

<獣医師及び薬剤師の育成確保について>

 医師や看護師の確保対策が今県政の重要課題の一つとなっていますが、本日は専門的な職種である獣医師及び薬剤師について、人材確保の現状と今後の対応についてお伺いしたいと思います。

 宮崎県で発生した口蹄疫により、今獣医師の存在が大きくクローズアップされていますが、県の採用試験では毎年応募者が少なく、再募集する年があるほど人材の確保が困難な職種となっているようです。さらに、薬剤師についても、一応職員の応募はあるようですが、県にとって将来も安定的に人材が確保できるかといえば、私は大変心もとない状況にあると思います。まず獣医師及び薬剤師の資格を必要とする人材の確保について、県としての見通しをどのように考えておられるのか、知事に所見をお伺いします。

 また、産業動物獣医師については、社団法人鳥取県畜産推進機構に奨学金制度が設けられており、県内に就職した場合には、借りた資金の返還が免除される制度が独自につくられていると聞いています。こうした制度があるにもかかわらず、職員採用の応募集めに苦労しておられる原因は何にあるとお考えなのか、人事委員会事務局長にお伺いします。

●知事答弁

 
 これらの人材は専門職で、さまざまな職種で活躍していただいています。と言うのも、昨今話題になっています口蹄疫問題、これで殺処分を行うとかいうとになると、獣医師の資格がなければ決して許されないというのが我が法上の問題ですから、そういう危機管理にも当たっていただくようなことがあります。さらに、獣医師であれば、食生活にかかわる衛生上のコントロールだとか、それから食肉の検査のこと、ペットコントロール、こうした色々な分野で獣医師の資格が必須だというものがあります。ですから、県行政としてなくてはならない存在だと言えると思います。

 また、薬剤師もそうですが、薬剤師ももちろん病院のほうで調剤を行うというのは当然ありますが、それ以外にも健康管理ですとか、それから衛生関係とか、化学関係ですとか、やはり色々なところで活躍していただくフィールドがあるわけです。

 ですから、県庁全体として考えるに当たり、最低限これだけの人数が必要だというのがまずあって、それとあわせて、県庁の色々な行政の幅を持つ、質を高めるという意味で、なお多目にこうした獣医師さんあるいは薬剤師さんの資格を持つ優秀な人材に来ていただきたいという気持ちです。

 人事計画というか、実際の採用もそういうふうに行ってきています。それぞれの職種ごとの定員というものがありますが、例えば獣医師さんのほうであれば、80人の定員ということになりますが、これは現在100名を超えて105人の現員体制ということになっています。また、薬剤師さんのほうも、定数は9名なのですが、その9名をはるかに超えて30名余の職員が働いているという状況になっています。

 このように、現在の状況としては定数よりは多目に確保しているということですが、だんだんその活躍のフィールドも広がってきているところがあるので、決してこれで十分だということではないと思っています。

 また、職員の新陳代謝もあります。例えば獣医師の場合だと、ちょうど今年度は退職者が7名ほど出るぐらい、ちょっと大きな退職者の山があって、やはり年によって採用に幅があります。鹿田部長はまだやめるわけではないのですが、獣医師さんの採用年次にばらつきがあり、そういう状況にあります。ですから、それを今度補充していくということも必要で、その意味では、毎年何人ずつ確保していこうとか、計画的な確保も必要だということです。

 現在、我々のほうで職員募集を行っていますが、昨年度は要望していました募集定員とほぼ同じぐらい、むしろ薬剤師が上回るぐらい採用ができました。ことしも募集をかけておりますが、大体獣医師さんは1.3倍ぐらいで、余り倍率は高くない。本当はいろいろと倍率を高めるような努力もして、それで優秀な人材の確保がしやすくなるような環境づくりももっと必要だとは思います。薬剤師さんのほうは今3倍弱ぐらいの倍率になってきていまして、一応の競争性のある格好になっていると考えています。

●人事委員会事務局長答弁

 
 お話の奨学金制度については、近年新たに卒業する受給者というのが年1名程度に減少してきています。それと、返還免除の対象というのは県庁だけではないということもあって、県職員の獣医師確保に対する効果という面では限定的になろうかと思いますが、制度が始まった平成5年から約20名程度を県職員のほうへ採用させていただいています。そういう意味では一定の効果はあると考えています。

