平成27年11月定例会一般質問(平成27年12月4日)No.2

<畜産振興について>

 今、我が県は、現場後代検定で歴代最高の、要するにBMS、霜ふりの入りぐあいを示す指標と、それからロース芯面積で日本一の成績をおさめた種雄牛、百合白清2が26年9月に認定され、さらに12月には、その兄牛である白鵬85の3が百合白清2を上回る成績で現場後代検定が終了されたということで、事実上、我が県は全国1位、2位の種雄牛を所有することになり、再来年度、宮城県で開催される全国和牛能力共進会での活躍に大きな期待がされるとともに、今まさに全国から熱い熱い注目を浴びていますが、先日、白鵬85の3、百合白清2に次ぐ第3の種雄牛として、百合福久が県基幹種雄牛として認定されたと報道されました。2度あることが3度もあるかと半信半疑の思いで読みましたが、うれしい限りです。和牛の振興に取り組んでいる他県からすれば、まさに喉から手が出るほどの種雄牛を、しかも全国1、2、3位のすぐれた種雄牛を鳥取県が保有していることになりました。改めて知事の認識をお伺いしたいと思います。
 当面は、再来年度、宮城県で開催される全国和牛能力共進会でしっかり結果が残せるかどうかが鳥取県の和牛振興の大きな鍵になると思いますので、それまでは、しっかりとした飼育管理が求められるものと思います。そうした背景の中で、ことしの2月県議会の代表質問で、これらの種雄牛が飼育されている畜産試験場の現状について報告し、必要な整備は最低限すべきと知事と議論したところですが、その後の取り組み状況について全く見えませんが、その取り組みはどのようになっているのか、平井知事にお伺いします。
 第14回全日本ホルスタイン共進会が10月23日から北海道・安平町で開催され、県議会からも斉木議長を初め7人の議員が視察と激励に訪れました。鳥取県からも8部門に9頭が出品され、前々回の岡山大会を上回る成績をと出品関係者はチーム鳥取で大会に臨まれましたが、結果としては、北海道の出品枠が拡大される中、北海道のひとり舞台で、思うような成績を上げることはできませんでした。鳥取を出て帰るまでの2週間に及ぶこの大会、出品された酪農家の皆さんの牛舎に寝泊まりしながら取り組みには胸を打たれるものがありました。県として、今大会の総括と次の大会に向けての取り組みをどう構築されるのか、平井知事にお伺いします。
 また、このたびの大会の10部経産の部に倉吉農高から生徒たちが日々手入れをしながら飼育している乳牛も出品されました。結果は2等に入賞したものの、高校生たちの努力が結果として結びつきませんでしたが、すばらしい貴重な経験をされたと思いました。教育長に所見をお伺いします。
 
