平成27年6月定例会一般質問(平成27年6月17日)No.2

<ふるさと納税について>
 平成20年度から始まったこのふるさと納税制度。当初は、応援したい自治体に住民税の1割までの金額を寄附した場合、制度当初の個人負担額は 5,000 円でしたが、平成23年に制度充実の一環として個人負担額も 2,000円に引き下げられ、 2,000円を超える部分について個人住民税と所得税から税額控除を受けることができる制度でしたが、今年度から寄附できる上限が2割まで引き上げられた上、諸手続がより簡素になったため、ふるさと納税を活用される人がふえることも想定されるため、全国の自治体の関心もより高くなってきました。制度の初年度であった平成20年度は県下で 625件、 7,782万円であった寄附額も、PRの成果もあり、昨年度は15万 1,156件、金額も21億 6,213万円と、鳥取県は全国一ふるさと納税が多い県になりました。
 日本一へと押し上げた職員の皆さんの御努力と、知事の期待どおりに取り組みが進められていることに対し敬意を表しますが、この制度が成立する直前の平成20年3月議会で、知事とこの制度について議論したところです。が、しかし、時がたち、寄附金の成果が上がっても、いまだ私自身、このふるさと納税制度について理解と納得ができないものがあるので、改めて知事の認識についてお伺いしたいと思います。
●知事答弁

 
 以前、この制度設計に当たり、伊藤議員とも議場で協議したのは、要は、一つは国と地方との財政問題があるということでした。実は、私ども若手の知事でこのふるさと納税の制度を提案させていただいたとき、6割は国税を使って、4割は地方税にはね返るような、そういうバックのシステムをつくったふるさと納税制度を提案しました。ただ、なかなか政府内でそのとおりになりませんで、地方税のほうのウエート、住民税所得割のほうで対処するというのが主流になりました。ただ、現行の制度でも一部入ったところで、それは寄附額に対する所得控除による所得税の免除の部分、つまり例えば税率が2割の人であれば、10万円寄附したとすると、それに対して2割の所得税がかかるわけで、10万円の分を総所得から差し引くと、厳密には 2,000円引くという作業がありますが、その10万円を差し引く、それに税率を掛ける。従って、2割の税率の人なら2万円相当の部分というのは、国税のほうがいわば縮減して、その分がふるさと納税による寄附先のほうへ行くということに制度設計としてはなっています。ですから、一部ここでもいろいろ議論をしたようなことも入っている面もあって、国税のほうに汗をかいてもらうということだと思います。
 主たる目的は、日本という国に寄附文化をもたらそうということがあったと思います。日本と違い欧米のほうは所得の再分配機能を政府に求めるよりも、自分たち、つまり高所得者が低所得者に対してチャリティーを行う、そういうような形での再分配の考え方が結構ウエートが大きくて、寄附文化というものがあるわけです。しかし、我が国にはそういう寄附文化がなかったわけですが、恐らくこのふるさと納税の制度がそういう寄附文化の端緒になったと思います。雑誌なども含めて、こういう寄附を称揚する、勧めるような話題が随分出ており、現に寄附額も膨らんできているということです。
 また、副次的な効果として、当然ながら地方財政のほうに一定程度移転をするということ、それから主として私どもが養育して送り出した都会地のほうから、その人材が育って、そちらのほうからこちらに返ってくる財源、そういうのが想定の基本ですので、そういう意味でいわば所得の偏在是正というものにも資する面もあるのだと思います。
 それとあわせて、鳥取県が結構これで評判になったわけですが、境港市が先鞭をつけられたお礼の品という制度で、お礼の気持ちをある程度地域の特産品で考えようと。境港の場合、企業さんにも汗をかいてもらって、通常よりはサービスした形で返す。それと同じ仕組みを県でも取り入れて、こうしたことが市町村にも広がったところでした。何が起こったかというと、地方の特産品振興に役立っている面があって、鳥取県でも今もサイト上出ているのは、大山のハムとか、それから奥日野のコシヒカリとか、それから和牛、またベニズワイガニ。ベニズワイガニなど、これがなければ多分贈られることはなかったと思いますが、そういうものが結構出るわけです。こうやって特産品振興につながり、大山Gビールはラインの増設まで決めるというぐらいに発展してきています。琴浦町も、1億 8,000万円昨シーズンは寄附を集めて注目されたわけですが、地域の特産品振興にも役立ったところでした。

