平成22年6月定例会一般質問(平成22年6月14日)No.3

<鳥取環境大学の今後について>

 
 ことしの入学者数は定員の276人に対して151人と54.7%、全学生数は621人で、総定員数の51.2%にとどまっています。大学としても学科の見直し等の努力はされているものの、結果的には思うように成果が上がっていないのが現状と思われます。県議会でもそのありようがいろいろ議論されている中、知事も大学側の努力を強く要請されてきたわけですが、7月25日、鳥取環境大学の第一次中間報告として、学部、学科編成の基本構想がまとめられ、翌28日には鳥取環境大学の改革に向けた公立大学化の検討について、知事に要望が行われました。この中間報告を見る限り、経営改善に向けた努力や大学運営の改革はこれまでになく踏み込んだものになっています。

 平成11年に県議会でも鳥取環境大学の改革について大議論しました。少子化が進み、大学の合併論も出始めたころであり、私どもは生徒の確保が危惧される中で反対しましたが、多数決の中で全国的にも数少ない先進的な大学運営形態として、公設民営方式で華々しくスタートしました。当時反対したものの、民主的ルールの中で成立し、現に大学も存在しているわけですので、私自身、今後の大学のあり方論については真摯に向き合いたいと思っています。

 5月15日の新聞で、公立化是非について議論する検討委員会を設置、インターネットでは公立環境大学に向け協議へといった、あたかも公立化が決め手のような印象を与える報道がされています。そして、6月1日の企画県土警察常任委員会においては、今後の県の方向として、県と市が共同で外部の有識者をメンバーとした評価検討委員会を設置し、改革に向けた取り組みの検証を行うとともに、設置形態を含め大学のあり方を検討するといった報告がされています。今後、どう議論していこうと考えておられるのか、知事に真意をお伺いします。
 

●知事答弁

 
 環境大学について、平成11年6月の県議会は、この問題でヒートアップをしたわけです。伊藤保議員も参画されたわけですが、当時は賛成と反対とそれぞれ両論ありました。そもそもこういう大学をつくる必要があるのかどうかということで、当時語られていた農業公園とか、砂丘のところの博物館とか、色々な諸施設をあわせて、こうした公共投資のあり方をどうしようかという議論が沸騰したわけでます。

 ただ、鳥取環境大学に限っては、最終的には議会で議決されるという異例の展開になり、環境大学は必要であると、それは設置すべきであるということで、多数決でしたが定められたわけです。そのスキームづくりも公設民営化を柱として、議会のほうで特別の委員会もつくられて報告いただき、下敷きになりました。このことで、大学は出発したわけです。

 そうしたデモクラシーの中からこの大学のあり方は問われ続けたということの意義は大変に重いと思っています。ただ、その後の展開を見ていると、公設民営化で出発した鳥取環境大学、最初の入学年などは非常に活況を呈して、全国からも応募がありましたし、県内の子供たちも入学試験の門戸をたたいたという状況がありました。定数をはるかに上回る入学とかになっていくわけですが、だんだんと下降線をたどっていったわけです。

 このことをどういうふうにとらえるかということだと思うのです。簡単に言えば、非常に単純化して言えば、鳥取環境大学は、子どもさん、入学しようという高校生あるいはその親御さん、保護者の方々、また社会全体からの必要度が想定したほど得られていないという現状ではないかと思います。

 ですから、これをどう考えるかということですが、再々代表質問を初めとしてこの場でも議論しましたが、私としては、共同の経営者である鳥取市と検討委員会を持ち、この問題について早急な検討を行いたいと思っています。幾つかクリアしなければいけない課題があると思っていました。

 1つは、学科の再編などです。子ども達が入学してみたいと、将来のためにここで勉強してみたいと、県内、それから県外の子どもを含めて、思ってもらえるような大学に変わることがまず一つだと思います。

 それから、持続可能な経営ということが求められるわけで、今は過去の貯金がありますから、それで当面閉鎖されるということになる状況ではありませんが、ただ、それもいずれは底をつくということになってきています。ですから、持続可能な経営に向けた経営改革の努力が必要だということだと思います。

 この問題とオーバーラップして、公立化が必要ではないかという議論も沸き上がってきています。5月15日のお話がありましたが、鳥取の市長と話し合いをしましたが、鳥取の市長はマニフェストで書いて、鳥取環境大学を公立化するということをうたってきておるわけです。それも選挙の審判を受けて、その後上がってきておるものですから、その公立化という要望が少なからず評価されるべきものであることは否めないところがあると思います。