●知事答弁

 
 船上小学校のある琴浦に子牛の市場があります。きのうも市が立ち、その結果として、ことしの平均、もうこれでことしは終わりですが、ことしの子牛の平均が71万 7,800円ぐらいになりました。物すごく高くなっています。これは全国の注目が集まって、全国の皆様が赤碕に来て牛を買うということになってきているからです。その背景には、これまで数年かけて議会の皆さんとも話し合い、また、生産現場の方々とも話し合ってレベルアップをしてきた畜産の振興策があったと思います。その結実が、やはり琴浦で育った「みどり」という母牛を持つ百合白清2、それから白鵬85の3の造成で、これらは、脂肪交雑と言いますが、おいしいいい牛のレベルでいうと、 9.2、 9.6と歴代1位、2位で全国トップ、そして2番目ということになりました。また、このたびは福安福という、これは琴浦から山を隔てた向こう側の伯耆町の前田さんのところの牛ですが、この牛に百合茂、これは百合白清2のお父さんでもありますが、これをかけ合わせてつくられた新しい牛、百合福久が3番目の検定成績になりました。実はロース芯面積と言われるようなこととか、そうした他の指標を見ると、この前の2つの牛を上回る部分もあったりして、この3頭で鳥取県が全国のトップレベルを独占したという形になりました。このような形で時代が変わり始めています。ですからこれに見合う畜産のブランド化、振興策をさらに一層進めていく必要があろうかと思います。
 そういう意味で、畜産試験場ですが、これについて改善すべき点はないか、点検して対策をとるようにと伊藤議員から御指摘があり、その後、現場でよく精査もしてきています。それで、今まず急がなければならないものから順番にやらなければいけないわけですが、急がなくてはいけないのは、1つは、衛生状態を保つために、いい牛ができている鳥取ですから、畜産試験場を見学する人などは外部の人もいるわけで、そうした消毒対策の施設、これが1つ重要なポイントになるということで、これは更新、レベルアップが必要であろうということです。また、農機具庫が老朽化の関係で、これも更新が必要だろうと判断をしていますし、それから種雄牛舎からパドックに出ていくところ、そこのゲート施設、こうしたところも洗い出した上では緊急性があるということになりました。一遍に畜産試験場をまるごと建てかえるというわけにはなかなかならないので、そういう急がれる施設から順次手をつけていきたいと考えています。
 次に、全日本ホルスタイン共進会のお話がありました。
 これについては、7人の県議の皆様も行かれたということで、本当に感謝を申し上げたいと思います。私自身も、行く前の壮行会に立ち会い、実に若い畜産業者が張り切っておられたのは印象的で、また、高校でも倉吉農高校が出ていくということで先生方も張り切っておられ、生徒さんの様子も伝わってきました。いい見聞を広めるチャンスだと思いますし、みずからチャレンジするいいチャンスだったと思います。結果としては、残念ながら、あのときも口々に皆さん1等賞狙いを言っていましたが、2等賞にとどまったということで、課題が残る結果ではなかったかと思いますが、ただ、その大会をこなすに当たり、20時間に及ぶ輸送を献身的に行われた関係者の方や寝食をともにされて北海道安平で過ごされた皆様方、そうした御努力に本当に頭が下がる思いです。
 そこで、例えばリードの技術、調教だとか、牛の育て方、例えば乳房の形だとか体の大きさだとか、そうしたことで見聞を広めてさらに上を目指そうという決意も、また新たにされただろうと思います。ぜひ、5年後にまた大会はやってきますので、それを目指していいチャレンジをしていただけるように私たちも協力していかなければいけないと思います。和牛の場合とちょっと違いますのは、大山乳業さんが基本的にはみんなかかわっておられて、大山乳業さんのイニシアチブもあるわけですが、県としても、例えば畜産試験場で絡めて応援できることもたくさんあると思いますし、もちろんいろいろなスタッフ等々の環境づくり、そうした面でもお手伝いができるかと思います。
 実は、最近、鳥取県の和牛のレベルが上がってきたのは、悔しい思いが先行したことがあったと思います。鳥取県で鳥取全共を開こうと、平成19年にそれを実施したわけですが、その5年前に岐阜で全共がありました。ここで、次は鳥取だということで関係者も張り切って出ていかれたわけですが、結果は余りふるわなかったわけで、過去の状況からすると、一番悪い結果だったという感じもありました。それは関係者が再起するきっかけにもなり、以来、産地がばらばらではなくて皆でつながっていこう、若い方々も連帯しよう、それから計画交配、上手に、頭数は少ないわけですから、その頭数が少ない中で結果を出すには最善の交配を行っていく、こういうことも必要だろうということなど、意欲的に進めていったわけです。また、県外からの牛の導入などもやりました。鳥取全共で岐阜全共を上回る結果になりましたが、まだ課題も多かった。では、次の長崎に向けて頑張ろうと。さらにそれがレベルアップし、今度は宮城全共に向けてさらなるレベルアップをし、こういうことの積み重ねの中で優良な種雄牛が造成されてきているという現状があります。
 ですからホルスタインにおいても、今回の結果は結果として、そこの足らざるところを今度は補っていけば、同じように上を目指せるようになるはずです。例えば優良な雌牛に、それから最適な雄牛をかけ合わせる。性判別精子を活用しながら、そうした造成を科学的に専門的に行っていく、このようなことなど、従来よりも踏み込んだ手法を取り入れていくことで、ホルスタインにおいても全国的な中で評価がなお一層高まるようにしたらいいと思います。大山乳業自体は、おいしい安全な牛乳を提供する非常に全国的にまれな農協として注目され、単価的にも高く取引されるぐらいですから、そうした情熱と技術を持ってすれば、次の大会は今回よりも前へ向かっていけるものだと信じています。 