<ふるさと納税について>bQ
 この制度が、特産品振興に貢献している点については、私も大変理解しており、ふるさと納税をPRされて寄附を集められることに対して、私は異論を唱えているわけではないのです。平井知事は、以前の私との議論の中で、このふるさと納税に高い評価をされていましたが、私はどうしてもこの制度自体に違和感を覚えており、疑念を払拭することができないままです。
 確かに都市部に集中している税を地方に分散する趣旨については理解できます。大変よくわかります。確かに税源移譲された穴埋めに交付税が措置されることで、理論的には国から地方への交付税措置という形での税源移譲が結果的には起きていることも理解します。間接的に税源移譲の対象がなぜ個人住民税なのか。本来、国民の個々の意識を持って国から地方へ税源移譲を図ろうとするならば、個人住民税でなく所得税ではなぜだめなのか。所得税のほうがわかりやすくていいのではないかと私は思いますが、改めて知事の所見をお伺いします。私の考えが間違っているかもしれませんが、知事のお考えをお尋ねしたいと思います。 
●知事答弁
 
 この議場でもやりとりがあったとおり、やはり国のほうが本来税源移転として地方のほうに出すのがすっきりわかりやすいと思います。そういう意味で、我々も本来提案したのは、所得税のほうにウエートを置くような、そういうふるさと納税であったわけですが、なかなか財務省と総務省のやりとりの中で圧縮されたということではないかと推察しています。
 これからも、こうした地方の標準的な行政経費を賄うような財源のあり方について、これはなかなか是正が行き届かない部分が残されています。さまざまな形でそうした税財源の確保、これを国のほうに訴えかけていきたいと思います。

<ふるさと納税について>bR

 
 ふるさと納税制度にやはりどうしても違和感を覚えるので、もう1点議論したいと思います。
 この寄附がポケットマネーでそれぞれの思いのある自治体に寄附されるということで、そのお礼としてそれぞれの地域の特産品をどんどんお礼として送るということには、私は何ら違和感はないと思っています。大いに奨励します。しかし、国民の義務として納めた税金を右から左に動かすことで、しかも 2,000円というわずかの負担で全国各地のおいしい地域の特産品がいただける、しかも所得が多くあり、個人住民税を多く納めている人ほどその恩恵にあずかれる。御丁寧にことしから、その恩恵にあずかれる範囲が広げられました。国民の義務として税の公平公正の観点、さらには納めていただいた個人住民税で市町村は行政サービスを住民の皆さんに提供しているわけですから、税制度としての基本的な理念を見失うのではないかと思います。知事の所見を改めてお伺いしたいと思います。

●知事答弁


 議員のおっしゃることも、もっともなところがあります。ですから、過度の贈り物競争にならないような工夫が一つは必要であろうかと思います。
 本県でも、もともとのやり方として、大体2割程度ないし多くても3割以内ぐらいに実はおさめております。その辺は我々なりの節度というものを考えているわけで、実は国のほうもこの辺は通達を最近出すようになりました。それは例えば、金券を返すとか、まさにお金が返ってくるような形をやめてくれとか、それから最近不動産をあげますという自治体もあらわれましたが、そういうような高額きわまりないものはやめるべきだとか、そういう節度を求めておられます。
 ただ、国もそうしたことを全部禁止するという趣旨でもないようで、本県がやっているような一定の節度が必要かなと思います。この辺はふるさと納税を活用して税源涵養、財源涵養をしているという、要は一般には厳しい財政状況の自治体にとっては貴重な手法で、みずからの首を絞めるようなことにならないように、我々なりの節度を自治体のほうでも持つべきだと思います。
ふるさと納税が青天井で、それがお金持ちの優遇というようなお話もありましたが、現実には住民税の10%ないし20%で天井がかかります。ですから基本住民税の税率は10%ですから、実は50万円だ、 100万円だといった高額寄附をされる方がいらっしゃいますが、それで全部税金が返ってくるわけでも恐らくないと思います。そういう中で、むしろ先ほど申したような海外におけるチャリティーの精神、所得の再分配機能的なこと、それから地域の振興など、そうした地域の課題に自分も貢献していくことで、それだけの所得を得ている人たちが還元していくという、そういう寄附文化の醸成という意味で、むしろそちらの高額のほうはあるというのが、恐らく実相に合っていると思います。
 いずれにしても、我々の課題として地域の生活者の生活を守ること、それをしっかりと保障するようなことが地方行政の原点でしょうから、これからもその原点は見失うことがないようにさせていただきたいと思います。