私は、議案第9号鳥取県情報公開条例の一部改正に賛成し、総務警察常任委員会修正案に反対する立場から討論を行います。
当初、知事から提案があった条例改正案は、学級が個人に次ぐ最小の集団であると言う基本的な考え方で、学級ごとの集計結果を非開示とするものでした。しかし、この非開示の範囲をさらに10人以下の小規模な学級に限定しようとする修正案は、いったい何を求めるものなのか、私には理解できません。
そもそも、県教委が実施した基礎学力調査の目的は何であったのか、私は、あえて一般質問の中でそのことを確認いたしました。調査の目的という原点に立ち返ってこの問題を考えてみる必要があると思うのであります。「県内の小・中学校の児童生徒の基礎学力の実態を把握し、調査結果を分析して各学校における学習指導の改善と今後の教育施策の充実を図ること。」要は、実態をしっかり把握した上で、基礎学力の定着や一層の学力向上に向けた有効な取り組みを考えること、これが基礎学力調査の目的であります。この目的について異論を唱える方は、誰もいないと思いますし、むしろこのような調査が、なぜ今まで行われなかったのか、「県独自の初めての調査」という教育長の答弁に驚かれた方もあったのではないかと思います。私たちが考えなければならないこと、それは、全県的な立場から学力向上に向けた施策や取組を考えること、それが県の役割であり、県教委の使命であると思います。
今、議論の中心になっている学級あるいは学校といったレベルでの取り組みの責任者は誰なのか、言うまでもなく小・中学校を設置運営している市町村であります。
義務教育の実施責任者である市町村の取り組みなくしては、小・中学校における学力向上の取り組みは、その目的を達成し得ないのであります。
自民党の鉄永議員も一般質問の中で指摘されたように、「県教委が手取り足取りするのではなく、市町村の教育委員会がそれぞれの独自性を持って、自分たちが知恵を出し合って取り組むこと」と言われましたが、このことが基本だと、私も思います。
だからこそ、県が細かな情報まで出すことは、市町村の自主的取組、自主性を育てることに逆行するのではないかと思うのです。
今回の基礎学力調査をきっかけとして、地域への説明責任も果たしながら、それぞれの市町村教委が学校教育の充実、子どもたちの学力向上にどう取り組むのか、まさに試金石だと思います。その試金石を活かすためにも、県が出しゃばらないで、市町村教委が地域の実情に応じて必要な配慮をしながら、場合によっては学校ごとの状況なども示しながら、地域に対する説明責任を果たすこと、あるいは学校に具体的な課題を突きつけて改善を迫ること、このように主体性のある市町村教委の姿勢が、求められており、必要であると思います。
情報公開制度の在り方という点に視点を戻して考えてみても、やはり、基礎学力調査の目的がいかに達成できるかという観点を抜きにして、この問題は考えられないのだと思います。
要はバランスの問題もありますが、情報公開という旗印のもとで、大人たちの一方的な考え方で、子どもたちへの影響を無視して基礎学力調査の結果を公開する。その結果、本当に学力向上という目的が達成されるのかどうか、私は大いに疑問だと思います。
情報公開の非開示請求基準を10人以下の学級というところで線引きすることにより、学級ごとにあるいは学校ごとに子どもたちが比較される、本来の目的であった子どもたち一人一人の基礎学力の状況ではなく、学級や学校といった集団での比較で評価が下され、その評価により集団が序列化され、評価の方により多くの注目が集まる結果になりはしないか。そのことの是非をどう考えるのかがこの問題の根底にあるように思います。
冒頭で、「修正案はいったい何を求めるものなのか分からない」と申し上げましたが、学校別や学級別といった細かな集計結果まで、全県に渡って公開を求められる方々はいったい何を求めようとされているのか。情報公開の名の下に、全ての学校ごとの結果を比較して、その中から何を見つけようとされるのでしょうか。間違っても、全県的な学校の相対的比較や単なる評価の中から、真の学力向上の取り組みが生まれてくるとは思えません。他の学校との比較に一喜一憂することに何の意味もないと分かっていても、全県のランキング的な評価が出れば、学校や子どもたちは必然的に巻き込まれてしまうと思うところであります。
その結果、こんなことなら学力調査なんてしない方が良かった。だからこそ、これまでこのような学力調査ができなかったのではないか。
このように考えるとき、その性格上、極めて配慮を要する情報である学力調査の結果については、情報公開を原則としながら、個人に次ぐ最小の集団である学級の結果を非開示として扱うこと。言い換えれば、考えられる選択肢の中で、最も狭い範囲に限定して非開示とする知事提案の情報公開条例の改正案を修正する必要がないことを申し上げ、私の討論と致します。
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