 そのほかにも、県のほうでは新たに初任給調整手当を支給するようにしたり、あるいは採用試験においても、受験資格の上限年齢を他の職種は35歳未満としているものを50歳未満まで引き上げると、こういったような取り組みを行っていますし、通常の周知、PR活動に加えて、任命権者のほうでも獣医学部があるような大学に直接出向いて説明を行うというような取り組みも行っていただいており、連携しながら獣医師確保に努めているところです。

 そこで、御質問にあったように、そういった取り組みをしているにもかかわらずに、応募者集めに苦労しているその原因は、ということです。

 これは本県だけでなく、他の都道府県でも同様ですが、一番大きい理由というのは、やはり以前に比べて獣医学部の学生が産業動物よりもペットとかそういった小動物のほうへ志向が強くなっているというようなことがあり、なかなか公務員の獣医師職に対して目を向けてもらえないというような状況だろうと思っています。そういう状況ですが、何とか少しでも多くの人に本県職員を志望してもらえるように、県の業務内容を知っていただいて、その重要性というものを理解していただいたりだとか、あるいは鳥取県の魅力、こういったものをPRするとか、そういうことを含めて、地道に勧誘活動を任命権者のほうとも連携しながらやっていく必要があるのではないかと考えています。

<獣医師及び薬剤師の育成確保について>bQ

 
 薬剤師の県の初任給は、専門職で18万2,400円、行政職で17万6,800円ですが、民間では25万円から30万円が相場であり、その格差には大きなものがあります。

 私が薬剤師会の皆さんにお話を聞いたところ、民間の薬剤師も慢性的な人手不足で、その確保は大変な状況にあるということでした。将来的に県内の薬剤師を確保するための手段として、医師や看護師と同じように、県に奨学金制度を設け、県内に就職した場合には奨学金を免除する制度を検討すべきと思いますが、知事の所見をお伺いしたいと思います。

 また、獣医師の仕事は広範囲なものがありますが、県の専門職として食肉衛生研究所や家畜保健衛生所などの業務に従事する獣医師の場合は、3Kと言われるほど厳しいものがあり、実態に合った待遇を検討すべきと思います。また、専門職から一般職への人事交流も行われていますが、そのたびに待遇が変わるなど不安定な要素もありますので、あわせて改善を図るべきと思いますが、知事の所見をお伺いします。

 

●知事答弁
 
 現在は薬剤師はだんだんとこれから増加してくるのではないかと思っています。ただやはりマッチングの問題があると思うのです。それで、薬剤師会のほうで、平成12年度から無料の職業紹介所をスタートさせておられますが、例えばこういうものを県のホームページの中にも取り込んでいくとか、いろいろとマッチングのお手伝いというものが重要になってくると思っています。詳細は医療政策監からお答え申し上げたいと思います。

 次に、獣医師についてですが、これはよく職場の皆さんとも話し合いをしながら、妥当な方向性を出して考えていきたいと思います。議員がおっしゃるように、場合によっては獣医師さんが現場の研究施設に行くこともあれば、それから私どもの本庁のほうで事務を行うこともあるわけですが、そのたびに給料が行ったり来たりするというのがどこまで許されるのかというのは、程度問題があるだろうと思います。難しいのは、片方で職に応じて給料を払わなければいけないということと、それから人に着目して物事を考えるべき部分とがあります。例えば私どもでいえば、医療職などは、事務のほうに入ろうが、それから現場にいようが、同じ給料表で上がっていくわけですが、獣医師さんはそういう扱いになっていないわけです。その辺はよく現場の実態も踏まえて考えていく必要があると思いますが、そのほかの諸手当もありますので、行財政改革局長からお話を申し上げたいと思います。

●行財政改革局長答弁
 
 獣医師については、人材確保の点あるいは勤務状況の点で幾つかの給与上の処遇改善等を実施しているところで、実際、平成18年度から初任給調整手当の支給を創設しています。これは本県を含めて、全国で18県しか支給していませんが、採用後6年に限って初任給調整手当を支給する制度を創設したほか、また全体としては縮小傾向にある特殊勤務手当についても、例えば死亡した家畜の解剖業務等に従事する場合などには、特殊勤務手当を拡充するといったような見直しを随時しているところです。