 ただ、その議論だけでこれから検討しようということではなくて、幅広い視野で早急な検討を行うことが私は必要ではないかと市長とは交渉をしました。ですから、これから設けられる検討委員会の中では、公立化というのが、鳥取市側は眼目として上げておられるわけですが、私どもとしては、設置の形態のあり方も含めて、持続可能な経営ができるかどうか、色々な角度からこの場で検討してみたいということです。

 ただ、子ども達の募集もありますので、生徒募集に影響を与えないという意味で、極めて急いで検討しなければいけないと思っています。ですから、委員に就任していただく皆様方には、精力的に審議していただき、できるだけ早く進めていただきたいと考えています。

 それで、大学側との話し合いの中で私のほうから申し上げたのは、先般、経営改革を行うということでお話があり、一応9,100万円というコストカットを持ってきたわけです。これは評価できると率直に思います。ただ、それでも現金ベースで、キャッシュフローベースでの運転ができるようなことになっていません。それはどうやって解決するのですかと。どういうビジョンがあるのですかと。数字をきちんと出して示してくださいということを大学側に今申し上げています。

 こうしたことに対するお答えもいただきながら、それからなおかつ我々のほうでも、我々独自の試算を置いたり、検討を進めながら、委員会のほうでも議論してもらうという考え方で向かっていきたいと思っています。

<鳥取環境大学の今後について>bQ

 
 私は、今の段階で公立化ありきの議論は早過ぎると思っています。大学側の今日までの経営の総括と改革に向けた取り組みの全容ができていない中で、公立にすれば、授業料が安くなり入学者がふえるという論理は余りにも短絡的で危険過ぎると思うのです。

 設立当時の建学精神に間違いがなかったのか、学部が社会のニーズに合っていたのか、県内の進学校と言われる高校生がなぜ受験しないのか、大学のPR不足ではないのか、まだまだたくさんのことをしっかり分析する必要があると思います。また同時に、将来的な保証のない交付税だけを頼りにした経営でなく、真に自立できる大学の姿をゼロベースで描くべきと思うのです。

 私たち県議会としても、100億円もの県民の税金の投入を最終決定して設立した大学ですので、学校関係者のみならず県議会においても、ここはしっかり議論すべき課題であると思っています。

 私が心配するのは、今、県外の国立の大学でさえ県を越えて合併してはどうかという議論のあるところです。極論になるかもしれませんが、受験生の心をつかみ、その夢を実現する大学でなければ、生徒は集まらないと思います。

 私は、暗に公立化のための議論でなく、有名私立大学との提携、連携なども選択肢の視野に入れ、大いに議論を進めるべきと思いますが、知事の所見をお伺いします。

●知事答弁
 
 先ほど申し上げたような方向で、これから急いで検討を進めたいと考えていますが、これまで私も議場で、公立化ありきから検討すべきではないということを重ねて申し上げてきました。その際の条件として、経営がこれからどういうふうに持続可能な形でなされていき得るのか、それから、学生たちが魅力を感じる大学にどういうふうに生まれ変わらせるのか、こうしたことも大学側でまずは提示すべきだということを申し上げてきました。

 今回は、先方からそれに対する答えが返ってきたものですから、やはり答えが返ってきた以上は、それを下敷きにした次の検討段階に入らなければならないだろうと思っています。当然ながらほかの経営形態もあり得るのではないかというのも検討委員会の中で議論していただきたいと思っていますし、他大学との連携、提携ということも選択肢の中に入れた検討を急いでやっていただく必要があるだろうと思っております。この他大学との連携、提携は、これまでもこの議場で議論が提起されて、私自身もそうですが、大学側も、水面下で色々な大学と提携、連携の可能性について、これまでも動いてきています。ただ、残念ながら今までのところ、それについて好意的によしわかったと言ってくれる大学があるわけではありません。ただ、これから夏の間、もう一度色々とそうした他の私学との連携、提携の可能性が本当にあるかどうか、きちんと検討委員会でも調べていただくことは、私は必要ではないかと思っています。

 そうした色々な選択肢の中から、今回公立化やむを得なしというのが大学側の考え方で要望が上がってきているものですから、それは正面から受けとめて検討する必要があると思っています。

<鳥取環境大学の今後について>bR

 
 県立になれば交付税措置があるというものの、定員がフルに集まっての話ですので、生徒が集まらなければ、今度は県がその穴埋めをしなければならないということになります。設立当時の議論として、開学してからは県は負担しなくてもよいということで開学したわけですので、新たに負担が想定されるということになれば、これまでの延長の議論ではなく、新たな議論が私は求められてくると思いますので、議員の皆さん方もしっかり色々な部分で議論していただきたいと思います。次に初田議員がより深い議論をしたいということですので、バトンタッチをすることで私の質問を終わりたいと思います。