●教育長答弁


 このたびの共進会には、後継者育成という視点から新たに高校特別枠というのが新設され、全国26校から32頭の乳牛が出品されたわけです。本県からも倉吉農業高校のヒースクリフパーフェクションゴールドシド号を出品していますが、この牛は、実は高校特別枠として県内で選定した牛ではなく、琴浦町で行われた県の共進会で第6区、これは経産牛の3歳から4歳の部門ですが、ここでチャンピオンとなった、いわば県代表としてこの大会に臨んだわけですが、残念ながら2等という評価をいただいたわけです。
 御存じのとおり、倉吉農業高校は県内唯一の畜産部門を持った高等学校ということで、本県の和牛、畜産の振興にとって重要な役割を果たしている学校です。生徒は、日々家畜などと向き合いながら学んでいるところですが、生き物を育てるということは動物の命を預かるということで、生半可な気持ちでやることはできません。24時間、 365日そのことを気にしながら生活をしており、生物科の生徒たちは1年から寮に入って、毎朝5時から餌やりとか牛舎の清掃など、心を込めた飼育を行っているところです。今回の共進会に参加した生徒の中には、将来、酪農の仕事につきたいと考えている生徒もいたわけで、結果は2等ということでしたが、このたびプロの酪農家にまじって自分の育てた牛を出品したということで、非常に大きな自信につながったと聞いているところですし、また、今回の共進会を通じて出品に際してお世話いただいた大山乳業農業組合の方々だとかプロの酪農家の皆さん、そして他校の仲間や先生方との出会いなどから、生徒自身も成長をみずから感じ取っているということで、これが何よりの成果であったかと思います。
 近年、倉吉農業高校は、地域と連携しながら社会の変化に対応できる企画力とか実践力の育成に取り組んでいるところで、今般も生徒が栽培したミルキーウィーンというのが、全国農業高校のお米甲子園というのがありますが、ここで日本一の最高金賞を受賞するということなどもあり、畜産分野だけでなく、栽培の分野でも全国レベルの品質を目指した地道な学習を進めているところです。教育委員会としても、生徒に成長を感じる場面を提供できるよう、今後とも学校の取り組みをしっかりとサポートしていきたいと考えているところです。
 

<畜産振興について>bQ

 このたびの大会はロングランのために、先ほど言ったように、2週間、大会前に出品牛が風邪を引き、発熱し、しかも出品者も風邪を引かれ、舞台裏は本当に大変でした。同行の獣医がいないため、北海道の獣医にお世話になり、大事には至りませんでした。一昨年の長崎県佐世保市で開催された和牛共進会でも、移動距離が長いため出品牛の1頭が体調を崩しましたが、獣医の対応が十分ではありませんでした。私は現場におりましたが、今回、今後の課題として、同伴する獣医の対応のあり方を含めて改めて私は検討すべきと思いますが、所見をお伺いしたいと思います。
 この大会、倉吉農高の生徒が参加していました。本当に牛舎で寝泊まりしていますから、牛がおしっことかうんちをするときには、もう尻尾を上げたらすぐバケツを持っていく、それでバケツで受けとめる、まさにそこまでしながら子ども達は大会に参加していました。京都府立の農芸高校は全日本ホルスタイン共進会の常連校ですが、素人の私が見てもすごい乳牛でした。倉吉農高にも全国に出しても引けをとらない素牛、鳥取県のチャンピオン牛と言われましたが、鳥取県はまだ成績を見ても、この結果だと思うのです。全国に出しても取り組める、やはりそういう牛を導入すべきだと思います。やはり生徒さんたちの飼育管理の意識も高まるし、より高いレベルでの、いわゆる牛を見る力、そして技術、そういうものを高めていく、それが結果的には卒業後に大きく役立つと思いますので、ぜひとも倉吉農高には全国に出しても引けをとらない、そんな素牛を導入すべきだと思いますが、教育長の所見をお伺いしたいと思います。

●知事答弁
  
 共進会での獣医の同伴ですが、これは、獣医の方ももちろんなりわいもあって非常に難しさもあるわけですが、議員のお話を伺っていて思い起こしましたが、長崎全共のときも大変な御迷惑をおかけした出品者の方もいらっしゃったわけで、そういう意味でやはり獣医の確保は重要だと思います。今回は北海道に助けていただいたようなものですが、次、今度は宮城の和牛の全共です。これは2年後になりますが、早くから、ちょっと長期化になるので、関係者とよく準備をしなければいけないと思いますので、対策を急ぎたいと思います。
●教育長答弁
 