 また、議員御指摘のように、いわゆる異動して、給料表が処遇とは異なるというのがあります。例えば本庁の場合だと、獣医師さんの場合、行政職の給料表の適用がありますが、福祉保健局等においては、医療(二)職の適用になっており、これが例えば経験年数の換算の扱いだとか、そういったような扱いについて、国に準じた扱いをしている関係で、処遇等の変動等が生じているものです。この点については、専門職として採用した給与処遇をどこまで一貫して扱うかという問題、あるいは実際に担当する職という関係をどう考えるかというような2つの面で解決が必要です。ただ、知事も申し上げたように、例えば医師の場合には、そのまま行政分野、本庁に来ても、医療に一応適用するというような特例的な条項を定めているものがあるので、そういった状況だとか、あるいは現場の業務の状況等をよく検討して、人事委員会とも話をしながら処遇等を検討をしていきたいと考えています。

医療政策監答弁

 
 薬剤師については、全国的に医薬分業の進行に加えて、病院内のチーム医療の担い手としてその重要性が増している中、近年、薬学部の新設が進んでおり、平成16年には46の薬学部だったのが、平成20年には74の薬学部になり、定数も7,820から1万3,494と増加しています。このような中、近い将来、薬剤師の数が一層増加する見込みと考えています。

 一方、県内の状況ですが、薬局が平成16年に261だったのが、平成21年には270と若干増加をしている中で、県内の薬剤師数は782名から845名と年々増加しているところです。

 また、病院のほうへ薬剤師数、これは医師数も含めてですが、立入検査ということで人員等の医療法上の確認をしていますが、この不適が薬剤師について、平成18年は5件が平成21年は1件。また、調剤薬局について、処方せんの枚数にいては、薬剤師1名当たり1日平均40枚という基準がありますが、これを超えていたところに対して指導するとしていますが、平成18年には19件あったのが、平成21年には13件というような状況もあり、今々薬剤師の不足が急迫している状況にはないと考えています。

 ただ、平成18年度から薬剤師の養成が4年制から6年制になり、この平成22年度、23年度については新卒者がいないという状況もあり、一部不足感もあることも事実と承知しています。これにつき、先ほど知事のほうからも答弁申し上げましたが、薬剤師会のほうでは平成12年に無料職業紹介所を設置をしていますが、必ずしも十分に活用されていない状況にあるとも聞いておりますので、県も一緒になってPR等について協力していきたいと思っています。

 また、薬学6年制の教育に伴い、本年度から病院、薬局等での長期の実務実習が開始されています。こういう実習生の方々が県内で実習を受けることにより、将来、地元の薬局等に就業につながるとも考えていますので、こういう実習生の受け入れ体制についても薬剤師会と連携を図りながら、多くの皆さんに本県で実習してもらえることができないかどうか検討していきたいと考えています。

<獣医師及び薬剤師の育成確保について>bR

 
 獣医師の関係ですが、県の職員、獣医師の皆さんが自分の母校などに勧誘に行かれても、鳥取県は待遇がよくないという風評が広がっているというようなことを私は仄聞しています。ぜひともやはり鳥取県に帰ってきて獣医師をやるという獣医師を確保していただきたいと。それには待遇改善が一番だと思いますので、ぜひともそういう部分も実態に合った見直しをしていただきたいと思っています。

薬剤師ですが、県内の全体、トータル的な数は何とかなるのです。しかし、御存じのように、鳥取と米子には大きな病院がたくさんあります。したがって、薬剤師も偏在してしまっているのです。中部地区は、だからまさにエアポケットみたいな感じで少ないのです。ですから、薬剤師がきちんと確保できないというのが現状としてあるわけです。そういう部分をやはり県としてもしっかり調べて、どう対応するかを私は検討していただきたいということを要望しておきたいと思っています。

●知事答弁


 獣医師の職種についてですが、これはその風評がどういう風評なのか、ちょっと我々もよくわかりませんが、ぜひ実態を他県の処遇の状況もよく調査したり、民間の状況も見ながら、適切な人事管理の方針を出していきたいと思います。

 鳥取県は全国でも多分唯一だと思いますが、獣医出身の方が農水部長まで上り詰めておられるわけですから、──そうでもないのですか、ほかにもあるのですか──それぐらいですので、むしろ宣伝材料はあると思います。この夏も我々で計画していますが、日本獣医生命科学大学とか麻布大学といった首都圏の獣医養成校もあります。そうしたところにも卒業生がおりますので、出かけていってオリエンテーションといいますか勧誘といいますか、プレゼンテーションをさせていただこうということも計画したいと思っています。いずれにしても、鳥取というのは獣医さんにとっては活躍の場があるわけですから、人生をかけていただけるような、そういう魅力をこれからも発信していきたいと思います。

 また、あわせて薬剤師の問題について、これは実態をよく調べさせていただき、薬剤師会と協調しながら募集がうまく進むように施策をとっていきたいと思います。