03'礼文編12345

9月12日 ※澄海岬からスコトン岬に向かう※
「朝焼けがキレイだよ」と言う声に目が覚める。前回、毎日4時前に起きて曇天を仰いでいたのを覚えたいたのだろうか?もうすぐ5時になろうかという時間だ。外に出ると朝焼けを背にした利尻が迎えてくれた。見上げれば雲のほとんどない好天。礼文岳からの眺めは期待できそうだ。

朝食が済んで居間のTVで天気予報を見る。台風14号はまだ沖縄の辺りにあったが、日本列島にかかる秋雨前線を押し上げる形。この快晴も今日いっぱいになりそうだ。

お見送りのためにフェリーターミナルへ向かう。今日、離島するのは5人。2ヶ月前に見た懐かしい風景だ。デッキに出てきた5人を撮っているとヘルパーのHさんから歌詞カードを手渡される。みんなで一緒にってコトか。文夫さんが歌い始める。あとに続くが・・・あれ?涙が出そうになる。パブロフの犬状態だ。歌うのをやめて心の中で読み上げる。「また、逢おう・・・」

恒例のジュージャンが終わり、北へ向かう車に乗り込む。乗り込んだ車の中で文夫さんの一言。「今日は北に行こうか」・・・歩いていけばよかった。車は登山口を通過し澄海岬へ向かう。

澄海岬からスコトンへ向かうコース。同行するのは1便で来た3人と連泊のご夫婦。「スコトンからのバスは2:03だよ」念を押して文夫さんは去っていった。ここにいるのはみんなリピーター。「初めて歩人を連れて歩くならともかく、なんで目的地を変えられてまでひとくくりにされたんだろう?」明日も晴天に恵まれる可能性は低い。この時、自分は大人気なく拗ねていた。






観光客と入れ替わりにスコトン岬に向けて歩き出す。写真を撮りながらだと、どうしても待たせてしまうので、距離を置いて歩く事にした。2ヶ月前に比べると数が少ないが花も結構咲いている。晴天なのもあって撮る画も色が映える。黄色い花は色潰れしているようだったので撮影モードをマニュアルに切り替えた。

鉄布を通過し、ゴロタ浜に出る。澄海岬と対照的に人気がない。集落沿いを歩くと野寒布岬へ行った時に見かけたウキのオブジェが並んでいたので足を止めて撮る。良く出来ているがこのキャラクターを喜ぶ世代がこの島に訪れるとは考えにくい。

ゴロタ浜。皆、思い思いのペースで穴あき貝を探しながら歩いている。浜辺から少し離れたところを歩くと漂着物が目に付く。酒瓶、電球、靴などの日用品から冷蔵庫まで・・・引いてファインダーを覗いている分には青い海と白い砂浜しか見えないが、生活圏から離れた場所程たくさん流れ着いている。悲しい現実だ。

ゴロタ浜からゴロタ岬へ続く道。道沿いには浜梨の実がたくさんなっている。同行していたTさんが「熟れたヤツは食べると甘酸っぱい味がする」と言う。群生しているところに分け入り、実をもいでかじってみる。味は・・・薄い。熟れていないスモモを食べたらきっとこんな味だろう。実の部分が薄く、種が多いので果実としてはイマイチだがジャムとかにすればいけそうだと思う。

ゴロタ岬への急坂を登っていくと笹を刈って間もない道のようなものが内陸部に向けて伸びている。一人で道を逸れて名も無き頂まで進んでみる。頂からはゴロタ岬と澄海岬とスコトン岬と金田ノ岬が全部見えた。利尻も、樺太も見えた。吹き抜ける風の心地よい場所だった。
来た道を引き返し、ゴロタ岬に着くと5人はおにぎりを食べ終えたところだった。今日は予定外の行動だったので自分のおにぎりは無い。意識はしていなかったが、さっきの寄り道はいい時間つぶしになったようだ。食べ終わり、一息ついて、スコトンへ向けて下り始める。

下りきり、舗装路に出る。バスの時間は心配なさそうだ。一人遅れて写真を撮りながら歩く。船泊湾側の道路に出るとトド島が大きく見えてきた。意外な事に、ここからだと樺太がかすんで良く見えない。距離が近付くよりも高度があった方が良く見えるのだろう。

スコトンの集落を抜けてスコトン岬へ。最北端の売店に初めて入ってみる。マップルに乗っていた”最北端の牛乳”とやらは見当たらなかったので、昆布ソフトなるものを食べてみる事にする。普通のソフトとは微妙に色が違っていて細かい粒も見える。ソフトを頬張っていると香深港へ戻るバスが数人の乗客を乗せてやってきた。

バスに揺られて香深港に到着。時間に余裕がるので、途中に見えたセイコマまで来た道を一人戻る事にする。以外に早く着いたセイコマで軽めの昼食とコーヒー酎とコーヒーハイを買う。海辺で利尻を眺めながらの一杯。なかなかオツなモンです。香深港までちんたら歩き、フェリー乗り場から車に拾ってもらって宿に帰る。

夕食後、しばらくするとミーティングが始まった。今日は濃い人が多い。10年以上もここに来ている人が何人かいた。昔は港も整備されていなくて、東海岸を縦断する道路も細く、正面に見える利尻の麓にも街明かりはほとんどなかったのだと。リピーターならではの話がたくさん聞けた。



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