 京都府の農芸高校は3頭このたび出品されたわけですが、そのうちの1頭が優等賞ということで、その牛がすばらしい牛だったということを私も聞き及んでいますが、共進会出品牛のつくり方としては、議員からも御提案のあった素牛を直接買ってくるというやり方、これは結構お金がかかるもので、いい牛になると 200万円からするということを聞いていますが、2つ目が、人工授精で子牛を出産してそれを育てていくというやり方、これはいい牛でも5万円ぐらいでもできるということです。それから受精卵移植で代理出産というやり方もあるそうで、これはいい牛になると50万円ぐらいかかるということで、この3つの方法があるわけですが、倉吉農業高校は予算のことがあったのかもしれませんが、人工授精、一番安いやり方でやったわけですが、これは実は値段だけの話ではなく、学校教育として、生徒が出産段階から飼育にかかわっていくと、そのことで酪農への高い意識を育もうという、そういう狙いもあるわけです。
 京都の農芸高校の指導者に直截に秘訣を実は聞いていまして、なかなか敵に手のうちを見せないということもあるのかもしれませんが、重要なのは、生徒を育てることや生徒や担当教員の牛を見る目を養うこと、これが一番重要なのだということで、施設や餌はいいにこしたことはない、素牛にお金をかければ改善は早いかもしれないが、農業教育の本質からは、そういうことではなく、人を育て、見る目を養うということが大切なのだと、我々はそれを大事にしているというようなお話もあったわけです。倉吉農業高校は、先ほどお話ししたように、お米の分野でも教師陣として高い教育力を持っているわけで、畜産分野でもぜひ全国レベルの品質を目指して、本県の畜産業をリードするような、そうした人材も育てていけるのではないかと期待しております。次回の共進会は5年後の平成32年ということになりますが、これに向けては学校ともよく相談の上、御提案いただいたことも含め、教育効果ということも考えながら出品牛の育成に取り組んでいきたいと考えています。

<畜産振興について>bR


 畜産王国と言われている鹿児島や宮崎で、もしこの鳥取県のような種雄牛が誕生したとするなら、防疫体制がきちんと整備された施設が即座に整備され、厳戒態勢で飼育されていると想像します。

 鳥取県の畜産試験場も手づくりですが防除体制はあります。ありますが、本当に簡易なものです。あれで悪いとは言いませんが、逆に言うと、いいのですかという部分があるのです。
 ところが、そういうこともあわせて、県の試験場のことについて2月県議会でも申し上げましたが、知事も何度か視察されて、よく御存じだと思っています。全国1、2、3位の種雄牛を抱える畜産試験場としては余りにもお粗末な現状ではないかという思いも私は持っています。
 例えば白鵬などでも銅像を建ててもいいような、やはり全国でもまれな和牛のスーパー種雄牛なのです。何か、出来た出来たと、1、2、3できましたねという喜びだけしか私は感じられないというか。
 スーパー種雄牛を持ったことは、もちろん高い誇りとあわせて、やはりもっと大きな責任が伴うと私は思うのです。持ったからには。
 議会で議論しても、畜産試験場の取り組みについて全く報告もないし、スピード感もない。私は本当に、何を考えているのか、大きないら立ちを感じます。はっきり言います。優秀な種雄牛を持った責任と危機感が本当に極めて希薄であると私は思っています。
 先ほど言われましたが、時代が変わっていくのです。あわせて職員も変わっていかなければならないでしょう、担当部局が変わらなければならないのです。その意識が非常に低い。
 ぜひとも知事に所見をお伺いして、これからの対応についての改めての感想をお伺いしたいと思います。

●知事答弁

 おっしゃることはごもっともで、これは私も実は職員にも言っているのですが、今までのような畜産行政とは変わっていく。ですから、例えばブランド戦略。今まではとにかく売れればいいだったかもしれませんが、きぬむすめにしてもそうですが、量を売るだけが能ではなく、高く売れ、そしてその評価を得ると。しかも海外まで視野に入れれば、やり方が変わってくるわけでます。
 また、技術もどんどんと変わっていき、受精卵だとか、あるいは性判別精子だとか、そうしたことの対応があり、我々のほうが全国的に見てビッグな存在の畜産研究施設になれば、当然ながら、さっきちょっと申し上げましたが、防疫体制のところは弱みがありまして、これはある程度新しい考え方のものを導入しなければならない。そういうことで今、畜産試験場のほうも順次改修をしていきたいと思いますし、議員からも御指摘もいただきながら、改善すべきところを改善してまいきたいと思います。
 そんなような形で鳥取県としてもこれからの畜産振興、今回、ホルスタインの大会もありましたが、まだまだ上を目指して頑張らなければいけないところがあります。ぜひ議員のいろいろと御指摘もいただきながら、さまざまな品種、それぞれの和牛や、あるいは乳牛の改良、それから販売戦略、これを上手にパッケージとしてポートフォリオを組んでいくことにより、本当の意味の豊かな鳥取のふるさとの農業の姿が出てくると思います。
 鳥取県は幸いなことに、米と、それから園芸作物と、それから畜産のバランスが3分の1ずつの生産高で、バランスのよいところです。鳥取から農業を変えるためにも意識改革を県庁職員一丸となって進め、施設面でもグレードを上げていきたいと思います。

<畜産振興について>bS


 ぜひとも、全国大会に参加された生徒の皆さん、本当に結果も伴うといいますか、そういう形の対応を検討していただきたいということをお願いしたいと思います。